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2007年04月03日

自由法曹団、都教委の「日の丸」「君が代」強制と教職員処分に抗議し、処分撤回を求める

自由法曹団
 ∟●都教委の「日の丸」「君が代」強制と教職員処分に抗議し、処分撤回を求める

都教委の「日の丸」「君が代」強制と教職員処分に抗議し、処分撤回を求める

1 2007年3月30日,東京都教育委員会は,2003年10月23日付け通達(「入学式,卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」)及びこれに関する一連の指導等に基づき,今年の卒業式における「君が代」斉唱時の不起立者等に対し,新たに35名の都立学校教職員を処分した。
 東京都では,今回の処分以前に345名にのぼる教職員が懲戒処分を受け,さらに処分を受けた者には強制的に研修が命じられ,定年後の再雇用を拒否されるなど,行政による教育現場への介入が続いている。思想・信条の自由を保障した憲法の理念に反する極めて不当かつ常軌を逸した異常事態と言わざるを得ない。

2 およそ思想・信条の自由は,個人の精神活動のうち最も根元的な自由であり,憲法19条は,その根元的自由を外部の干渉介入から守るために絶対的に保障している。そして旧教育基本法10条は,戦前の教育における過度の国家的介入と統制を反省し,「教育は不当な支配に服することなく,国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」(第1項)と定め,公権力による教育内容への介入は許されないとする憲法上の要請を担保していた。
 この点,新教育基本法16条は,「教育は,不当な支配に服することなく,この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり,教育行政は,国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下,公正かつ適正に行われなければならない」(第1項)と定めるに至ったが,新教育基本法も憲法の下にある以上,やはり法律をもってしても公権力による教育内容への介入は許されないと解されなければならない。

3 「日の丸」「君が代」に対して,どのような意見・思想を抱くかは,国民一人一人の内心の問題であり,自己の思想・信条に基づき「君が代」斉唱に際して「不起立」とした教職員らに対して,行政が「起立」することを命令し,これに従わなかったことを理由に処分することは,憲法の保障する「思想・信条の自由」を明らかに侵害するものである。さらに,教職員らに対する強制は,児童・生徒を「教師が処分されないようにするためには,自分たちが起立して『君が代』を歌わざるを得ない」という立場に追い込むものであり,児童・生徒らの「思想・信条の自由」をも侵害するものである。同時に,卒業式等における「日の丸」「君が代」の強制は,公権力による教育内容への介入にあたり,旧教育基本法10条に違反することはもちろん,新教育基本法16条にも違反するものである。さらに,かかる教育現場に対する一方的価値観の押しつけは,子どもたちの自律的な人格的発展を図るという教育の本質そのものに反し,教育という人間的営み自体を破壊している。

4 2006年9月21日,東京地方裁判所民事第36部(難波孝一裁判長)は,都立学校の教職員らが,東京都及び都教委に対して,国歌斉唱義務不存在確認等を求めた訴訟(「日の丸・君が代」強制予防訴訟)において,原告らの訴えを全面的に認め,①原告ら都立学校の教職員らに,入学式・卒業式等における国歌斉唱の際に,国旗に向かって起立し,国歌を斉唱する義務,ピアノ伴奏をする義務がないことを確認し,②不起立・不斉唱・ピアノ伴奏拒否等を理由にいかなる不利益処分もしてはならないとし,③原告らの被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡した。
 この判決は,都教委による上記通達等が「教育の自主性を侵害し,一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しい」と指摘し,旧教育基本法10条1項が禁ずる「不当な支配」に該当して違法であり,憲法19条の思想・良心の自由を侵害するものであることを明確に判示した。憲法と教育基本法とを忠実に解釈・適用した当然の司法判断である。

5 上記東京地裁判決に対して,都教委らは,不当にも控訴し,現在同訴訟は東京高等裁判所に係属して審理が続いている。
 この点,明確な司法判断が示された以上,都教委は,少なくとも上記訴訟が確定するまでは,上記通達等に基づく処分を差し控えるべきであった。それにも関わらず,今回同様の処分を繰り返したことは,司法の判断を著しく軽視するものと言わざるを得ない。

6 自由法曹団は,都教委に対し,2006年4月3日付け「東京都教育委員会の『日の丸』『君が代』強制に抗議し,教育基本法の改悪に反対する声明」,同年9月29日付け「『日の丸,君が代』の強制を違憲違法とした東京地裁判決についての声明」を発し,①直ちに上記通達等を撤回すること,②今後,都立学校の入学式・卒業式等において,教職員・児童生徒に対し国旗への起立・国歌斉唱・ピアノ伴奏等を強制しないこと,③今後,教職員・児童生徒の不起立・不斉唱・ピアノ伴奏拒否等を理由として教職員に不利益処分を科さないこと,④上記通達等に基づいてなされた教職員に対する不利益処分を取り消すことを求めてきた。
 しかし,都教委は,われわれ自由法曹団のみならず,日本弁護士連合会,各単位弁護士会,その他国民各層,各界からの批判にも関わらず,その姿勢を一向に改めようとせず,「日の丸・君が代」の強制を繰り返している。
 自由法曹団は,都教委に対し,今回の教職員らに対する処分に抗議するとともに,「日の丸・君が代」の強制を直ちに止め、すべて教職員処分を撤回するよう強く求める。

2007年3月30日
自由法曹団
団長 松井繁明
自由法曹団東京支部
支部長 島田修一

投稿者 管理者 : 2007年04月03日 00:04

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