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2006年10月25日

関西圏の大学教職員組合連合・協議会、教育基本法「改正」案に反対する共同アピール

京滋私大教連

教育基本法「改正」案に反対する共同アピール

 今秋の臨時国会において誕生した安倍新政権は、最優先の政治課題として教育基本法「改正」案(以下「改正」案)の成立に強い意欲をみせています。与党は、「子どものモラルや学ぶ意欲の低下、および家庭や地域の教育力の低下」、「個性の尊重や個人の自由が強調される一方で、規律や責任、他人との協調、社会への貢献など基本的な道徳観念や『公共の精神』が、ややもすれば軽んじられてきた」といったことを「改正」の理由にあげています。

 しかし、このような問題は教育基本法の「改正」で解決するものではありません。それどころか、この「改正」案が成立することによって、教育における市民の自主と独立は否定され、そのあり方は根底から変更されてしまうことになります。

 第一の問題点は、「愛国心」をはじめとする人格規範の明文化です。「愛国心」そのものについては、それを是とする立場も非とする立場もあるでしょう。しかし、いずれの立場でも、法律上の権威をもって「愛国心」を押し付けてはならないのであって、個々の市民の生きる場において、自由な討論を通じて徐々に育まれていくべきものです。人格規範の明文化は、その人びとの自律的な人格形成の機会を奪おうとするものであり、断じて容認することはできません。

 第二の問題点は、新自由主義的・競争主義的な社会規範を強く反映している点です。「新自由主義」についても、それを是とする立場も非とする立場もあるでしょうが、いずれの立場でも、継続的に市民による自由な討論に委ねられるべきものです。教育の場は、多様な考え方に触れながら、競争主義であれ平等主義であれ、そのような考え方の是非を主体的に問うことのできる市民が育つ場でなければなりません。そのためには、「新自由主義」に限らず、特定の社会規範に強く融合したものが、新たに教育に持ち込まれることは、断じて容認できません。

 第三の問題点は、教育現場の自主性が奪われ、教育行政による中央集権的な支配が導入されることです。政治・行政が教育に介入することを禁じている現行法第10条「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」を180度転換し、「教育振興基本計画」の策定を通じて、政府による教育内容への介入を強力に押し進めようとしています。さらに、「大学」の項目を新設して、大学の役割を産学連携に矮小化し、大学に対する国家予算を産業界の資金への依存に切り替えようとしています。

 そもそも「改正」案は、与党検討会という密室の中で練られたものであり、広く市民の議論に託されるということはありませんでした。国会審議がはじまってからも、反対意見に対する誠実な応答は未だにほとんどなされていません。

 そのような状況にも関わらず、「十分な審議を尽くした」と強弁して採決を急ぐ動きさえあります。「改正」案は、その内容においても、その手続きにおいても、反‐民主主義的性格を露骨に表したものと言えるでしょう。私たちは、教育に携わるものとして、このような「不当な支配」に屈することはできません。私たちは、教育基本法「改正」案の廃案を強く求めます。

2006年10月21日(土)

大阪地区大学教職員組合連絡協議会
大阪地区私立大学教職員組合連合
京都私立大学教職員組合連絡協議会
京滋地区私立大学教職員組合連合
全国大学高専教職員組合近畿地区協議会


投稿者 管理者 : 2006年10月25日 00:01

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