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2004年07月21日

大学ビジネス、多様に−芝浦工大、中小へOB派遣、東大、仏料理店を誘致

日本経済新聞(7/20)

 大学が人材派遣事業からレストラン誘致まで収入源の多様化を急いでいる。背景にあるのは、少子化や四月の国立大学法人化などによる大学間競争の激化だ。研究者の生み出す「知」はもちろん、土地・建物といった資産も活用して経営基盤を強化し、研究・教育の質の維持・向上を狙う。
 芝浦工業大学が卒業生らと設立したエスアイテック(東京・港)。平均年齢五十八歳のOB約四百人で構成する「人材バンク」が今夏、本格始動した。財団法人社会経済生産性本部から中小企業の原価や工程管理を徹底して生産性を引き上げるアドバイザー業務を受託し、OBを主任コンサルタントとして中小企業に派遣する。OB一人の派遣につき年間一千万円ほどの収入を見込む。
 私立大は比較的、幅広いビジネス展開が可能だが、競争激化は制約の多い国立大学法人の意識も変えつつある。利益追求を目的とする収益事業こそできないが、研究・教育を妨げない「付帯業務」の範囲内で取り組む機運が高まっている。
 東京都目黒区の東京大学駒場キャンパス。学生の姿に混じってベビーカーを押した主婦たちが集まってくる。お目当ては五月に開業した仏料理店「ルヴェソンヴェール駒場店」。コーヒー付きで千円のランチが人気だ。
 教職員、学生が利用できる福利厚生施設として大学側が企画し、京都市のレストラン経営会社、円居グループが運営を受託した。平日で平均約二百人の来店者のうち六割が外部から。「休暇など大学関係者の利用には波があり、施設を維持するためにも外部からの客は歓迎」と兵頭俊夫教養学部副学部長は話す。強力なテナントの誘致で資産を有効活用し、賃貸収入を高める作戦だ。
 東京外国語大学は英語やフランス語からモンゴル語、トルコ語まで合計十七言語の学習に対応するインターネットを使ったeラーニング(遠隔教育)教材を開発中だ。大学の特徴がそのまま生かせる分野といえ、三年後の完成時にはeラーニングに力を入れる大手出版社などにシステムをライセンス供与することも検討している。
 日本私立学校振興・共済事業団の調べによると私立大学を設置している学校法人の収支状況は二〇〇二年度で全体の六二%、二百九十一法人で支出超過だった。国立大学も法人化を機に国からの財政支援の増加が見込めなくなっている。コストの見直しも待ったなしだ。
 施設管理や物品購入、定型的な事務などを別会社化して成果を上げる例も出ている。共立女子学園の全額出資子会社であるウィズ・ケイ(東京・千代田)は事務部門などからの業務受託と、それで得た利益の寄付により、これまでの三年間で同学園の三億円分の収支改善に寄与した。
 二〇〇三年九月期の売上高は十二億円。他大学向けのコスト削減策の助言も展開しており「現在、粗利益ベースで二割程度の学外向け取引を三―五年後に五割程度に引き上げたい」(相良敏夫取締役)と意気込む。
 最近、大学と事業の接点では大学発ベンチャーや既存企業に対する技術移転で収入を上げる知的財産ビジネスばかりが注目されてきた。だが、大学に眠るビジネスの種を掘り起こす試みはもっと広がっている。


投稿者 管理者 : 2004年07月21日 00:08

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