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2004年04月10日

京大井上事件、京都地裁平成16年3月31日判決論評

Academia e-Network Letter No 91 (2004.04.08 Thu)より

以下,阿部泰隆編著「京都大学井上一知教授任期制法「失職」事件」(仮題)信山社2004年(6月頃刊行予定)、第6章

一 裁判の概要

本件は同一事件ではあるが、訴訟としては2つの事件からなる。
そして、2つの同じ内容の判決が同時に言い渡されている。

ひとつは、平成15年(行ウ)第8号の地位確認等請求事件で、4つの訴えが選択的に併合されている。

・京大再生研教授たる地位確認訴訟・被告京都大学総長が、平成14年12月20日付でした再任拒否処分の取消請求、・ が被告京都大学総長は原告に対し平成15年5月1日付で原告を再生研の教授として再任する旨の処分をせよとの義務付け訴訟、・平成10年5月1日付の本件昇任処分に付された「任期は平成15年4月30日までとする」との附款が無効であることの確認訴訟、である。

 このうち、・、・、・は却下(門前払い)、・は棄却(これは門がないので中に入って排斥)された。

もうひとつは、平成15年(行ウ)第16号再任拒否処分取消請求事件で、京都大学学長が原告井上教授に対して平成15年4月22日付でした任期満了退職日通知書に基づき原告を同月30日限りで失職させる旨の処分は取り消せという訴訟である。
この争点は、この通知が行政処分かどうか、これは違憲、違法、内規違反を理由に取り消されるべきか、という点にあるが、裁判所は、行政処分ではない、として却下した。

16号事件の理由は皆同じであるので省略し、ここでは8号事件の争点を検討する。

争点は、裁判所の整理によれば次のようである。

争点1 原告は平成15年5月1日以降も京都大学再生研教授の地位にあるか。具体的には、国立大学教員の任期制とは何か、本件昇任処分の任期を定めた部分のみが無効であるといえるか、 昇任処分に対して原告の同意を得る手続に瑕疵があった場合、任用の効果に影響があるか、本件のうち・の請求に理由があるか、・の請求は適法かどうか。

争点2 本件通知は原告を失職させる行政処分であるか、被告京都大学総長は原告を再任することを義務付けられているか。本件訴えのうち・・の請求は適法かどうか。

判決は、本件訴えのうち、再任拒否処分の取消訴訟、再任の義務付け訴訟、任期の無効確認訴訟は却下、地位確認訴訟は棄却という結論である。

この判決については、本書末尾に資料15として添付する。以下、この判決が指摘する論点について検討する。

以下,新首都圏ネットを参照のこと。

投稿者 管理者 : 2004年04月10日 00:02

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