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2005年05月07日

熊本大、法人化から1年 経営効率化など課題山積み

熊本日日新聞(5/06)

 昨年四月から国立大学法人となり、自らの責任での「経営」が求められるようになった熊本大(熊本市黒髪)。初年度は、経営のカギとなる外部資金の獲得額は伸びたが、毎年課される経営効率化や二年後に迫る大学全入時代への対応など課題も山積。“生き残り”をかけた取り組みは始まったばかりだ。

 「法人化して常に経営を念頭に置かなければならなくなった」と崎元達郎学長。その理由は、法人化でより自立した経営を求められるようになり、国からの交付金が毎年削減されるようになったからだ。熊本大の場合、付属病院が毎年2%増収することを前提に交付金がカットされるなど、毎年四億円ずつ減ることなった。

 国からの交付金減を補うにはまず、大学の“企業努力”で獲得できる国の科学研究費補助金(科研費)などの外部資金を増やすことだ。

 科研費は独創的・先駆的な研究に国が助成する。熊本大は、法人化一年目の二〇〇四年度から科研費の獲得額を伸ばすため、全教員約千人に科研費申請を義務付けた。その結果、〇五年度の申請件数は千二百五件と前年度より四割近く増加。うち三百九十一件が採択(内定)され、獲得額は前年度より約三億円増の十四億五千万円となった。

 また、特別教育研究経費として工学部の「ものづくり創造融合工学教育事業」など四件が認められ、新たに約三億円の外部資金が加わった。

 全国の国立大のうち、半数以上の大学の〇五年度予算が前年度より減少する中、熊本大は外部資金の増加もあり三十五億円増(科研費含む)の四百六十六億円と順調な滑り出しとなった。

 だが、崎元学長は「経営効率化で課せられている付属病院の収入増を継続的に達成していくことは難しい。高度な医療に取り組むことが使命である以上、単純に病床稼働率アップや人件費削減といった対応はできない」と楽観視していない。

 また、法人化後はさまざまな面での評価が取り入れられた。各大学の世界的な先駆的研究に助成する「二十一世紀COEプログラム」に対して初めて実施された中間評価では、最も低い「D」評価を受けた大学の研究は国からの補助金が70%減額となった。

 熊本大の研究は最も高い「A」評価を受け、補助金は前年比45%増となったが、これからもより質の高い研究と成果が求められることになる。

 こうしたことを背景に、熊本大は学内の教員に対する評価制度を〇四年度から試行的に始めたが、人文社会系学部の教員は「人文社会系の研究成果は短期間では見えにくい。一律に成果を求めることには無理がある」と不満顔だ。学部間のバランスをとりながら、教育研究全体を充実させることも課題の一つだ。

 一方、大学全入時代への対応も急務。少子化の影響から、〇七年には全国の大学の定員より志願者数が下回る事態となる。今春の熊本大の入学試験の競争倍率は、前・後期とも平均で約二・五倍と前年度を下回った。

 崎元学長は、大学は二極化の傾向にあるとの認識の上で、「当面は九州や関西方面までをターゲットにして学生を獲得していきたい」という。熊本大の伝統に新たな魅力を加えるともに、県内の他大学とコンソーシアム(共同体)を設立して、共同で情報を発信していく方針だ。

 大学間の競争が激しくなる中、崎元学長は「トップダウンだけではなく全教職員が共通認識を持ち、大学としてまとまっていくことが必要だ」と力を込める。


投稿者 管理者 : 2005年05月07日 00:11

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