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2007年01月24日

全大教、労働政策審議会「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」に関する声明

全大教
 ∟●(07/01/17) 労働政策審議会「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」に関する声明

労働政策審議会「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」に関する声明

2007 年1 月17 日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

<はじめに>
 昨年12 月27 日、労働政策審議会は「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」(以下「報告」)を厚生労働大臣に答申した。

1. 労働時間規制緩和の問題点

 「報告」の最大の問題点は、労働時間規制の除外制度(「ホワイトカラー・エグゼンプション」)の導入により、残業代なしのサービス残業を合法化するとともに、歯止めのない長時間労働を助長して労働者の心身の健康を蝕むことにある。
 労働基準法は、第32 条で「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40 時間を超えて、労働させてはならない。②使用者は1 週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1 日について8 時間を超えて、労働させてはならない。」と法定労働時間を定めている。第36 条で時間外労働及び休日労働については労使協定を義務づけ、第37 条で時間外、休日及び深夜労働の割増賃金を定めている。
 「報告」は、この労働時間規制の原則を経営側の思惑に沿って大きく転換し、「自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設」として「一定の要件を満たすホワイトカラー労働者について、…労働時間に関する一律的な適用を除外」するとしている。その対象は「管理労働者の一歩手前に位置する者」とし、年収要件は政省令で定め、制度導入の要件として「労使委員会の設置」と必要事項の決議、行政官庁への届け出を規定するとしている。もしこのような「労働時間規制の除外制度」が導入されるならば、過酷な長時間労働が常態化しサービス残業さえ蔓延している現状において、残業代がゼロとなることで賃金の相当額が減らされる一方、家庭生活を崩壊させ、現在深刻化しているメンタルヘルス問題等労働者の心身障害や過労死を一層促進するものになることは必至である。
 日本経団連は、「一定の要件を満たす」者として年収400 万円以上の労働者を対象とするよう主張している。仮に400 万円以上を対象とした場合、大学・高専等の職場では、事務・技術系職員の8 割から9 割が該当することになる。
 この「報告」への反対の声が広がる中で、厚生労働大臣は「900 万円以上」を対象と言明しているが、一旦この制度が導入されれば、給与要件を当初は高めに設定したとしても、しだいに引き下げて対象労働者を拡大していく危険性が高い。
 労働時間規制の除外制度(「ホワイトカラー・エグゼンプション」)は今でもサービス残業を余儀なくされる事務系職員を対象とする制度改悪であり、我々は制度の導入自体に断固反対するものである。

2.労働契約法制について

 「報告」では、労働契約法制の新設について、「就業形態・就業意識の多様化等が進み」「個別労働関係紛争も増加傾向」にある中で、個別労働関係を律するための「体系的で分かり易い解決や未然防止に資するルールが欠けている現状にある」との認識から、労働契約の原則、成立及び変更、契約の終了等「労働契約が円滑に継続するための基本的なルール」を法定するものとして新たに提案されている。
 その中で大きな焦点となっているのは、「就業規則の変更による労働条件の変更については、その変更が合理的なものであるかどうかの判断要素を含め、判例法理に沿って、明らかにすること」という点である。これは一面では、民間企業で多発する一方的不利益変更について法律で規制しようとする意図が働いている。しかし反面、現在は「一方的不利益変更は無効である」との主張ができるが、もし「一方的不利益変更であっても合理的ならば有効である」と法律で規定された場合、不利益変更が不合理であることを後追い的に主張し争うという取り組みとならざるを得ず、一方的不利益変更を助長するという重大な問題が生じる。「労働条件の変更は誠実かつ十分な交渉に基づく労使間の合意によらなければならない」等厳格な縛りを明記することが必要不可欠である。

3, 私たちの基本的立場

 これまで明らかにしてきたように、今回の「報告」には重大な問題があり、私たちはこれに断固反対の意思を表明するものである。「報告」への疑問・反対の声が広がる中で、安倍首相は、労働時間規制の除外制度(「ホワイトカラー・エグゼンプション」)を導入する法案について、今国会での提出を行わないことを表明した。しかし、政府は法案策定を断念したわけではない。私たちは幅広い共同の取り組みにより、法制化反対運動を進めるものである。
 一方、「報告」も言う通り、「労働契約の内容が労使の合意に基づいて自主的に決定され」るべきことは当然である。そのためにこそ、労働法制は、使用者による一方的な不利益変更を助長するのではなく、労使の実質的な対等関係を保障するために改善されなければならない。
 私たちは、教職員の労働条件改善及び大学・高等教育の充実をめざし、大学・高専・大学共同利用機関における労使交渉・労使協議による問題解決と良好な労使関係の確立のため引き続き取り組みを強化するものである。



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投稿者 管理者 : 2007年01月24日 00:05

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