個別エントリー別

« 四国学院大学解雇事件、大学側による仮処分抗告(許可抗告、特別抗告)が却下 | メイン | その他大学関係のニュース(主に大学別) »

2006年05月30日

国際人権規約「高等教育の漸進的無償化条項」の留保撤回について

京滋私大教連
 ∟●機関紙No111(2006.5.20号)

国際人権規約「高等教育の漸進的無償化条項」の留保撤回について
―2006年6月末の政府報告を直前にして―

国庫助成に関する全国私立大学教授会連合
「2006年問題」特別委員会委員長 今井 証三

 二○○一年、政府は国連の社会権規約委員会から「留保撤回の検討をするよう」勧告を受けましたが、その回答期限が迫ってきました。今年一月の小泉首相発言(衆議院本会議)、三月の麻生外務大臣の発言(衆議院予算委員会)を聞く限りでは、留保撤回については大変厳しい状況にあると思います。

 政府の「留保宣言」の理由は、国際人権規約の批准時以来、そして勧告を受けて以来も、基本的に変わっていません。すなわち、非進学者との負担の公平、受益者負担、私立大学の占める割合の大きさ、奨学金制度・授業料減免措置の充実などの理由でした。私たちは、それに対して、国民の教育を受ける権利、学生の学ぶ権利、社会もまた受益者(中教審答申)、公教育・公財政、などの立場を主張して「留保撤回」をつよく求めてきました。世界一高い学費(加重的平均学費)、先・中進国で最も貧困な奨学金制度(OECD加盟国では、奨学金とは返済の必要がないものをいい、返済の必要があるものは学生ローンとよぶ)、私学振興助成法と現実との乖離、高等教育費(公財政支出)の対GDP比がOECD諸国で最低クラスなどは、国際人権規約「高等教育の漸進的無償化条項」の「留保宣言」(一五一ケ国中三カ国)をし続けている政府の態度と深い関係にあるのです。
 常任理事国入りを主張しつつ、恥じることなく(批准時の園田外務大臣は、留保したことに「恥じている」と述べ、当然、将来、解除の努力と責任があると言明している)留保し続けている政府の態度を変えるのは、私たち国民の力と運動であると思います。外務省へ要請行動にいった際、「外圧があれば撤回できるかも」(この場合は諸外国の外圧という意味)と言った対応者がいましたが、私たちの運動の力が弱いことも事実です。
 今年の三月、立命館大学において、「二○○六年問題」についての全国シンポジウムが開催されました。国庫助成に関する全国私立大学教授会連合が主催し、日本私大教連、全大教(国立大学法人等教職員組合)、大学評価学会、「国際人権A規約一三条の会」が協賛したものです。シンポジウムでは、政府に留保撤回を求める「宣言」が採択されましたが、私はこのシンポジウムは大変意義のあるものであったと思います。シンポジウムでは、全学連の委員長などの発言もあり、私立大学、国立大学法人、学会、市民団体など、日本の大学の関係団体が一堂に会したという点では画期的なシンポジウムであり、「留保撤回」だけでなく、今後の「高等教育運動」のあり方をも示すものではなかったかと思います。
 私は、シンポジストの一人として、「二○○六年問題」の国民的運動の構築について次の点について述べました。私学助成・対GDP比一%・留保撤回(三位一体)の課題認識をもち、以下の諸団体と連携をとり文字通りの国民的運動を作ることについてです。高等教育関連機関だけでなく、高学費と経済的負担の増大に直面している学生・父母、中等教育関連機関(中等教育の漸進的無償化条項も「留保宣言」されている。ただし、子どもの権利条約では、それが「留保宣言」されていない点に留意)、政党(これまで二度にわたって「留保解除」の国会附帯決議をあげている。つまり、どの政党も「留保撤回」に反対していない)などです。
 六月三○日は目前ですが、場合によっては、期限内に政府報告が国連の社会権委員会に提出されないことも予想されます。「留保撤回」の課題は、いずれにせよ、今日では私学助成などとの運動と密接不可分なものとなっています。マスコミなどにも訴えて幅広い国民的運動を構築することが大切だと思います。


投稿者 管理者 : 2006年05月30日 00:02

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/1783

コメント