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2004年07月05日

今度の参院選挙は重大、中立公正を旨とすべき政府機関の偏向プロパガンダ ファシズムの予兆?

[JCJふらっしゅ]2004/07/03 435号より転載

いまは国政選挙戦のまっただ中 税金によるこんな政府の政治宣伝が許されるのか

桂 敬一

 7月1日付の「小泉内閣メールマガジン 第146号」を受信して驚いた。
 「[特別企画]読者の皆さんからのご意見(第1回政策アンケート)」と称する特集が掲載されていた。編集部(総編集長:内閣総理大臣・小泉純一郎、編集長:内閣官房副長官・杉浦正健、発行:内閣官房内閣広報室)が、5月20日から30日までに行った「第1回政策アンケート」の読者回答、小泉内閣が進める施策に関する意見・提案が紹介されていたのだ。

 この号では、そのうちの「安心の確保・安全への備え」「公的部門改革」について、メルマガ読者の「代表的な意見」と編集部が認めた20件が紹介されていた。その中の「年金制度改革」「治安」「行財政改革」「税制改革」に関する11件を抜き出し、以下に紹介する。

 ひどいではないか。読んでいただけばわかるが、「年金制度」については、その社会保障制度としてのあり方を解体、原資を民間の金融・証券・保険ビジネスの市場に開放せよ、企業の任意の福祉制度に委ねよ、退職者に豊かな老後生活を保障するような制度でなく、老人救貧制度に組み替えてしまえばいい、とするような意見が「代表的な意見」として紹介されているのだ。

 「治安」「行財政改革」「税制改革」に関しては、国民の相互監視と公安当局の権限拡大による取り締まり強化・厳罰化、国民総背番号制のもとでの政府による国民生活行動管理の徹底化などが、「代表的な意見」とされている。

 「年金」はじめ、これらのどの項目も、今回参院選挙の重要争点だ。そして、これらに関して読者の「代表的な意見」とされたものの内容は、いずれも与党の意向に添う傾向をみせる。むしろ、与党としてはとてもそこまでは露骨にいえないことを、読者の声を借りて踏み込んでをいってのけ、いいドクの実績を残している観さえある。こういうことを、与党が自党のカネを使い、どの党にも広く公開されているマス媒体のうえで行うのなら、まだいい。

 だが、そうなされるべきものが、内閣広報室、中立公正を旨とすべき、厳とした政府機関の、国民の税金で賄われる媒体のうえで、行われているのだ。しかもいまは、各党が参院選の運動を繰り広げている最中である。これを偏向と呼ばないで、他に偏向と呼ぶべきなにがあるだろうか。政府による実に不当なプロパガンダではないか。

 もしこれらの意見が本当に国民の「代表的な意見」であり、多数の声であるとしたら、また政府がその多数派のうえに乗り、さらにいっそう多くの国民をその螺旋の渦に呼び込み、その運動体を自分たちの権力基盤にしていくのだとしたら、やがてそこに姿を現すのは、正真正銘のファシズムであろう。


<小泉メルマガ:第1回政策アンケートに対する「代表的な意見」の例>

(安心の確保・安全への備え)

・年金制度改革

1.一番旬な話題として年金改革です。1番目に、年金の一元化、特に議員年金の廃止です。議員年金は議員だけが特権階級との意識の現われのように感じます。2番目に年金を年金以外の用途に仮にでも使用しない。3番目に年金の運用を民間の金融証券業に委託して運用させ、利益を上げる。一任勘定は認められていないと思いますが、年金だけは特例として認める。素人である役人よりは上手く行く筈です。4番目に法律を簡素化。以上。

2.他人の年金を支給するために保険料を払うのは、どなたでも抵抗があり、40%近い未払いが出るのは当然。世代間の支えあいは止め、自分の年金を積み立てる制度に移行すべき。一ヶ月の食費程度を支給する基礎年金は国が保障し、財源は特別消費税などを当てる。上積み部分は、国民年金は自分が必要とする額、厚生年金と共済年金はこれまで通り給与の一定割合(労使折半だが合計は個々に自由に設定する)。共済年金と厚生年金は一本化する。いずれもリミットを決めた移行期間をもうけ実施する。自分の年金は自分で、自己責任にすればすべて解決。

3.年金というものは、老後の保障だと思うが、老後の保障というならば、年金というものを、老後の最低保障という形にし全て税金で賄い、全国民が同一金額貰える形がベストではないかと考える。そうすれば、無意味に老後の不安にかられることもない。社会保険庁の役人の人員削減にもなる。年金を多く納める人は、老後の心配はないはず。納めることもままならない人達こそ、救うべきである。年金がないから生活保護を受けるのでは本末転倒である。

