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2004年06月16日

有事関連7法成立 戦後史上初めての体系的戦時立法 これを各紙社説はどうとらえたか メディアの責任は重大!

[JCJふらっしゅ]2004/06/15 423号より部分引用

有事関連7法成立 各紙社説はどうとらえたか

 …時事通信によると、自民党の安倍晋三幹事長は14日午後、国民保護法など有事関連7法が成立したことについて「法制研究すら許されなかった時代があったが、紆余(うよ)曲折を経て与野党の賛成多数で成立したことは大きな時代の変化を示している。今後、政府が政令などを迅速につくり、武装工作船、大規模テロなどの緊急事態に対処できるよう要請する」と談話を発表、公明党の冬柴鉄三幹事長も「かつての55年体制下では立法に着手することすら許されなかったが、国民の生命、財産を守る法制が一つの形として完結したことは隔世の感がある」とのコメントを発表した、という。

 まさしく隔世の感である。そして、その言葉の端から「驕り」の湯気が立ち昇ってくるような感じだ。そして、13日にも指摘したが、この法案の成立にメディアが手を貸した、あるいは知っていながら見過ごしたのではないかという疑念がどうしても晴れない。重要法案通過のあとになって、ようやく待ち望まれたメディアの良識が披露されることが多かったように記憶している。

 メディアが「いま伝えるべきことをいま伝え、いま言うべきことをいま言う」(故新井直之東京女子大教授)ことに消極的な姿勢をとったり放棄したりすれば、市民社会の運営に不可欠な世論形成はなしえない。世論が不在では、国会も軽視される。そして政府の暴走が始まる。

 つまりは、世論に基く政治体制をいつまでたっても築くことができない。それが今回の教訓といえるだろう。自衛隊のイラク派兵あるいは今度の多国籍軍参加の問題、改憲の動き、種々のメディア規制の動き、教育基本法の改訂問題や教育現場を襲う再編・抑圧等々、有事関連法はそうした全体像のなかでとらえられたとき、名目や題目とは異なる実態上の役割が、はっきりと姿をあらわすということではないか。

 以下に,有事関連7法成立に関する各紙社説・論説をあげておきます。ただし,日付変更によりリンク先が変更することが大いにあり得ます。因みに,毎日新聞はこの問題を社説としては取り上げていない。(ホームページ管理人)

[両手をあげて法成立を喜ぶ社説]

[有事関連法]「与野党の枠を超えた安保協力」(読売新聞6/15)
 平和と安全を守る基本政策は与野党の枠を超えて推進することが、成熟した政治の姿だ。

入港禁止法成立 発動に及び腰ではこまる(産経新聞6/15)
 日本の安全保障にかかわる枠組みを自民、公明、民主三党が共同して修正・成立させたことを評価したい。国難ともいえる事態対処に野党第一党も加わり国論が一つになった意義は大きい。

有事7法成立 自公民の協議継続を(北国新聞6/15)
 国民保護法や米軍行動円滑化法など有事関連七法が成立した。年金制度改革法をめぐって激しく対立した自民、公明両党と民主党が矛を収め、三党の賛成多数で可決したことを評価したい。

[いまいちはっきりとしない社説]

有事法制――民主主義を守るのだ(朝日新聞6/15)
 改めて確認したい。有事法制はあくまで専守防衛のためのものであり、使われないに越したことはない。使わざるを得ない事態にしないための外交がいかに大事か。それを肝に銘じなければならぬ。

有事法制/「専守防衛」に徹してこそ (神戸新聞6/15)
 首相は国民の意思をもっと重く受け止めねばならない。有事法制が成立したのを機に、自衛隊活動のもうひとつの柱とする国際貢献について、わが国にふさわしいあり方を今一度、見詰め直すべきだろう。

有事関連法成立/より重要な幅広い外交努力(山陰中央新報6/15)
 昨年六月の武力攻撃事態対処法など三法に続くもので、これで有事関連法はひとまず整ったことになる。

【有事関連法】机上論とならぬか(高知新聞6/15)
 「事態」の判断や、法の運用には厳正の上にも厳正を期すよう求められる。憲法を逸脱しないか、今後も注視しなければならない。

有事関連法 国会の監視が欠かせない(西日本新聞6/15)
 その意味で国会は、これまで以上に重い責任を負ったことを自覚し、これらの運用に厳しい監視の目を向けてチェックすることを怠ってはならない。

有事関連法成立 安全は外交軸に幅広い努力を(宮崎日日新聞6/15)
 最も重要なことは、日本が侵略されたり、テロ攻撃を受けたりするような事態を起こさないための努力だ。いかに立派な有事法制を備えていても、有事が現実のものとなれば、悲惨な被害は避けられない。

[法律内容・審議過程に問題ありと主張する社説]

通常国会 これで閉じていいのか(東京新聞6/15)
 順序が逆。めちゃくちゃだ。自衛隊の多国籍軍参加を対米公約した後で与党調整、そして国民も従えと。年金法もまた、大事な情報が後から続々。これで国会を閉じられては主権者軽視も甚だしい。

社説=有事法案成立 確かな運用が怠れない(信濃毎日新聞6/15)
 国民保護法など有事関連七法が成立した。有事に際し基本的人権をどう保障するかなど、疑問点やあいまいな部分を残したままである。国会の責任は運用の面でも重い。

事関連7法成立 将来の危ぐをぬぐえない(沖縄タイムス6/15)
 有事法制化は、武力攻撃や大規模テロなど不測事態への備えとはいえ、日本が米軍との結びつきを一層強化し、「戦争のできる国家」へ踏み出す危ぐを禁じえない。

有事7法成立・一層重要な外交努力(琉球新報6/15)
 有事法制は、戦争を前提とした法整備だ。戦前、日本による侵略や植民地支配などの被害を受けた近隣諸国は強い警戒感を持っている。沖縄戦を体験した県民と同じ懸念だ。

[これまで各団体が発した主な声明・主張]
「有事関連7法の制定に反対する憲法研究者アピール」、賛同者82名を発表(2004年5月12日)
自由法曹団、「戦争法制(有事7法案・条約3案件)の参議院での廃案を求める」(2004年5月24日)
自由法曹団、意見書「こんなことでいいのだろうか−衆議院での戦争法制審議から−」(2004年5月6日)

投稿者 管理者 : 2004年06月16日 00:20

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コメント

市民有志が無形のマスメディアに
メディアの責任を問うのは当然ですが,それだけでは不十分です.私は,市民有志が無形のマスメディアになることを提案しています.「意見広告」という形で紙面や時間枠を買い取り,自主報道を展開するのです.護憲にテーマを限定した形ではありますが,「改憲阻止メディア広告10万円×10万人計画」をご覧下さい.
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/tenbillionyen.html
もし今回の有事関連法に関してもこのような自主報道がなされていたら,展開はかなり変わったのではないかと悔やまれます.
インターネット新聞や市民FM局,新しい雑誌の発刊など,下からのマスメディア,ミニメディアの発達に期待するものは大ですが,しかしこれらだけでは速効性がなく,やはり「紙面買い取り」による自主メディアがどうしても急いで必要だと思います.

投稿者 豊島耕一 : 2004年06月16日 11:11