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2005年06月02日

埼玉大学、いよいよ始まった裁量労働制導入の可否めぐる労使攻防

埼玉大学ウォッチより

導入でなにかいいことあるのか?

使用者側はいざ知らず、裁量労働制が導入されることで、労働者側に何かいいことがあるのか?

通常いわれている利点は①深夜・休日を除き、出・退勤時間の自由な設定ができる②休憩時間の自由な管理、である。

逆に、不利になる点は①深夜・休日労働以外には超過勤務手当ての請求ができない(教員はこれまでも超過勤務手当てをもらっていないので関係ない。しかし、将来の労働負担増に歯止めがなくなり、たやすく労働強化を背負い込まされる恐れがある)②民間会社の場合、使用者側が裁量労働制を労働強化の道具として使っており、過労死と結びつくとして批判されている③そのため、出・退勤時間の管理が厳しく義務付けられている、などがあげられている。

国立大学教員が公務員だったころ、教員は教育公務員特例法第17条によって教育に関する他の職を兼ねることが可能だった。また、第22条によって、勤務場所を離れて研修をおこなうことができた。

埼玉大学教員の場合、教育公務員特例法第17条の規定は、新しい国立大学法人埼玉大学兼業規程第2条の、兼業によって職務遂行に支障が生じるおそれがない場合、兼業を「許可するものとする」という規定に引き継がれている。

また、教育公務員特例法22条の研修規定は、埼玉大学就業規則第39条2項の「教員は、教育研究に支障のない限り、組織の長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修をおこなうことができる」に引き継がれている。さらに、2004年度の就業規則を大学側と協議した当時の過半数代表は、2004年3月31日に大学側と「法人化後の勤務時間については、法人化直前の慣行を尊重する。また、同様に、本学以外の場所での研究、教育、社会貢献その他の活動も法人化直前の慣行どおりに遂行できる」という確認を交わした。さらに、この確認は1年後の2005年3月28日、あらためて、過半数代表の本城昇氏と埼玉大学長の田隅三生氏との間で、「大学当局と過半数代表は、2004年3月31日の確認事項を就業規則と同等のものとして取り扱うことを確認する」という確認書となって、両者捺印のうえ取り交わされた。

したがって、埼玉大学教員は勤務形態と、非常勤講師やその他教育に関する兼業に関しては、教育公務員特例法が適用されていた時代と同じ条件下にあり、裁量労働制導入によって手にする新しい利点はまったくない。あるのは、裁量労働制を利用して法人が労働強化を押し付けてくるのではないか、という不安だけである。

<資料>
大学教員の裁量労働制に関する資料のサイト

(花崎泰雄 2005.6.1)

さあ、いよいよ始まった
導入の可否めぐる労使攻防

埼玉大学各学部の教授会で教員を対象にした裁量労働制導入の説明が始まっている。労働者と使用者間の協議事項を教授会で説明するというのは、どことなく腑に落ちない話である。法人化後の教授会は学部によっては、議事よりもむしろ役員会が部局長会で通達した事項の一般教員への再伝達の場になっているので、大学執行部も改めて教授会以外の会合をセットして説明する必要を感じないのだろう。

一方、埼玉大学労組のよびかけで5月31日夕、裁量労働制についての集会が学内で開かれた。例によって、参加者はまばらだった。参加者の発言の雰囲気は、理学、工学は導入に賛成、教養、教育、経済はどちらかというと警戒気味であった。

6月半ばには新しい過半数代表が決まるので、それを待って、裁量労働制の本格論議が始まる。そこで『埼玉大学ウォッチ』はここしばらく、裁量労働制に関する資料の紹介に専念する。

<資料> 
● なぜ大学教員が裁量労働制の適用対象になったか。「国立大 裁量労働制の功罪」についての東京新聞2004年4月5日の記事
● 第21回労働政策審議会労働条件分科会議事録(2002年10月1日)
○今企業の社員に対する裁量労働ということになっていますが、大学教員に対しての適用除外といいますか、これから国立大学などが独立行政法人になりますが、そういった時に労働基準法の適用を受けるという範疇に入ってくると思うのです。専門職とか技術職的なものの裁量労働というのは、厚生労働省としてどうお考えになっているのでしょうか。
○事務局 現在のことを申し上げますと、まず研究者の方については、専門型の裁量労働制が適用になるわけです。問題は、教員の方でも、実際にはかなり教育のコマを持っておられます。それは人によってかなり違います。ごく少ない方もいらっしゃいますし、たくさん持っておられる方もいる。また、教授会の時間であるとか。ですから、こういう時間帯にはちゃんと出てきてくれという決めがかなりあるわけです。労働時間に関して、完全に裁量があるということではないと、我々としては考えています。そういう意味では、現時点では、一挙に教員の方に対して、企画型の裁量労働制が適用できるというような見解には至っておりません。
● 「裁量労働制を選択する必要はありません」広島大学教職員組合の教宣ビラ

(花崎泰雄  2005.5.31)


投稿者 管理者 : 2005年06月02日 00:11

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