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2006年10月04日

東京弁護士会、「日の丸・君が代」強制予防訴訟東京地裁判決を支持する声明

「日の丸・君が代による人権侵害」市民オンブズパーソン
 ∟●東京の2つの弁護士会 会長声明 

「日の丸・君が代」強制予防訴訟東京地裁判決を支持する会長声明

2006年(平成18年)9月27日
第二東京弁護士会 会長 飯 田   隆

 去る9月21日、東京地方裁判所は、都立学校の教職員らが、東京都及び東京都教育委員会(都教委)に対して、国歌斉唱義務不存在確認等を求めた訴訟(「日の丸・君が代」強制予防訴訟)において、原告らの訴えを全面的に認め、①原告ら都立学校の教職員らに、入学式・卒業式等における国歌斉唱の際に、国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務、ピアノ伴奏をする義務がないことを確認し、②不起立・不斉唱・ピアノ伴奏拒否等を理由にいかなる不利益処分もしてはならないとし、③原告らの被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡した。

 本件は、都教委が、2003年10月23日付で、都立学校の教職員に対し、入学式・卒業式などにおいて国旗に向かって起立し国歌を斉唱すべきこと、ピアノ伴奏をすべきことなどをはじめとする詳細な事項を、校長の職務命令を通じて命じ、かかる職務命令に従わない教職員は服務上の責任を問われることを周知すべきことを通達した(10・23通達)ことに起因する。その後、10・23通達及びこれに関する一連の指導等に基づき、東京都では現在までに延べ345名にものぼる教職員が懲戒処分を受け、さらに懲戒処分を受けた者には強制的に研修が命じられ、定年後の再雇用を拒否されるなど、行政による教育現場への介入が続いている。

 当会は、2004年2月18日付で、公立学校長に対し、入学式・卒業式等における国歌のピアノ伴奏を強制しないよう勧告を行い、さらに2005年2月28日には、都教委に対して、10・23通達を廃止すること、都立学校の卒業式・入学式において教職員・児童生徒に国旗への起立・国歌斉唱を強制しないこと、教職員・児童生徒の不起立・不斉唱を理由として教職員に不利益処分を科さないことを強く求める会長声明を発してきた。

 今回の判決は、都教委による10・23通達と、それに関する一連の指導等が「教育の自主性を侵害し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しい」と指摘し、教育基本法10条1項が禁ずる「不当な支配」に該当して違法であり、憲法19条の思想・良心の自由を侵害するものであることを明確に判示した。

 およそ思想・良心の自由は、個人の精神活動のうち最も根元的な自由であり、憲法19条は、その根元的自由を外部の干渉介入から守るために絶対的に保障している。そして教育基本法10条は、戦前の教育における過度の国家的介入と統制を反省し、「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」(第1項)と定め、公権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならないとする憲法上の要請を担保している。

 当会は、今回の判決が憲法と教育基本法とを忠実に解釈・適用したものであり、当会が従来から都教委などに対し繰り返し求めてきた内容と合致するものであって、これを高く評価するものである。

 当会は、東京都及び都教委が本判決を真摯に受け止め、①直ちに10・23通達を撤回すること、②今後、都立学校の入学式・卒業式等において、教職員・児童生徒に対し国旗への起立・国歌斉唱・ピアノ伴奏等を強制しないこと、③今後、教職員・児童生徒の不起立・不斉唱・ピアノ伴奏拒否等を理由として教職員に不利益処分を科さないこと、④10・23通達に基づいてなされた教職員に対する不利益処分を取り消すことを強く求めるものである。

思想・良心の自由に関する声明
 -国歌斉唱義務がないことを認めた判決に関連して

 2006年9月21日、東京地方裁判所は、都立学校の教職員らが、国歌斉唱義務不存在確認等を求めた訴訟において、都教委教育長の「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」は、少数者の思想・良心の自由を侵害し、行き過ぎた措置であって、憲法19条に違反する、と判示した。

 本判決は、憲法が保障する精神的自由権は、民主主義社会において根本的に重要であること、これは教育公務員にも妥当することを確認したものであり、重要な意義を有する。現行教育基本法の「改正」論議が高まる中、準憲法的な性格を持つ現行教育基本法が、行政による教育への不当・不要な権力的介入を戒める今日的意義を有することを示したものとも考える。

 ところで、当会は、2004年9月7日付「『国旗・国歌実施指針』に基づく教職員処分等に関する意見書」において、前記通達による教職員に対する国旗国歌の強制が、教職員の思想・良心の自由を侵害するだけでなく、児童生徒にも心理的強制を加え、その思想・良心の自由の侵害をも招くものであるとして、同通達に基づく教職員に対する処分や、厳重注意等を行わないよう意見を表明してきた。

 そこで、当会は、本判決を契機に、あらためて東京都及び都教委に対し、教職員らの思想・良心の自由の侵害を繰り返さないよう求めるものである。

2006年9月28日
東京弁護士会       
会長 吉 岡 桂 輔
 

投稿者 管理者 : 2006年10月04日 00:00

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