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2006年10月17日

全大教、助教への任期導入問題等に関する要望書

全大教
 ∟●助教への任期導入問題等に関する要望書、2006年10月4日

2006年10月4日

文部科学大臣
伊吹 文明 殿

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長大西 広

助教への任期導入問題等に関する要望書

 学校教育法の改正により、2007 年4 月に「新たな教員制度」が施行されます。
 このことに関わって、いくつかの大学では、助教全てを任期付きの職とし、現職助手が助教となるために任期が強要されるという考え方が示され、学内で重大な問題となっています。「大学の教員等の任期に関する法律」は「改正」され、助教に任期制を就けることが法的には可能となりましたが、問題はそう単純ではありません。

 助教に任期をつけるためには、(1) 大学で任期制に関する規則が整備されていること、(2) 規則に基づく任期制に本人が同意することが必要となります。助教の資格・能力を有する助手が、任期付きに同意すれば助教となり、同意しない場合は「新助手」に位置づけられることになりますが、次のような問題があります。

 第1に、労働条件の不利益変更問題です。

 現職助手が助教としての資格・能力を持ちながら任期付きに同意しなければ助教になれないということは、任期のない労働契約を結びながら任期が付けられることになり、労働条件の不利益変更であり、労働法規や判例にてらしても重大な問題があります。
 また、任期付き雇用を拒んだ場合、助教となる資格・能力がありながら、従来の助手と明らかに異なる「新助手」への移行が強要されることになります。
 「新助手」は、改正学校教育法第58 条で「その所属する組織における教育研究の円滑な実施に必要な業務に従事する。」と規定され、2006 年5 月の文部科学事務次官通知でも、「教授、準教授、助教とは職務内容が明確に異なる職として位置付けることとした。」としています。また、大学設置基準第12 条、13 条で、専任教員は「教授、準教授、助教」とし、「新助手」は除外されています。
 このことは、研究費等の削減、教授等への昇任等を困難にすることが予測され、労働条件の不利益変更となります。

 第2に、助教全員任期制という身分不安定な教員の増大によるメンタルヘルス問題があります。
 助手が任期付きに同意し、助教となった場合でも、任期制は学内でも社会的にも未成熟であり、横断的労働市場が形成されていない現状では、任期付きという不安定な身分のままで、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」という職務に専念し、研究者としての成長を保障し得るのか甚だ疑問です。
 特に、大学内でメンタルヘルス問題が大きな課題となっている現在、軽々に全ての助教を対象に任期制を導入することにより、身分不安定な下での競争をさらに激化させ、有為な人材を失う愚は許されるものではありません。
 大学法人は、下記の「提言」を警告として真摯に受け止め、任期制の導入には慎重を期すべきです。(注1 参照)

 第3に、助教の全員任期制は、学校教育法の改正理由や附帯決議にも反するという点です。(注2 参照)
 学校教育法の改正理由は、「教育研究の活性化等の観点から助教授及び助手の職に関する教員組織の整備を行う等の必要がある。」としています。また、学校教育法改正にともなう国会附帯決議では、「優秀な若手研究者を養成・確保し、もって、我が国の教育研究水準の維持・向上を図るため、若手研究者の教育研究の機会・環境の整備に努めること。」としています。
 上述したように、助教全員への任期制導入は、助教としての資格・能力がありながら任期制という別の要因により、職の選択が左右されることになります。
 このことは、学校教育法改正理由や国会附帯決議にも反するものであり、「新たな教員組織」を矛盾と混乱に導く危険性をもつものです。
 このことをふまえ、貴職として下記事項について適切な措置をとられるよう改めて要望するものです。

1, 少なくとも現職助手が助教となる条件として助教全ての職を任期制とすることは、学校教育法の改正趣旨に反し、かつ労働法規等に照らしても重大な問題があることを大学に周知・徹底すること。

2, 助教の職が従来の助手と異なり、重要な職責を担うことをふまえ、処遇改善の予算措置を行うとともに、大学に対し、処遇改善措置の必要性について周知すること。


投稿者 管理者 : 2006年10月17日 01:23

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