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2005年12月24日

自由法曹団、立川自衛隊宿舎イラク反戦ビラ入れ事件高裁有罪判決に抗議する声明

自由法曹団
 ∟●立川自衛隊宿舎イラク反戦ビラ入れ事件高裁有罪判決に抗議する声明(2005年12月21日)

立川自衛隊宿舎イラク反戦ビラ入れ事件高裁有罪判決に抗議する声明

 2005年12月9日、東京高等裁判所第3刑事部(中川武隆裁判長)は、立川自衛隊宿舎イラク反戦ビラ入れ事件について、これを無罪とした東京地裁八王子支部刑事第3部(長谷川憲一裁判長)の一審判決を破棄し、被告人ら3名全員に対し、住居侵入罪として罰金刑を科す有罪判決を言い渡した。
 本件は、ビラ配布のために集合住宅の敷地内や共用の通路部分に立ち入ったにすぎない事案であって、もとより、各戸の居室内に侵入したものではない。
 一審判決は、被告人らによるビラ配布行為が政治的表現活動の一態様であったことを重視したうえで、居住者らの受けた被害も極めて軽微なものに過ぎないなどとして、無罪を言い渡した。本判決は、これと対照的に、本件のビラ配布行為が「管理権者らの意思に反する」「管理権者らの法益侵害の程度が軽微とはいえない」と一方的に決め付けて、これを有罪とした。
 憲法が保障する「表現の自由」の意義を理解せず、住居侵入罪の適用範囲を恣意的に拡大する極めて不当な判決である。
 本判決は、配布されたビラが「自衛隊のイラク派遣に反対し、かつ自衛官に対しイラクへの派兵に反対するよう促し、自衛官のためのホットラインの存在を知らせる内容」であったことを指摘したうえで、このような内容のビラ配布のための立ち入りは「管理権者らの意思」に反するものであるとして住居侵入罪に該当すると決め付けた。
 これは、「管理権者らの意思」を根拠にして、特定の情報の流通を「犯罪」とすることに道を開くものである。このような認定・判断が許されるとすれば、意に沿わない内容のビラ配布はすべて「管理権者らの意思」に反するものとして「犯罪」に仕立て上げることが可能になってしまう。これでは情報の自由な流通を基礎とする民主主義社会は成り立たない。
 また、「管理権者らの意思」なるものは、個々の住人の具体的な意思とは必ずしも一致しないのであって、本判決は、情報を受け取る側の「知る権利」についての配慮も全くない。
 さらに、本判決は、一審判決がビラ配布者らの動機が正当であったことを根拠にして違法性を否定した点についても、これを逆転させた。本件のビラ配布行為が「いわゆる自衛官工作の意味を持つもの」と立ち入りの「目的」を指摘したうえ、そのことは立ち入りを正当化できないとあえて判断したのである。
 そこには、最大限保障されるべき政治的表現活動に対する配慮が微塵もないばかりか、本件のようなビラ配布行為に対する敵意すら感じさせるものである。
 昨年来、反戦ビラ、赤旗号外、日の丸君が代押し付け反対ビラ、日本共産党の議会報告等、現在の政権に対する批判的内容の言論・表現活動への露骨な刑事弾圧が相次いでいる。このような政治的刑事弾圧を裁判所が追認することは断じて容認できない。
 自由法曹団は、本判決に強く抗議するとともに、最高裁判所がこれを破棄し、憲法上の表現の自由を擁護する無罪判決を下すよう求めるものである。

2005年12月21日
自由法曹団団長 坂 本 修

投稿者 管理者 : 2005年12月24日 00:56

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