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2005年05月19日

強引な「立命館守山高校」誕生の覚書調印、生徒や保護者反発 PTAは抗議文を提出

 立命館、平安女学院、そして守山市の三者による政治的・経済的「利害」が一致し、「立命館守山高校」がつくられる覚書調印が,5月17日に行われた。この政治的事件に関連して,これまで平安女学院大学では,キャンパス移転・統合に反対した学生は,署名数でみて355人(=就職活動中の4年生を除く全学生の8割以上にあたる),また学生の「守ろうの会」の趣旨に賛意を示し,移転反対に応じた市民の署名総数は約2万筆(=このうち守山市全人口13%が署名し,守山市長を筆頭に守山市議会議員、市役所職員の署名も含まれる)に達した。
 さらに守山女子高校の生徒は,5月12日,同校の存続を求める意見書を、全校生徒の65%にあたる369人の署名とともに市に送った。同時に,守山女子高校PTAは,5月17日,立命館への移管に反対する旨の抗議文を山田亘宏市長および山川芳志郎教育長宛に出すにあたり,全保護者(566人)の61%にあたる349人から同意を得ている(移管に賛成は3人)。この間,教職員もこの移管に反対し,同時に高校の存続を求める市民の団体が二つ結成された(一つは同高PTA有志や県公立高校教職員組合などでつくる「守山女子高校の存続を求める会」=代表、西村佳子さんら),もう一つは守山市民らでつくる「市の財産(守女)を考える会」=西村登志男代表)。いずれも活発な活動を展開するとしている。
 他方,これだけの反対や疑問の声があがっているなか,立命館の川本八郎理事長は「断固、(移管を)貫徹する」(朝日新聞5/18付)と強調した。同じ日,平安女学院の山岡景一郎理事長も市役所を訪れ、「守山キャンパスは、4月に高槻キャンパス(大阪府高槻市)に統合した。跡地に立命館が新しい教育機関を設置活用することはうれしく思う」(京都新聞5/18日付)などと同大の学生・守山市民を逆撫でするようなコメントを出した。いずれも2大学における教育事業の最高責任者の言葉である。ここには物事を決める前に人びとの意見を充分にくみ取るといった民主主義思想の片鱗も見あたらない。
 私が疑問に思うのは,立命館大学はなぜここまでしなければならないのかということである。山岡氏は立命館大経済学部出身であり,川本氏も同大学法学部の出身である。両者にとっての経済的利益に加え,事を進めるにあたって同じ出身大学という関係が作用した可能性も否定できない。実際,守山キャンパスの市への返還を取り付けたのは守山市でなく川本氏であり,同時に返還に際して立命館への無償譲渡を条件とすると決めたのも両者の関係においてである。普通の良識ある人間ならば,平安女学院による補助金の返還は直接市や県に対して金銭で行うべきであり,そしてこの返還は立命館の高校取得の問題とは全く別のものとして扱わねばならないと考えるであろう。今回の進め方でそうならなかったのは,新聞各紙が表現するように,そこには市長による政治責任の「回避」策に加え,両大学の「思惑」が働いたからにほかならない(因みに,県が出した8億円の補助金については,平安女学院側から守山市が肩代わりして県に支払うことをキャンパス譲渡=返還の条件とされ,市は了承したという。まさに,守山市民は踏んだり蹴ったりではないか)。
 今回の件について,立命館大学の教職員等内部関係者はどのように捉えているのだろうか。同大学の教職員組合はいかなる見解をもっているのだろうか。何もなかったように沈黙するのであろうか。

来春開校へ課題残す 守山女子高移管 生徒や保護者反発

京都新聞(5/18)

 滋賀県守山市の市立守山女子高の設置者を学校法人・立命館に移管する覚書の調印が17日、行われ、県の認可が得られれば、来春には男女共学の「立命館守山高校」が誕生する。女子高の運営に悩む市と、県内で付属高校開設を望む立命館、さらにはキャンパス統合問題を解決したい学校法人・平安女学院3者の思惑が一致し、実現の運びとなった。しかし、市の説明に納得せず、移管に反対する生徒や保護者も多く、こうした声に市や立命館はどう応えるのか。課題は残されたままだ。

 同日、市役所で開かれた記者会見で、立命館の川本八郎理事長は「移管の過渡期において、女子高生徒への配慮が必要。同高の先生と連携して取り組みたい」との考えを示した。

 市側も、女子高に移管準備室を開設し、「生徒や保護者らの意見を聞いていきたい」(山田亘宏市長)とする。
 しかし、「説明がないまま移管計画を進めた」などとする生徒の市に対する不信感は強く、有志が街頭で反対を呼びかけたほか、13日に開かれた市の生徒会執行部への説明会でも、生徒の多くが涙ながらに移管しないよう、山田市長に訴えた。

 17日午前には、同高PTAの三品正親会長らが「あまりにも性急な移管計画により、混乱を招いたことは重大。強く反対し、抗議する」とする抗議文を山田市長に手渡した。今後について、三品会長は「PTAの常任委員会を開くなどして、対応を検討したい」としている。

 また、同高PTA有志や県公立高校教職員組合などでつくる「守山女子高校の存続を求める会」事務局の杉原秀典さんは「生徒や市民らが納得していない中での調印に対し、おかしいという声が広がる可能性は十分ある。最後まで反対活動を続ける」と話した。

 平安女学院の山岡景一郎理事長はこの日、覚書の調印に合わせ、市が補助金の返還を求めないことを条件に、平安女学院大のびわ湖守山キャンパスの無償譲渡を申し入れ、市の了承を得た。同理事長は「守山キャンパスは、4月に高槻キャンパス(大阪府高槻市)に統合した。跡地に立命館が新しい教育機関を設置活用することはうれしく思う」などとするコメントを出した。

 これに対しても、市民でつくる「市の財産(守女)を考える会」の西村登志男代表は「市は平安女学院に補助金返還を請求せず、立命館も市の財産をそのまま受け取るのは考えられない」と話す。

 文部科学省によると、「公立高校の私学への移管は、これまで聞いたことがない」という。守山市、立命館、平安女学院三者の「利害」が一致し、進められた移管計画だが、調印後も生徒や保護者、市民の理解を得る努力が欠かせない。


[同ニュース]
来年4月、立命館守山高校誕生 守山市、設置者移管で覚書調印(京都新聞5/17)
守山市と覚書 立命館守山来春開校へ(朝日新聞5/18)
守山女子高立命館移管 守山市が協定調印(読売新聞5/18)

投稿者 管理者 : 2005年05月19日 00:39

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