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2005年08月16日

横浜市立大、削られた数理学科 不透明な検討過程 求められる大学の「公開」

■横浜市立大学大学院国際文化研究科博士課程「思惟と聯流」第2号(8月15日号) 上半分下半分
大学改革日誌(永岑三千輝氏)-最新日誌経由

「大学改革日誌」8月14日より

 『思惟と聯流』第2号(8月15日号)が届けられていた。掲示板では気づかなかったが、研究室に届けられていたので新しい号が出たことを知った。HP開設はまだ「準備中」とのこと(臨時にスキャンしたので掲示しておこう:上半分・下半分)。興味を引いたのは、受験生激減に対する大学当局(学長以下)と市長の出演したテレビ番組の動画データを大学HPで流している、といったニュースであった。大学HPを見ていなかったので、知らなかった。当局が必死になって受験生を集め酔うとするその努力は必要なことであろう。

 だが、それが大学内部の教員をはじめとする多くの大学人の心からの支援をうけるものかどうか?

 市長が直接任命した理事長、副理事長(最高経営責任者と学長)をはじめとする大学当局のこうした宣伝活動が、大学内部の下からの基盤を持っているのかどうか、これが問題だろう。まさにそれが、大学の自治、大学の自主性、自律性に深く関わってくる。

 その点で、『思惟と聯流』第2号の記事「削られた数理科学、不透明な検討過程-求められる大学の「公開」-」という記事は、トップダウン「改革」が持つ学内的基盤の面での問題性を指摘しているといえよう。本当の意味で受験生が増加し、しかもその質が向上しているかどうか、そしてすばらしい学生を社会に送り出していける体制になっているかどうか、トップダウン体制、教授会無視の体制でそれが実現できるかどうか、これが今後問われつづけていくであろう。その点で、もう一点、「プラクティカル・イングリッシュ」に一面的に傾斜した教育システム、第二外国語を無視・軽視した語学教育に対する姿勢への批判的論評も、私の共感するところであった。

横浜市立大、削られた数理科学 不透明な検討過程 求められる大学の「公開」

 横浜市立大学・前理学部数理学科の一楽重雄先生と市田良輔先生は,横浜市長宛に抗議文(2005年4月25日付)を提出した。今年度入学式祝辞で市長が「市長として,市大の中身に口を出したことは一度たりともありません」と発表したことに対して「事実と大きく異なるもの」としている。
 事の経過は,まず昨年5月に日本数学会理事長が,横浜市立大学から数理情報コースが外され,数理科学の体系的な教育がなくなることに市長へ再考を促した。これに対して市長は回答(市広報第900655号)で「設置者として」と明言して「数理情報コースについては,数学の専門家を要請するためのコースの必要性は低いと判断し,専門のコースの設置は見直しました」と述べた。
 一楽・市田両先生は,この市長の回答こそが「市大の中身に口を出したこと」を「中田市長自らが認めている」のだと抗議したわけである。
 問題は「設置者」がいかなる議論を経て「判断」したのかである。今回の件に先立ち,前理学部数理科学教室はカリキュラム案に関して意見を表明していた(2004年4月9日付)。「学長は,一部の教員と市の担当者にカリキュラムの作成を任せ,開講科目が減らされるのを座視しているだけでいいのか。一般教員にもカリキュラム案を検討させるべきである。学長,評議会は,大学改革推進本部が設置者として検討した『コース・カリキュラム案』をどのように対処しようとしているのか,を全教員に明確に示すべきである」と。
 これは一学科教室の内輪の問題ではなく,真に開かれた問いが提出されたものである。当時の学長・評議会,そして全教員は一体如何なる対応をしたのかは,学生には全く知らされていないので状況がわからないが,提起された問いについて黙殺しあっていたのだとしたら,この時すでに大学自治などなかったのである。
 今後,私たち大学院生が危惧することは,以上のようにカリキュラムが「設置者」によって密室的に作為した課題から作られていくことである。これは学問的に正しい方向だとは思わない。現在,大学では方向でカリキュラムの編成のみならず研究環境を検討していく傾向がある。
 今日,日本の多くの大学で起きている大学問題の深刻さから「大学オンブズマン機能の要請の声は高まっている。そこで提案したいことは大学の中には,研究の目的や方法を明らかにする「公開講義」が必要だということである。さらに言えば「公開」とは教師が市長へむけて教えることだけではなく,大学人が何をしてきたか問われる場でもある。


投稿者 管理者 : 2005年08月16日 00:01

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