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2004年06月10日

大学教員の裁量労働制(裁量労働のみなし労働時間制)について

 2004年4月1日から労働基準法施行規則が改定・施行されたことにより,大学教員に対してもいわゆる専門業務型「裁量労働のみなし労働時間制」が適用されるようになりました。そして,この改定に呼応する形で,相当数の国立大学が法人化に伴う新たな労働協約締結の際,この「裁量労働のみなし労働時間制」を導入するに至っています。
 この大学教員の裁量労働制問題について,各種の文書,新聞報道等を整理して簡単なHPを作成しました。下記のサイトです。

「大学教員の裁量労働制に関する資料(文書整理)」
http://labor.main.jp/daigakumondai/labor-problem/sairyouuroudou.html

 このサイトは,全ての大学の規定を網羅しておらず,また様々な問題点の解明等もふれておりませんが(したがってまだ未完ですが),今後漸次情報を加えていきたいと考えています。
 なお,大学教員の裁量労働制問題について,最近,西日本新聞夕刊(2004月5月14日)の記事がありました。この記事は全大教近畿等HPでもまだ掲載されていないと思われますので,下記に転載しておきます。(ホームページ管理人)

探・ニュース特報=法人化国立大 勤務体系も一新 「何時間働いても同一賃金」 教員に「裁量労働制」 九州・山口 5大学が導入

2004/05/14, 西日本新聞夕刊

 国立大学の法人化に伴い、教員に「裁量労働制」を導入する大学が増えている。実際に何時間働いたかは関係なく、労使間で合意した時間を労働時間とみなして賃金を支払う仕組みで、九州・山口の十一大学のうち、九州大など五大学が本年度からの導入に踏み切った。「大学の勤務実態に合っている」と前向きに評価する声もある“みなし労働”。同制度を採用した民間企業ではサービス残業による長時間労働や、過労死の問題も指摘されているが…。
 四月二十八日夕。九州大の会議室に、各キャンパスの従業員代表者と、総務部の担当者が顔をそろえた。教員に裁量労働制を導入する労使協定の調印式だ。
 九大にとって裁量労働制は法人化に間に合わせることができずに積み残した懸案事項だった。三月末に制度の導入を提案したが、教員側は「職場で議論する時間がほしい」と態度を保留していた。
 対象は教員のうち、大学付属病院の医師などを除く約二千人。これまでは勤務時間が午前八時半―午後五時十五分と厳密に定められていたが、五月からは「出勤簿に印鑑を押せば、大学での勤務が一時間だろうが十時間だろうが、八時間働いたとみなされる」(同大就業制度企画室)。
 法人化で国家公務員の身分を失った教員の勤務は、民間企業のように労働基準法に基づき、労使間で結ぶ就業規則で定められる。だが実際は教員は遅くまで研究室にこもったり、講義がない日はゆっくり大学に出てくるなど一定していない。
 このため「職場でも、最初から勤務時間が決まっている裁量労働制がなじみやすいという声が多かった」(同大教職員組合)という。
 四月末現在、九州・山口で裁量労働制を導入しているのは、ほかに福岡教育、大分、鹿屋体育、山口各大。そのほかも「導入に向けて検討中」(熊本、琉球大など)としているところが多い。
 裁量労働制は一九八七年の労働基準法改正で、研究開発職や弁護士などの「専門業務」への導入が認められた。二〇〇〇年には企画、立案、調査などの「企画業務」も加わり、ホワイトカラー分野全体に拡大した。
 「合法的に長時間勤務させる制度で、労働災害の増加につながりかねない。サービス残業を合法化したい企業側の意向に沿って対象範囲は広がった」。東大社会学研究所の田端博邦教授(労働法)はそう指摘する。
 連合の調査(九九年)では、裁量労働制を導入した企業の八割で、実労働時間がみなし労働時間を上回ったという。
 裁量労働制の導入当初、労基署は「実労働時間が労働者に任されている」として労災適用は困難との判断を示したが、〇一年の認定基準見直しで過労死の認定を行うようになった。
 〇二年一月には、急性心不全で死亡した出版社編集者=当時(24)=が過労死の認定を受けている。
 大学教員の場合はどうか。労働問題に詳しい弁護士は「論文執筆や研究が本人の裁量労働とみなされ、労災が認められにくい。裁量労働制導入で、より認定を受けにくくなる」と懸念する。
 〇二年四月に札幌学院大学の法学部教授が「過労による労災」が認定されたが「珍しいケース」(北海道労働局)だ。
 大学に裁量労働制の導入が可能になったのは、わずか四カ月前。厚生労働省が今年一月の告示で、同制度の適用となる「専門業務」に「大学における教授研究の業務」を追加してからだ。
 同省は従来、大学への裁量労働制の導入を「不適当」と消極的だったが、国立大学協会が昨年八月、大学教員への裁量労働制適用を求める要望書を同省に提出してから、空気が変わった。

[同日の西日本新聞の他の記事]
探・ニュース特報=研究費縮減に先手 国立大で裁量労働制 過労死急増懸念も 長崎大は“フレックス制 (2004/05/14, 西日本新聞夕刊)

投稿者 管理者 : 2004年06月10日 00:22

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