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2004年05月14日

歴史学研究会、シンポジウム「大学『改革』の歴史的位置」(5月8日)についての報道

大学改革の歴史・思想的解明 歴史学研究会がシンポジウム  新自由主義の中の私・都・国立大

 二千五百人の歴史学者でつくる歴史学研究会が八日、シンポジウム「大学『改革』の歴史的位置」を開催しました(同会総合部会主催、東京都新宿区・早稲田大学)。同会が大学間題でシンポジウムを行うのは初めて。私立、東京都立、国立大学をめぐる状況を歴史学の目でどうとらえられるか、約百人が参加して熱心に討論しました。
 「私大『改革』の中の立命館」のテーマで報告した金丸裕一立命館大学助教授(経済史)は、酒田短期大学、立志館大学の倒産の例をあげ、「自由放任主義的発想が横行する風潮下、危機に直面した私学に対しては、企業としての『自己責任』面が追及される場合が多く、教育機関として国公立大学と同じく社会的に有為な人材を養成してきた役割が見落とされているのではないか」と提起。私学の生き残り競争のなかで、ここ数年で学園規模を二倍以上にした立命館大では、「産官学交流」が重視され企業からの教員採用が増大していることや教員の任期制導入,トップダウンの強まりなど、大学運営の実態があると報告しました。金丸氏は今後の展望として、大学への評価を文部科学省や産業界に頼るのではなく、今年設立された大学評価学会など大学人による自主的な活動に期待したいとのべました。
 東京都立大学の源川真希助教授(思想史)は「都立大の統廃合問題からみた石原都政」と題し、イデオロギー的切り口から分析。石原都政のすすめる都立四大学の統廃合は、国家が社会にかけてきた規制をはずし市場原理にまかせていく「新自由主義」の性格をもつが、一方で市場万能主義への懸念も表明するなど「修正資本主義」的性格がある、「日の丸・君が代」の強制や新しい歴史教科書をつくる会の教科書採択への執念に見られる「復古主義」も見られるなど、複雑な性格をもっていることを具体的な言説に従って解明しました。
 「新自由主義時代の大学」としで報告した小沢弘明千葉大学教授(ヨーロッパ史)は、国立大学の法人化の経緯を概観しました。そもそも法人化は、国家公務員数削減のための行革の発想から始まったもので、国立大学の民営化、地方譲渡をめざして「文科省が頭、大学が手足」となり、学長からのトップダウンを強化し、大学自治を形がい化する手法で進められてきたとのべました。さらに、即効性のある学問分野に重点をおいて、基礎研究、人文科学を軽視、学生は「受益者」として高学費を支払い、新自由主義を担うにふさわしいこだわりのない人間となることが期待される、それが法人化だったとのべました。
 これらの報告をふまえ、小森陽一東京大学教授(日本文学)がコメント。「大学間題は大学人だけの問題だと、無意織に引きこもりに入っているのではないか。それをやめたい」と提起。フロアからは「歴史学など人文系の学問は、社会との関係で存在意義を示すことができるのか」「われわれの目指すべき大学改革とは」など多数質問が出ました。「虚学を残すのが学問だとか、基礎研究はいつか役に立つなどと言っていてはだめ。社会科学は社会を批判するためにある。学問が社会との関係を欠落させてきたことを反省し,人や社会の現実と切り結ぶ学問の中身をつくらなければならない」((小沢)など積極的な討論になりました。

しんぶん赤旗(5月12日)より


投稿者 管理者 : 2004年05月14日 00:10

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