個別エントリー別

« 日本商工会議所、憲法問題に関する懇談会報告書 | メイン | 萩国際大、民事再生法の適用を東京地裁に申請へ »

2005年06月21日

自由法曹団、 労働契約法制の在り方研究会「中間とりまとめ」に対する意見

自由法曹団
 ∟●労働契約法制の在り方研究会「中間とりまとめ」に対する意見(2005年6月20日)

2005年6月20日
厚生労働省労働基準局監督課 御中
(keiyaku@mhlw.go.jp)
(FAX03-3502-6485)
〒112-0002
東京都文京区小石川2-3-28
DIKマンション小石川201号
(TEL03-3814-3971)
(FAX03-3814-2623)
自 由 法 曹 団

労働契約法制の在り方研究会「中間とりまとめ」に対する意見
(「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」
中間とりまとめに対する御意見の募集について)

1 はじめに
 ―使用者の恣意的な解雇や労働条件切り下げを許し、不利益を受けた労働者から裁判で争う権利までをも奪う労働契約法制づくりに強く反対する-

(1) 自由法曹団は、全国の約1600名の弁護士を団員とし、基本的人権をまもり民主主義を強めること等を目的とする法律家団体である。
 「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」(以下「研究会」という)が2005(平成17)年4月13日に公表した「中間とりまとめ」(以下「とりまとめ」という)に対して、私たちは、以下のとおり意見を述べる。
(2) 「とりまとめ」が描く労働契約法制は、企業が「経営環境の変化等に迅速かつ柔軟に対応する」ため、「紛争なし」に労働条件の「引き下げ」や「解雇」を「迅速に」行えるようにすることに主眼がおかれており、規制緩和を通じて雇用の流動化・多様化を押し進めて総人件費を低減しようとしている財界要求に沿う内容になっている。
 「とりまとめ」が導入の方向を打ち出した「解雇の金銭解決制度」や「労働時間規制の適用除外」は、財界の要求に基づき「規制改革・民間開放推進3ヵ年計画(改定)」(2005年3月25日)に盛り込まれたものである。
 金銭解決制度については、一昨年の労基法「改正」の際にも導入が目論まれたが、「金で首切り合法化は許されない」という各界からの強い反対で法案化が見送られた経過がある。今回、より一層の雇用流動化を求める財界の要求により、再度、亡霊のように浮上してきたものである。「とりまとめ」は、このようなものまで労働契約法制に取り込もうとしているのである。
(3) この間、財界は、経済の低成長化・グローバル化等の環境変化の中で、企業の国際競争力強化を図るため、雇用の流動化・多様化を柱とする労働法制の規制緩和を一貫して求めてきた(代表的なものとして、日経連「新時代の日本的経営」1995年、日本経団連「活力と魅力溢れる日本をめざして」2003年)。
 これに沿う形で、ここ数年、有期雇用の上限規制の緩和、労働者派遣事業の大幅自由化、裁量労働制の拡大等々の法「改正」・規制緩和が相次いだ。そして、企業は、これらの規制緩和や産業再生法等のリストラ支援法を最大限に活用して、「構造改革リストラ」を強力に推し進めた。その結果、企業の収益力は急回復し、上場企業の連結経常利益は2004年3月期決算以来連続して過去最高益を更新している。
※ 上場企業の連結経常利益 2004/3 18、6兆円(29・9%増)
2005/3 23.2兆円(25・0%増)
2006/3 23、6兆円( 1・5%増)(予想)
(4) 他方で、労働分野における規制緩和は、労働者に何をもたらしたのか。
 それは、改めて言うまでもなく、失業の増大、不安定雇用の急増、労働条件の劣悪化である。
 1994年に194万人だった完全失業者(失業率2・9%)は、2004年には308万人(失業率4・6%)となっている。さらに、15歳から34歳までで就学せず・職探しせず・職業訓練も受けていない人(いわゆるニート)は、85万人に上るといわれており(2002年・内閣府推計)、実際には400万人近い人々が就業過程から疎外されている。