4.年金改革について。一本化の実現、公務員住宅の家賃の問題、無駄な箱物の件等々、数えたらキリがないですが、そんな難しいことではなく、すぐに改革できることがあると思います。毎月送られてくる国民年金の丁寧な納付葉書、不要です。用紙代、印刷代、通信費、全国規模で莫大な予算を使われているのでは? 確定申告前に1年間の納付状況の通知が来るので、それで十分です。(払い込み・引き落としの段階で、個人個人の手元に証拠となるものが残るはずなので、それすらいらないかもしれない。)

5.やはり、いくら払っていくらもらえるのか、もっと明確にするべき。スウェーデン方式のように、自分が払ったぶんは自分がもらうようにする。もらえる年齢を自分で決める。(それぞれ働ける年齢が違うのだから。)議員年金や天下りをなくすなど、どんどん無駄遣いをやめて、その分のお金を年金につぎ込む。上記以外にも、ありえないお金の使い方をもっとしているはず。それをどんどんやめればもっと年金にお金がまわるのでは?間違っても正直ものが馬鹿を見る(払っている人が損をする。)結果にだけはしないで。

6.【年金改革】この制度は良いのだが、手続きがわずらわしい。会社をやめて自営に転じたりするとよくわかる。不思議なのは、年金および健康保険の手続きの際、市役所は自分の収入がいくらなのか知っていることだ。にもかかわらず、それぞれ手続きをしなければならないのは、全く変。所得税、住民税、健康保険、年金は義務のはず。なら1つで済ませることはできないだろうか。また会社←→自営をくりかえすような場合でも手続きなしにならないか。車の自賠責と同じように国民年金は必須、厚生年金は任意保険のような扱いでよいと思う。

・医療・介護(7.8.略)

・治安

9.今、日本の治安が大ピンチです。一度悪くなったものを元に戻すのは大変です。治安回復のために、細かい事、小さい事でも見逃さないニューヨーク方式が良いと思います。まず、空交番をなくします。早急な警官の増員が無理ならば、民間ボランティアのかたにも協力いただき、24時間交番には誰かしらいるこの安心感から市民の警察、治安にたいする信頼を築き上げ、市民を巻き込んだ治安の維持体制作りを進めていきたいと思います。

10.治安の向上について、次の二点の対策を行う。一つ目は、破れ窓理論ではないが、身近な微小な犯罪対策を重点的に実施する。具体的には補導員に法的強制力を認める、警察と地域が一体となった防犯パトロールを行うなど。もう一点は、無職者への積極的就労の斡旋を行う。近年の重大犯罪は無職者によるものが多く、ホームレスなどが公園等を占拠している現状は、少年達にも悪影響を与える。予防的見地から積極的な雇用政策を展開する。

11.全般に刑罰が軽い、諸外国と比較してバランスをとるべきだ。特に暴力犯罪にはもっときつい罰でのぞむことを期待する。少年犯罪の増加は今後もっと顕著になる可能性が高い。少年法の見直し、年齢の見直しも含め、外国とバランスをとること。外国人犯罪の多発が大問題です。警察官に外国人の採用を検討したらどうか。警察の情報収集の一環として、新聞配達、牛乳配達、郵便配達の方々が、気楽に一報できるメールシステムを研究したらどうか。

(公的部門改革)

・行財政改革

12.(略)

13.行財政改革について国家・地方公務員・特殊法人・関係団体の年俸を平均25%カットする。それを原資として警察・検察・国税庁・入国管理官・麻薬取締官等を増員する。治安の確保や脱税の摘発等を徹底して、安心して不正の少ない社会をめざす。又新規採用に当たってはできるだけ45歳以上の中高年の失業者を採用し雇用不安を減少させる。新規採用者を専門性の少ない職場(総務・経理等)に配置し、現在勤務している職員を専門性の高い職務に勤務させる。

・規制改革(14.15.16.17.略)

・税制改革

18.税制改革・課税の公平性を図るため、背番号制を導入。同時にこの番号を本人のIDとしてID+写真入りのIDカードを義務付ける。住民基本台帳番号等、すべて一元化する。・税の主体を消費税とする。高収入の人は高消費なのでもっとも合理的。・そして、所得税や事業税は基本的には無視できる程度に低減する。・消費税は、食料品は減税等の例外は一切認めない。例外規定を設けると必ず悪用され、しかも定義が難しくなる。・低収入者に不利になると言うが、それは別の福祉関係で補正する。

19.(略)

・国と地方(20.略)

(かつら・けいいち/JCJ会員)

投稿者 管理者 : 2004年07月05日 00:25

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