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2004年07月21日

社説=大学不祥事 “危機”ばねに改革を

信濃毎日新聞(7/20)

 十八歳人口が減少をたどる今後は、大学・短大がますます“選ばれる”時代になる。とりわけ私学には試練といえる。教育や研究にどう特色を持たせ、社会に貢献していくか―が一段と問われてくる。

 教訓にすべき出来事が最近相次いでいる。二〇〇三年三月から休校状態が続いていた酒田短大(山形県酒田市)はその一つだ。運営する学校法人に文部科学省が解散命令を出す最初のケースである。

 発端は、短大に在籍する多数の中国人留学生が首都圏に転居し、不法に働いていた問題の発覚だった。留学生受け入れを再建の柱にしようとした経営戦略がつまずき、周囲の信頼を失っている。

 東北文化学園大(仙台市)は国に開設認可を求める際、虚偽の書類を作り、多額の借金を隠していた経過が表面化した。補助金返還を迫られる事態にもなり、大学を持つ学校法人では初めて、民事再生法の適用を申請している。

 これらは高等教育機関にふさわしい姿からは懸け離れている。といって全くの例外とも言いかねる。少子化傾向でも大学・短大の新設は続いている。程度の差はあれ、学生募集や財源確保に苦労する事情は変わらないからだ。

 アジアなどに広く門戸を開く方針そのものは時代の流れだろう。日本政府が打ち出した留学生受け入れ十万人計画と呼応する。

 とはいえ、安易な依存は禁物だ。現に一部ではあれ留学生による不法就労や犯罪をきっかけに、入国審査が厳しくなっている。まじめに学ぼうとする若者たちの希望を狭めてしまうのでは本末転倒である。

 かつてない困難な状況を乗り越えていくには、何より各大学が建学の精神に立ち返る必要がある。競争原理の下でも足元を見失わず、得意とする部門をさらに磨いていくことが大事になる。

 日本では学生のほぼ四人に三人が私立大学・短大に通っている。総合大学のほか、実学や芸術・スポーツを重視したり、宗教に根差した学校がある。その「多様性」が社会に大きなエネルギーを与えてきた。あらためて踏まえたい点である。

 今春からは国立大が法人化した。私学並みの経営手法を取り入れ、大胆な変革に挑むところもある。

 規模や所在地を問わず、各大学・短大が個性を発揮し合ってこそ、教育・研究水準を高めていける。試行錯誤を重ねるときである。


投稿者 管理者 : 2004年07月21日 00:10

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