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2005年06月27日

全大教、国立大学協会第4 回通常総会にあたって(要望)

全大教
 ∟● 社団法人国立大学協会第4回通常総会にあたって(要望)

2005 年6 月16 日
社団法人 国 立 大 学 協 会
会 長 相 澤 益 男 殿
会 員 各 位

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 関本 英太郎

社団法人国立大学協会第4 回通常総会にあたって(要望)

 貴協会の大学・高等教育の研究・教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立に向けた御尽力に心から敬意を表する次第です。
 国立大学が法人化されて1年余が経過しましたが、下記のように黙過しえない問題点が顕在化していることが指摘できます。
 第1に、2005 年度運営費交付金は、効率化係数等の適用で前年度より約98 億円削減され、1 兆2,317 億円とされています。それにより、各大学において教育・研究の遂行上さまざまな困難がもたらされています。これは、大学法人法等成立時の国会附帯決議「法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に、各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。(参議院文教科学委員会)」に明らかに反しています。
 今後、教育研究水準の劣悪化、教職員の身分の不安定化と労働条件悪化を招くことが危惧されます。また、自己収入増が安定的に可能な大規模大学とそうでない地方大学等との格差構造拡大の危険性と、学問の普遍的発展の上で重要な基礎的・文化的分野での研究教育基盤が脆弱化する危険性が指摘できます。
 第2に、国立大学の学生納付金標準額の引き上げ(15,000 円引き上げ535,800 円)は学生、その父母に過大な負担を強いています。これは、国立大学法人法等成立時の附帯決議「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう将来にわたって適正な金額、水準を維持する」としていることにも逆行するものです。
 一方、欧米諸国では、高等教育費は実質的に無償措置がとられています。さらに日本は、国際人権規約の「高等教育無償化条項」を留保しているわずかの国(146 カ国中3 カ国:日本、ルワンダ、マダガスカル)の1つです。来年6 月に回答を求められているこの留保の撤回を行うことが求められます。
 第3 に、大学教職員は、給与法・人事院勧告の対象外となりましたが、昨年の寒冷地手当削減、今年予想される「地域給」導入等の「給与構造の見直し」に関して、教職員の労働条件改善の観点から、大学等が主体的に対応できるかどうかが問われます。各大学でも財政状況等を公開し、法人収入をどう確保するか、限られた予算枠の中で、例えば人件費と教育研究予算をどのように配分させるのか、教職員の配置と賃金の均衡をどうすべきか、賃金体系をどうすべきか、といった課題に対して、大学と教職員組合との充分な協議が求められています。
 第4 に、現在、国会で審議中の「学校教育法の一部改正」の「大学の教員組織の整備」に関っては、
(1) 「教授の職務を助ける」ことを主たる職務とする現在の助教授を廃止し、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」ことを主たる職務とする「准教授」にし、「教授及び助教授の職務を助ける」現行の「助手」を廃止し、「知識及び能力を有する者」を「助教」とすることは、職名は別として歓迎すべきことです。「教授の職務を助ける」ということがともすれば、講座制とも相俟って教授に対する個人的な従属関係をも強制しかねなかったことを改めて、研究教育分野が多様化している現状にふさわしく教員全体が教員組織に所属して、その職務を遂行する形になり、それにふさわしい処遇の改善が求められます。
(2) 一方、現行の助手のうち上記職務以外の者を、「所属組織の教育研究の円滑な実施に必要な業務を行う」「助手」に区分けするとしていますが、区分けする場合に本人の意向を尊重することを当然の前提として、たとえば国立大学法人においては、教授会・研究教育評議会の審議を尊重して教員の採用・昇任等にかかわる手続きをとり、公正性・透明性が保証されるものでなければなりません。その場合、本人等の異議申立権を保障することが不可欠です。輻輳した「助手」職にあるものについて、何を基準に、どのような方法で区分するのか、新「助手」として固定化するのではなく、一定の審査の上で、教育研究者への道を保障することや希望や職務をふまえ、技術職集団への転換等多くの検討すべき課題があります。
 また、現国会での審議では新「助手」を含む研究.教育支援者の充実・待遇改善などについて、法人化されたのであるから、大学の「自主性」に国としての財政的責任を回避しようとしています。将来の科学.技術を支えるべき若手の育成をはじめとした教職員の研究環境の充実・待遇改善を財政的に支える国の責務を果たさせることが肝要です。
 これらのことをふまえ、貴職におかれましては下記事項について特段のご尽力をお願いする次第です。


一、国会での附帯決議や国立大学法人の設置目的をふまえ、学術研究の水準の向上と均衡ある発展をはかるため、国立大学等に対して、効率化係数(毎年1%)、附属病院における経営改善係数(毎年2%)による運営費交付金の削減を行なわず、引き続き運営費交付金の増額のため尽力されること。合わせて、自己収入増への傾斜をはかる運営費交付金の算定ルールを見直すよう働きかけること。
 また、施設整備費の増大を図り、「5 カ年計画」の早期達成と今後の継承を要求するとともに、それを理由とした新規施設計画の外注化などをしなくてもよいような財政的処置をとるよう関係機関に働きかけること

二、政府、文部科学省等の関係機関に対し、経済状況に左右されず、学生の進学機会を保障するため、再び学生納付金標準額の引き上げを行わず抑制するよう要請すること。
 また、学生納付金標準額の引き上げが各大学の運営費交付金の削減に直結する現行の運営費交付金算定ルールの変更を求めること。さらに、来年6 月に回答を求められている、国際人権規約の「高等教育無償化条項」の留保を撤回するよう関係機関に働きかけること。

三、政府の大学・高等教育に対する公費投入額を欧米並みに早急にGDP 比1%とすること。その際、研究教育の中・長期的発展をはかる立場から、過度の競争的資金重視政策ではなく、基礎的基盤的経費の充実がはかられるよう尽力されること。

四、国会で審議中の「学校教育法の一部改正」の「大学の教員組織の整備」に関っては、今国会で成立しても、施行までに1 年半の猶予を置いていることに留意し、大学の自治・自律性を十分発揮し、当事者の労働条件改善・地位確立と社会的責務を自覚した教育研究の充実という観点から教員組織のあり方について深い検討と合意形成をはかること。また、当事者の意思が尊重されるとともに、職務の変更に伴う処遇改善を行うこと。そのための財政的保障としての運営費交付金等の増額を政府機関に働きかけること。

五、今年度の人事院勧告で予想される地域給等の「給与構造の見直し」「賃金水準の引き下げ」について、直接的・無限定に迎合するのではなく、教職員の労働条件改善の観点から、全大教及び各教職員組合と充分に交渉・協議を行い、国立大学法人としての自主性と主体性をもった対応をされること。


投稿者 管理者 : 2005年06月27日 01:16

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