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2006年04月07日

日弁連、男女雇用機会均等法および労基法の一部改正案に対する会長声明

日弁連
 ∟●「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律」案に対する会長声明

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律」案に対する会長声明

厚生労働省は、本年3月7日、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律及び労働基準法の一部を改正する法律」案(以下、「法律案」という。)を今国会に提出した。

当連合会は、既に昨年6月16日付で意見書を発表し、さらに労働政策審議会に諮問された法律案要綱に対し本年2月16日付で意見を述べてきたが、今後の国会審議にあたって、「間接差別」、「仕事と生活の調和」及び「賃金」という特に重要な3点につき、意見を述べる。

1 法律案7条では、間接差別として禁止される対象が「…労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として厚生労働省令で定めるもの」に限定されている。そして、厚生労働省の説明によれば、省令で定めるものとして予定されているのは「募集・採用における身長・体重・体力要件」、「コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用における全国転勤要件」、「昇進における転勤経験要件」の3つということであるが、そもそも間接差別は、差別事案が多様化、複雑化し、次々と新たな形態の問題が生ずる中で、効果的に男女差別の是正を進めていくための概念として確立してきたものであって、法律案のように省令で限定する方法は間接差別の概念にはなじまない。

また、この法律案及び予定されている省令によると、住民票上の世帯主であることを要件とする場合や正社員、パートあるいは契約社員という雇用形態の違いによる取扱いの差異の場合などの現実に社会で生じている問題について、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下、「均等法」という。)の禁止する間接差別ではない、ということになり、同法による救済は受けられないことになる。のみならず、この法律案のように省令で限定されてしまうと、それに該当しないケースを裁判で争うことも非常に困難となってしまう。

したがって、法律案7条のうち、「…として厚生労働省令で定めるもの」という部分を削除して、省令による限定列挙をやめ、指針により間接差別となりうるものを具体的に例示する方法(例示列挙)によるべきである。

2 法律案には、法の目的・理念に「仕事と生活の調和」が明記されていない。しかし、多くの男性が家庭責任を担う時間もないほどの長時間労働を行い、家庭責任の大部分が女性の負担となっている現状を考えるならば、雇用における男女平等の実現のためには、男女ともに仕事と家庭生活を調和させながら働き続けられるような条件整備が不可欠である。

したがって、目的(現行法1条)や基本的理念(法律案2条)に「仕事と生活の調和」を明記し、啓発活動(現行法3条)や男女雇用機会均等対策基本方針(法律案4条)の内容、調査等(法律案28条)の対象としても明示すべきである。

3 法律案では、差別的取扱いを禁止する対象として、降格等が追加されている(法律案6条)が、「賃金」は含まれていない。しかし、差別事案で最も多く問題となるのは「賃金」であり、労働基準法4条による救済の他に、均等法に基づく救済機関や制裁措置の利用などを認め、また、今回規定される間接差別の禁止の対象となることを明らかにする必要性は大きい。

したがって、「賃金」についても差別的取扱いを禁止する対象に追加されるべきである。

2006(平成18)年4月5日

日本弁護士連合会
会長 平山 正剛


投稿者 管理者 : 2006年04月07日 00:00

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