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2005年08月23日

全大教、賃金切り下げ、地域給導入等最悪の人事院勧告 団体交渉を軸に適用阻止を

全大教
 ∟●賃金切り下げ、地域給導入等最悪の人事院勧告(05/08/19)

2005 年8 月19 日

賃金切り下げ、地域給導入等最悪の人事院勧告
団体交渉を軸に適用阻止を

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 大西 広

1.はじめに
 人事院は8 月15 日に国会と政府に対して国家公務員の賃金に関する勧告と報告を行いました。その主な内容は、①月例給を0.36%引き下げ、一時金を0.05 月引き上げる本年の給与改定に関する勧告、②少なくとも4.8%もの俸給を切り下げる地域給の導入、俸給表のフラット化・昇給号俸の細分化による勤務実績反映の給与制度等「給与構造の見直し」勧告・報告という異例の2つの勧告です。
 法人化された国立大学、公立大学、国立高専、大学共同利用機構(以下、国立大学等と略す。)教職員の賃金をはじめとする労働条件は、基本的に労使による対等な交渉によって決定される仕組みになりました。また、運営費交付金の配分額が人事院勧告により左右される仕組みでないことも明白になっています。しかし、昨年は寒冷地手当改悪の人事院勧告が出された際、大学法人等が「社会・経済情勢への適応」を口実に「人事院勧告準拠」をごり押ししてきたことにみられるように、今年もまた同様の姿勢で出てくることが予想されます。そうした事態が予想される以上、全大教として今回出された勧告の内容について無関心でいるわけにはいきません。私たちは、労使交渉による賃金および賃金制度の決定を前提としつつも今回出された人事院勧告に対する基本的見解を以下に表明するものです。
 今回の勧告内容については、すでに全大教新聞「人事院勧告特集号」でお知らせしており、重複するので詳細をここで再掲することはしませんが、今後各大学・高専・共同利用機関で具体化されてきた場合に重要な争点となる、あるいはするべきであろういくつかの問題点・事項についてのみ指摘します。

2.教職員の賃金は増額・改善されるべき
 人事院は厳密・正確な官民比較結果に基づいて勧告を行っていると強調していますが、この内容には疑問を抱かざるを得ません。マスコミ報道や民間経営者団体も認めていることですが、一時金についてはこの数年好調を維持し続けているといわれているわけですが、そうした民間一時金との格差がわずか0.05 月分しかないとの調査結果は実感に合わないこと、官民比較の対象項目が年度によって入れ替わる等の不透明さが勧告内容に疑問を抱かせる要因ともなっています。
 こうした人事院勧告の内容を「勧告準拠」を口実に大学・高専等の教職員に無条件に適用させようとすることには重大な問題があります。それは、各大学・高専等で先般明らかにされた教職員の賃金水準をみれば明らかです。公表された資料によると、いずれの大学・高専等においても事務や技術等の職員の賃金水準は全ての年代で国家公務員の平均を十数パーセントも下回っていることが明らかとなっています。また、教員については国家公務員の平均を上回るデータとなっていますが、人事院として調査を行いながらも官民比較対象外扱いとなっている私立大学教員賃金と比較した場合、国立大学・高専等教員の賃金は月収ベースで十万円以上低い水準となっています。(国立大学教授の場合、2003 年度の5 級最高号俸で諸手当等を除き59 万200 円、2005 年人事院職種別民間給与実態調査では私立大学教授は平均72 万4420 円)こうした実態を踏まえるなら、国立大学・高専等教職員の賃金は、増額・改善されてしかるべきであり、「人事院勧告準拠」を口実に引き下げるなどの行為は厳に慎むべきです。

3.大学等への適用は合理性がない
 第1 に、地域給等の「給与構造見直し」の問題性です。
 その最大の問題点は、全国で公務を担う国家公務員の俸給水準を官民比較で最も民間が低い地域(ブロック)に合わせて、公務員の俸給を4.8%も大幅に引き下げるという問題です。従来の人事院勧告は、官民比較の対象職種等の問題点はありましたが、公務、民間各々の全国平均給与を出し、それに基づく官民較差により勧告を出すというものであり、相応の合理性を有していました。そしてその際、地域間の物価の違いは、「地域調整手当」で調整していました。ところが、今回はその方式を根幹から変更し、「オール日本」の国家公務員の俸給を1 地域(ブロック)の給与との比較で引き下げるという内容になっており合理的根拠はありません。また、退職金、年金等生涯所得まで減額される恐れもあります。
 第2 に、地域給等の「給与構造見直し」を大学等に適用することに全く合理性がないという点です。 ① 大学等は人事院勧告の対象外であり、給与等の労働条件は労使交渉により、決定されるものです。しかも、今回の「給与構造の基本的見直し」は、給与等の算定方式の変更による引き下げであり明らかに不利益変更となります。従って、最高裁判例でも示されていますが、国立大学法人等は、過半数代表者の意見聴取のみで就業規則を変更することは許されず、労使交渉等を通じて労働条件の不利益変更の「高度の必要性」等を明らかにすることが義務づけられます。
 ② 運営費交付金制度は人事院勧告を反映する仕組でないことから、文科省は今回の人事院勧告で運営費交付金は減額しないことを明言しており、大学法人財政を理由として人事院勧告にあわせて給与を引き下げることは合理性を著しく欠くこととなります。
 ③ 文科省の「文部科学省所管独立行政法人及び国立大学法人等の役員の報酬等及び職員の給与(平成16 年度)の水準の公表」において、国立大学職員の給与は国家公務員の平均より低いことは明らかであり、むしろ職員の処遇改善が求められています。
 ④ 大学の教員は、ほぼ全国的な「労働市場」が成立しているということができますが、地域別の賃金格差が大きくなれば、地方の大学で人材確保が困難になると考えられます。すでに、国立大学の給与水準は都市部の私立大学と比べて大きな格差があることが指摘されており、こうした格差が国立大学、とくに地方国立大学において優秀な教員の確保を困難にしている状況があります。さらに給与水準を引き下げるようなことがあれば一層困難となります。地方に立地する大学で優秀な人材を確保するには、少なくとも地域によって賃金の基本部分には大きな格差が生じないようにすべきです。

4、団体交渉を軸に適用阻止を
 大学法人等が「人勧準拠論」等を根拠として地域給等の「給与構造の見直し」など人事院勧告に基づく就業規則の変更を提起する危険性は高いと断じざるを得ません。
 それ故、今年の人事院勧告に向けても、賃金の切り下げに反対し改善を求めて、全国公務員組合と連帯して公務労組連絡会等の提起する署名運動、中央行動等に取り組んできました。
 同時に、法人化された大学等は人事院勧告の適用対象外であり、法的に労使対等の交渉により賃金をはじめとした自らの労働条件等を決定できる環境にあります。
 全大教は、ナショナルセンターの枠をこえ、公務労組連絡会、公務員労働組合連絡会と連帯し、地域給等の「給与構造の見直し」等の法制化に反対する取り組みを進めます。
 その取り組みと併行して、7 月の第36 回定期大会で決定した運動方針に基づき、大学等に地域給等の「給与構造見直し」を適用させないため、中央闘争委員会を設置し、大量宣伝や署名運動等による学内世論の形成を背景とした労使の団体交渉を軸に、組織の総力を挙げて、多様な運動を展開する決意です。また、この運動と結合し、組合加入・組織強化の取り組みを推進するものです。


投稿者 管理者 : 2005年08月23日 00:07

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