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2006年03月16日

新潟大学学長選考問題、私たちの提訴の概要

■「意見広告の会」ニュース333より

私たちの提訴の概要

   
2006年1月26日 文責 山下威士

1 提訴の型
(1) 2005年12月6日の新潟大学選考会議の次期学長候補者の決定の無効確認を求める訴え。
(2) 2006年2月1日以降、長谷川彰氏による新潟大学長としての職務執行を停止させることを求める仮処分の訴え。

2 原告
(1) 山下 威士 やました・たけし
新潟大学大学院実務法学研究科長・教授、評議員
 以下6名
  新潟大学大学院現代社会文化研究科教授
  新潟大学大学院実務法学研究科教授
  新潟大学工学部教授
  新潟大学教育人間科学部教授
  新潟大学理学部教授
  新潟大学大学院医歯学総合研究科教授

3 原告訴訟代理人
弁護士  川 村 正 敏 かわむら・まさとし(新潟県弁護士会)

4 被告
新潟大学  学長  長谷川 彰 はせがわ・あきら
学長選考会議・議長 小林俊一 こばやし・しゅんいち

5 次期学長候補者選考の経過
(1)<学長選考>
 新潟大学は、学長選考規則にもとづき、この度、学長選考のために、教育職員およびその他の職員を投票資格者とする第一次意向投票、第二次意向投票、および、学長選考会議の審議を行った。第二次意向投票の実施前に、学長選考会議委員(常設の機関)である鈴木佳秀氏は、学長候補者から辞退することを伝えた。しかし、この辞退届は、学長選考会議(あるいは、学長選考会議議長)の議を経ないまま、何ら権限のない菅原秀章・理事(事務総括担当)によって握り潰され、鈴木氏は、第二次意向投票の候補者とされ、したがって、以後の学長選考会議の審議から外された。

(2)<第二次意向投票と学長選考会議の決定のズレ>
 2005年11月30日に、第二次意向投票が行われ、山本正治氏が443票(総投票数の53%を獲得)、長谷川彰氏が360票、鈴木佳秀氏が22票という結果であった。この第二次意向投票の結果を受けて、2005年12月6日に学長選考会議が開催された。委員13名中、病気欠席1名の他、山本、鈴木両氏が学長候補者であることを理由に委員から外され、合計10名の委員で、学長選考会議が構成された。審議の結果、学長選考会議は、3分の2の多数ギリギリの委員7名の賛成によって(学長選考会議規則6条2項)、第二次意向投票で2位であった長谷川氏を、次期学長候補者とすることを決定した。

(3)<説明責任の放棄>
 第二次意向投票で2位であった長谷川氏を学長候補者とすることについては、下記のように多くの点で違法であり、問題点も多いにもかかわらず、小林俊一・学長選考会議議長は、「選考会議の経緯を説明することは、学内に混乱を避けるために公表しない」と述べて(2005年12月6日記者会見)、まったく説明していない。ただし、後に、「選考の経過」という文章を持つ「次期学長候補者の決定について」という文書(2005年12月7日)が、まったく権限のない新潟大学総務部長名で、全教員に配布された。

6 学長選考会議の決定が、違法であり、無効と判断される理由
(1)<今回の決定は、学長選考規則14条1項に違反し、無効である。
 学長選考規則14条1項は、「学長選考会議は、第二次意向投票の結果を参考とし、学長候補者を選考の上、決定する」と定めている。したがって、その「参考」ということばをいかように解釈するにせよ、学長選考会議が学長候補者の決定を行うに際して考慮すべきものは、規定による限り、「第二次意向投票の結果」のみである。したがって、「第二次意向投票の結果」と異なる決定を行った本決定は、学長選考規則に違反し、無効である。

(2)<今回の決定を下すことについての学長および学長選考会議議長の説明責任の履行がまったくなく、国立大学法人法35条および独立行政法人通則法3条に違反し、無効である。国立大学法人法35条によって準用する独立行政法人通則法3条は、「業務の公共性、透明性、および、自主性」について定める。とくに、その2項において、国立大学法人(および独立行政法人)の行為について「透明性」、すなわち、「説明責任を果たすこと」を、法の原則として規定している。にもかかわらず、今回の決定について、学長および学長選考会議議長は、まったくその説明責任を果たしていず、今回の決定は、法の要求する透明性をまったく持っていない。このような理由から、本決定は、国立大学法人法および独立行政法人通則法に違反し、無効である。

