個別エントリー別

« 「労働契約法制及び労働時間法制について」の最新審議会資料 | メイン | その他大学関係のニュース(主に大学別) »

2006年10月13日

日弁連、貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議

日弁連
 ∟●貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議(2006-10-06)

貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議

経済大国といわれる現代日本において、貧困や格差が急速に拡大し、「健康で文化的な最低限度の生活」を維持できない人々が増大している。

失業や不安定就労・低賃金労働の増大などによって生活困窮に陥り、高利の貸金業者から借入をして多重債務に陥った人々は200万人以上にのぼる。また、仕事、家族、住まい等を次々と喪失し、これが世代を超えて拡大再生産されるという「貧困の連鎖」が生じる中、社会から排除された人々の餓死事件や経済的理由による自殺が相次いでいる。

このような現状のもと、社会保障の最後のセーフティネットとされる生活保護の申請窓口では、「稼働能力がある」「扶養義務者がいる」「ホームレスである」「現住居の家賃が高すぎる」等の理由で申請さえ受け付けないという明らかに違法な運用が横行し、実際の生活保護利用者は、本来この制度を利用し得る人の2割程度にとどまると推計されている。また、外国人に対しては生活保護法を適用することなく一部にのみ準用するという扱いが続いている。最近では、老齢加算を廃止し母子加算を縮小したうえ、さらなる基準額の切り下げや適用抑制による生活保護関係予算削減の動きが加速している。

しかし、そもそも、健康で文化的な生活を営む生存権を保障する憲法25条、個人の尊厳原理に立脚し、幸福追求権について最大の尊重を求めている憲法13条、そして、すべての人の「適切な生活水準の権利」の実現を求める経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約11条に照らせば、本来、国及び地方自治体には、貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現する責務がある。

そこで、当連合会は、国・地方自治体に対し、貧困や経済的格差の拡大という実態を直視し、以下の施策を実施するよう強く求めるものである。

第1 生活保護制度について
生活保護の切り下げを止め、基礎年金額の引き上げや生活保護法の積極的適用などにより社会保障の充実を進めること
生活保護の申請が権利であることを確認し、福祉事務所窓口での申請権を侵害するような運用を直ちに是正すること
法改正の提言
(1) 法律の名称変更、保有資産の要件緩和、資産調査の軽減、教育扶助の範囲の拡大、苦情相談を受ける第三者機関の設置、捕捉率等の貧困調査の義務付けなど、現行の生活保護法を、より積極的に生存権を保障する内実をもつ生存権保障法制に改正すること
(2) 生存権保障法制における、制度利用者の助言請求権と行政の広報、情報提供などの周知徹底義務を定めること
(3) 外国人を含むすべての人を生存権享有主体として明記すること

第2 生活保護制度を取り巻くセーフティネットの整備・充実
低所得者を対象とする無利息・無保証の公的融資制度を整備・充実させること
多重債務者をはじめとする生活困窮者が利用しやすい、社会保障制度の相談と有機的に結合した専門性の高い相談窓口を創設・拡充すること
当連合会は、生活保護の申請、ホームレス問題等の生活困窮者支援の分野における従前の取り組みが不十分であったとの反省に立ち、今後、研究・提言・相談支援活動を行い、より多くの弁護士がこの問題に携わることになるよう実践を積み重ね、生活困窮者支援に向けて全力を尽くす決意である。

以上のとおり決議する。   

2006年(平成18年)10月6日
日本弁護士連合会

以下,提案理由は省略。

[関連ニュース]
生活保護、過去最多の104万世帯 05年度の月平均
生活保護の拒否66%は「違法」 日弁連調査

投稿者 管理者 : 2006年10月13日 00:23

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/2458

コメント