 また、昨年から今年にかけて、正規雇用は47万人減少し、非正規雇用が36万人も増えている。派遣労働者は1995年に61万人だったものが、2003年には236万人にまで増加した。現在、非正規雇用労働者は、1591万人・労働者全体の32・3%(若年層では48%)を占めるに至っている(05年6月・総務省調査)。
 このような不安定雇用労働者の急増に伴って、低賃金化及び所得の階層格差も顕著になってきている。
 勤労者の現金給与総額は、04年まで4年連続で減少してきており、平均月額給与総額は33万2485円(年換算約400万円)となっている(04年毎勤統計)。
 また、2004年12月の内閣府のリポートによれば、一般労働者の平均月額賃金は33、1万円であるのに対して、派遣労働者のそれは20、0万円、パート・アルバイトに至っては9、0万円という水準にとどめられている。
 いわゆる非正規雇用労働者の約8割は、月額賃金20万円以下での生活を余儀なくされているというデータも示されている。
 このような中で、生活が苦しいとした国民は53・9%(18歳未満の子供がいる世帯では62・8%)(03年国民生活基礎調査・厚生労働省)、自己破産申立件数は3年連続年間20万件以上、自殺者は7年連続で3万人以上(04年度32325人、うち「経済苦」は7900人)に達している。
 さらには、現在、多くの労働者はいわゆるサービス残業(残業代不払いの違法行為)や長時間過密労働を押し付けられており、年間3000時間を超えて働いている人が6人に1人、過労死する人が認定されているだけで年間150人もいるというのが今の日本の悲しい労働実態なのである。
 この間、政府・財界が押し進めた雇用の流動化・多様化がもたらしたものは、雇用の階層化・劣悪化にほかならず、今、わが国の労働者の生活はいたるところで破壊の憂き目を見ているのである。
(5) このような状況の中で必要とされる労働契約法制は、「紛争なし」に「迅速に」労働条件の「引き下げ」や「解雇」を行うための「自主的」決定・変更システムでは決してない。
 労働者と使用者との間の厳然たる経済的実力の格差を直視しないで、労働条件の決定・変更を労使自治に委ねることは、使用者の自由や恣意を大幅に許容し、労働者の権利を大きく後退させる。ひいては、前近代的な搾取や収奪の復活に道を開くことにつながるものである。
 労働条件の決定を労使の自治に委ねることは、憲法27条2項の勤労条件法定主義の理念にも著しく反している。
 使用者の恣意や横暴によって労働者の権利が大きく掘り崩されている今、真に必要なのは、労働者の権利を擁護するためのルールの明確化であり、そのルールを使用者に厳格に守らせることである。
 今、労働契約法を作るとすれば、最低限、これまで労働者保護法理として機能してきた判例法理を明文化することが必要である。
 すなわち、これまでの裁判例の積み重ねにより確立してきた、整理解雇の4要件、懲戒権濫用法理、配転命令権濫用法理、男女平等取扱法理、雇止め制限法理、就業規則不利益変更法理、採用内定・試用に関する判例法理などを労働契約法として明文化することが必要不可欠であると考える。
 わが国の多くの労働者が求めているのは、これまでの幾多の困難な権利闘争の中で確立されてきた働く者の権利を守るルールの明確化なのである。
(6) 「とりまとめ」が描く労働契約法制は、規制緩和の視点から労使自治を強調し、後に述べるように、使用者に対し労働条件切り下げや解雇のフリーハンドを与える一方で、不利益を受けた労働者からは裁判で争う権利までをも奪い取るものになっている。
 私たちは、「とりまとめ」が打ち出した方向での労働契約法制づくりに強く反対する。
 以下、「とりまとめ」に含まれる重大な問題点等について、私たちの意見を述べる。
 なお、私たちは、すでに、2004年10月6日付けで「金銭解決制度」及び「変更解約告知」に関する研究会の議論を批判した「『金銭解決制度』及び『変更解約告知』に関する意見書」を公表している。自由法曹団のホームページにアップされているので、あわせてご参照されたい。

……以下,略。上記URLを参照して下さい。


投稿者 管理者 : 2005年06月21日 00:46

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/14

コメント