 なお、今回、上記透明性(説明責任の履行)という観点から説明されるべきであったことは、最低限、以下のことがらであったろう。
① 「学長選考規則14条1項の明文にもかかわらず、そこには書いてないが、『第二次意向投票の結果』以外のものを『参考』にしてもよい」という学長選考規則の解釈を示す必要がある。
② その上で、では、そのような「第二次意向投票の結果」以外の参考にされるものとは、「何か」を示す必要がある。
③ その上で、そのようにして「学長選考会議が②で考えたもの」と、明文の規定で定められている「第二次意向投票の結果」とを比較考量して、「なぜ、前者が重いと判断されたのか」を示す必要がある。
 この内、②についてのみ、その文書の性格について不明の点も多いが、上記総務部長名文書に「中期目標・中期計画の進捗状況等大学運営に関する様々の観点」というものがあるが、それのみに止まり、著しく不足している。

(3)<鈴木佳秀氏が第二次意向投票から辞退の意思を表明したにもかかわらず、その取扱いについて不備があり、そのために、今回の選考の結果に大きな影響をもたらすほどの学長選考会議の構成について重大な欠陥を生じており、これらが、学長選考会議規則6条、16条、学長選考規則14条2項に違反しており、このようにして構成された学長選考会議の決定は、無効である。>
学長選考規則14条2項は、「学長選考会議の委員が第二次学長候補適任者となった場合は、前項の選考(学長候補者選考)に加わることができない」とし、学長選考会議規則6条2項は、「出席した委員の3分の2以上の多数をもって決する」と規定している。もともと学長選考会議の委員であった鈴木氏は、第二次意向投票の前に、学長候補者より辞退する意思を表明した。このような場合、扱いについて疑義がある限り、学長選考規則15条により、学長選考会議(緊急の場合なら、学長選考会議議長)が、その取り扱いについて議事を開き、決定すべきであった。しかし、その処理を行ったのは、いかなる権限をも持たない菅原秀章・理事(事務総括担当)であり、その判断により、鈴木氏を第二次意向投票の候補者から外す手続きを、まったくしなかった。鈴木氏は、学長選考の候補者からの辞退を表明したのであるから、本来なら、学長選考会議の構成員としての資格を取り戻し、以後の会議に招請されるべきであった。このようにして、鈴木氏は、事務総括理事によって、学長選考会議規則および学長選考規則に違反して、学長選考会議から排除される結果となった。
このようにして構成された選考会議は、重大な欠陥を有するものであり、鈴木氏の会議への参加によって、結論に重大な齟齬が生じる可能性のある限り、そのような欠陥を有する会議の決定は、学長選考会議規則および学長選考規則に違法し、無効である。

7 本訴訟の意義
(1) 本件は、新潟大学の次期学長候補者の選考の無効の確認を求めるものである。
そこには、みずから定めた規定を、みずからが守らないという、コンプライアンス(法令順守)をめぐる、きわめて初歩的な欠陥がある。基本的に大学としての体をなしていない姿勢であり、その点を、この訴訟を通じて問題提起し、注意を喚起したい。

(2) しかし、そのような新潟大学特有のものを超えて、今回の事例は、2004年4月以降、ほぼ同様の学長選考規定を有する旧国立大学に共通する問題性をもち、その先例としての影響、わが国の大学システムに対する影響は、計り知れない。とりわけ、研究の根幹を保証するものとしての公共性と透明性(説明責任)とを重視するわが国の大学一般にとって、今回の新潟大学の経緯は、悪しき先例として、その将来の死命を制するかもしれないほどの大きな(マイナスの)意義をもつ。この訴訟を通じて、この点を明確にし、わが国の健全な大学の発展に寄与したい。

以上

大学教職員の意向投票の結果を無視した学長選考の違法性

2005年12月20日・2006年1月15日 山下威士

1 はじめにー逆転また逆転の学長選考過程

 12月7日(26面)の新潟日報を開いて驚いた。「学長に長谷川氏再任 2次投票2位 選考会議で逆転」という大見出しが目に飛びこんできた。後の報道(新潟日報12月16日29面)と併せると、学長選考会議(以下、選考会議)10名の委員の投票において、教職員の行った第二次意向投票で第2位の長谷川彰・現学長が、7票を獲得し、第二次意向投票で、教職員の投票の53%をとって第一位となった山本正治・医学部長の3票を破って、まさに大逆転で、次期学長候補者に決定されたという。  
  11月30日の第二次意向投票結果
有権者 1,140名 投票率 72% 1位 山本  443票(53%) 2位 長谷川 360票
  11月7日の第一次意向投票結果
有権者 1,632名 投票率 58% 1位 長谷川 516票(54%) 2位  山本 394票
(第一次と第二次の有権者の数の大きな違いは、職員を含むか否かによる。)

 この間、私は、大学院実務法学研究科長・評議員という立場にありながら、今回の選挙にまったく関係なく、投票に行くだけで、結果を見てビックリするという、大方の一般教職員と同じ状況にあった。ただ、毎回の意向投票の結果については、そういうこともあろうかと思うだけであったが、選考会議の結果は、まったく受け入れがたい。

以下、連載


投稿者 管理者 : 2006年03月16日 00:01

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