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2004年06月21日

私立大、財務戦略に走る、不動産投資や格付け取得−生き残りへ学習環境整備

日本経済新聞(2004/06/19)

 私立大学が経営に目覚め始めた。少子化で授業料収入が頭打ちになるなか、今春の国立大学の法人化で大学間競争が激化。優秀な教員や学生を集めるにはキャンパスの整備・拡充が欠かせなくなった。資産運用収益の拡大、資金調達コスト低減など、財務戦略が大学経営の重要課題として浮上している。

 昨年末、JR川崎駅西口に完成したミューザ川崎セントラルタワー。地上二十七階のオフィスビルの実質的な「大家」は早稲田大学だ。ビルを所有する特定目的会社(SPC)の優先出資証券(一般企業の株式に相当)約七十三億円を全額引き受けた。SPCに融資しているみずほコーポレート銀行や政策投資銀行などと賃料収入を分け合う。
 「財の独立なくして学の独立はない」。SPCへの出資を決めた関昭太郎副総長は言い切る。早大はSPCに出資するほか、高利回りが期待できる不動産投資信託や電力株にも投資している。低金利下では銀行に預けてもわずかな利息しかつかない。「運用収入が増えれば奨学金も増え、優秀な学生を集められる」(関副総長)
 光熱費や事務用品、洋書購入に至るまで徹底した経費見直しを進めて借入金も減らした。二〇〇三年度末の借入金残高は約百九十七億円で、ピーク時の一九九五年度末の約半分。運用収入から支払利息を引いた金融収支は〇二年度に黒字に転換し、前年度は約四億円の黒字。九五年度(約六億円の赤字)から約十億円改善した。

 私立大学の主な収入源は学生からの授業料、国からの補助金、卒業生などからの寄付金の三つ。ただ、十八歳人口が減少する中で授業料収入に大きな伸びは見込めず、財政難に悩む国は補助金削減に動いている。寄付の習慣も日本ではなかなか定着しない。
 大学は長く非営利団体との意識が強く、資産運用には消極的だった。バブル経済崩壊後に運用で失敗した大学があったことも影響している。大学経営に詳しいリクルートの中津井泉・カレッジマネジメント編集長は「運用に正面から取り組まないと大学の収入は先細りになる」と指摘する。

 受験生を確保するには学習環境の整備が欠かせない。そのための資金を調達するコストを抑制する動きも目立つ。
 昨年二月に大学として初めて長期優先債務格付けを格付投資情報センター(R&I)から取得した法政大学。三菱商事と同等のダブルAマイナスという高格付けを利用、昨年九月にキャンパスの拡張・整備のため、あいおい損害保険や第一生命保険など生損保四社から〇・六%の金利で五十億円を調達した。
 法大の従来の借入金六十億円の平均金利は約一・五%。法大は以前から財務体質は良かったが、「格付けという分かりやすい形で表現できたことが調達コスト減につながった」(平林千牧常務理事)。東京理科大学もダブルAマイナスの格付けを生かし「高金利時代の借入金を借り換えて利払い負担を減らすことを検討している」(幡野純常務理事)。
 こうした動きはまだ一部の大学にとどまっている。だが、徹底したコスト削減と優れた財務戦略がなければ、資金のいる産学連携など研究開発力の強化や教育の充実が望めないのも確かだ。


投稿者 管理者 : 2004年06月21日 00:19

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