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2005年12月15日

大学生の学力低下:科学技術立国を目指す日本の宿命?

だまらん
 ∟●大学生の学力低下:科学技術立国を目指す日本の宿命?

大学生の学力低下:科学技術立国を目指す日本の宿命?

1. イントロダクション
2.1 科学技術とは何か?
2.2 科学技術の原動力
2.3 科学技術の発展:その結果もたらされる社会
3. 科学技術社会は,かくして教育を否定する
4 結論

……(略)

4. 結論
すべてが商品になってしまった時代,そして,商品の改良が果てしもなく続いていく時代,商品の利用者である人間は,お金を出して「便利さ」を買う.便利なモノが溢れる社会では,人々は無意識のうちに「苦労するのは損だ」と考えている.「もっと便利なモノ」の登場を待ち,当座の自分の道具を使うことで日々の生活をこなしていく.この風潮が教育現場でも猛威を奮っている.
われわれは,経験から「自分でやらないと忘れていく」ことを知っている.手書きの文書を書かないでいれば,漢字が書けなくなる.パスワードをソフトウエアに覚えさせてしまうと,いつしかパスワードを忘れてしまう.コンビニで肉じゃがを買って済ませていると,肉じゃがの作り方を忘れてしまう.そんなものなのだ.マウスでクリックしてすべてが完了してしまう社会では,マウスをクリックする側は,「マウスでクリックすることしか知らない」状況に置かれている.せいぜい,何をクリックするか,といった知識を求められるだけだ.
科学技術を全面否定するつもりは毛頭ない.しかし,たまには,「テレビを消そう.音楽をとめよう.携帯電話のスイッチを切ろう.そして,自分で時間をかけて<なぜ?>と考えよう.」と呼びかけることは教育者の責務ではないだろうか?そして,そのような時間を与えることが今の学校にも求められているのではないか?
大学生の学力低下は,大学以前の教育システムの問題というよりは,社会全体が技術中心に回転し,価値観を大きく変えてしまったところに根源的な問題がある.科学技術立国を目指すと宣言されている日本で,理由を問わずに技術だけを追い求め,技術の利用ばかりに焦点をあてていては,教育は崩壊する.それは,技術中心の価値観が,ものごとの本質を問うことを求めていないからだ.自分で考え,自分で努力し,自分で危険や困難なことに立ち向かう姿勢を教育の中で育てなければならない.実は,このような姿勢に立つことで,初めて学ぶことが「面白くなる」のだ.動機づけ(motivation)は,ここから生まれてくる.
子供たちの学習意欲を復活させるために,まず,「なぜ?」と問い,時間をかけてディスカッションすることを教育現場に求めたい.小学校低学年から大学まで,「なぜ?」と問うて,自分で考える機会を与えて欲しい.科学技術という名の「ますます大きくなっていく仮想ロボット」を乗り回しているうちに,気がついたら教育という人間の財産が飲み込こまれてしまうことがないように.


投稿者 管理者 : 2005年12月15日 00:09

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