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2006年10月24日

北海道私大教連・全大教北海道、声明「教育基本法『改正』法案の廃案を求める」

 北海道私大教連・全大教北海道は、10月20日,共同して「教育基本法『改正』法案の廃案を求める」の声明を発表した。

関 係 各 位
2006年10月20日

《 声 明 》

教育基本法「改正」法案の廃案を求める

北海道私立大学教職員組合連合  執行委員長   美馬孝人
全国大学高専教職員組合北海道地区教職員組合議長  兼岩龍二

 拙速な改悪に反対する世論の高揚で、さきの通常国会では「継続審議」となった教育基本法「改正」法案が、ふたたび現在の臨時国会において取り上げられ、その成立にことさら強い意欲を示している新総理大臣の下、優先的に採決に持ち込まれる可能性が高まってきた。
 しかしこの教育基本法「改正」案は、各界の識者が指摘しているように、また今年5月-6月の国会審議からも明らかになったように、憲法26条に保障された国民の教育を受ける権利、および国民が教育を担う権利を著しく損なう恐れがある点で、憲法に違反する疑いが濃厚であるばかりでなく、これまで公式には否定されてきた教育に対する国家の全面的支配権を確立しようとする、非常に危険な内容を多く含んでいる。
 現行法第1条(教育の目的)にある「人格の完成」は残っているが、「改正」案1条には、それと並列して「必要な資質を備えた国民の育成」が新たにあげられ、それを受けて、「改正」案第2条(教育の目標)が位置付けられている。そこでは5項目にわたって道徳教育の「徳目」として「豊かな情操と道徳心」「公共の精神」「わが国と郷土を愛する」などが現れてくる。個人、社会、国家と上向して徳目の頂点に愛国心を位置付ける構成は、現文部科学省の『心のノート』と同じやり方であり、強引なものと言わざるをえない。
 従来道徳として生活の指針とされていたものを、新たに法律化してそれを強制するということは、多義的に解釈され得る道徳に対して、時の政府が望ましいと考える一面的な解釈を押しつけることに他ならない。それでは国民の思想・良心の自由を侵しかねない。しかもこの一面的な教育は、大学、私立学校、幼稚園にまで強要される。
 また、この「改正案」の問題点として、「大学」(政府案第7条)と「私立学校」(政府案第11条)の新設も看過できない。これらの部分は既存の個別法が充分役割を果たしており、なぜ敢えて教基法に盛り込まなければならないか、企図が不明である。本来、特に大学教育における教育研究や私立学校の教育では、国家の干渉になじむものではない。明確な独立性が保持されるべきものである。それを「自主性、自立性」を「尊重しつつ…」の域に低下させ、教育の基本法制で統制することは、学問の自由・大学自治・私学教育への不当な侵害以外の何ものでもない。
 教育基本法「改正」案は、第二次大戦前の教育勅語に基づく教育がそうであったように、国家が教育を支配下におこうとする狙いに満ちている。それは「教育行政」の条文に端的に現れている。現教育基本法10条は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接責任を負って行われるべきものである。2・教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」としているのに対して、「改正」案16条は、教育が国民全体に対して責任を負うという部分と、条件整備関連部分を削除し、それに代えて新しい2項目に、「国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」と謳っている。さらに17条には、「政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告する」としており、国の教育行政が教育を全面的に支配することを明記している。また、民主党案についても、同様の危険性をもっていると言わなければならない。
 9月21日、東京地方裁判所は、東京都教育委員会が国の指導に基づいて出した「国旗掲揚・国歌斉唱」の03年通達を、教育基本法10条違反、憲法19条違反と判決した。東京都は、国の教育行政の先頭を切って教育現場への介入を進めており、「君が代」指導を忠誠を示す踏絵として利用しており、この踏み絵を拒否する教員が次々と懲戒処分に苦しめられてきた。この判決は、現在の教育基本法が教育を国の強権から保護し、国民の教育権を支える法律であることを明かしている。
 安倍内閣が各方面で権力的策動を強めている時、教育基本法の「改正」はこの悪しき方向への傾斜を一挙に推し進めることとなろう。私たちは、民主教育と大学での教育研究の自由ひいては民主主義擁護のために、共同してこの法案の廃案を要求し、おおくの市民・関係者とともに奮闘することを表明する。 

以  上

投稿者 管理者 : 2006年10月24日 00:00

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