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2004年08月11日

全入時代、教員に任期制 学校経営に民間流!

第1部2007年ショック走る(1)「全入」の重圧、変革迫る(大学激動)

日本経済新聞(2004/08/03)

 七月二十三日に開いた文部科学相の諮問機関、中央教育審議会の大学分科会。二時間の議論を締めくくった南雲光男・元連合副会長の発言に、会場は静まり返った。「大丈夫だと思っていた大学がつぶれる。学生が路頭に迷う。『大学崩壊』のシナリオが三年後は現実になる」

予想2年早まる
 少子化と専門学校人気で大学・短大の志願者数は減り続け、当初予想より二年早く、二〇〇七年度に全員が入学できる時代が来る――その試算が初めて示されたのだ。五年あったはずの“猶予期間”が三年に縮まったショックは大きかった。ある私大学長は急きょ資料を教授全員に配り「夏休み中も対策を練り直せ」と迫った。
 「全入」はあくまで数字上の計算。新設校や短大はすでに苦しい。私立大は昨年度二八%が、短大は四五%が定員割れ。そして国立も例外ではなくなりつつある。
 筑波大の工学基礎学類は今春入試で、後期日程の応募三十一人に二十人しか受験せず、全員合格に。群馬大の応用化学科・材料工学科の後期も募集二十人に受験者二十九人。全員を合格にした。「東京の私立大がライバル。しっかり高校に営業活動しないと生き残れない」。本間重雄工学部長は危機感を募らす。
 東京水産大と東京商船大が統合した東京海洋大は、海洋電子機械工学科で十二人の定員割れが発生、四月に二次募集に追い込まれた。専門性の強い大学とはいえ、東京の国立大で起きた事態に、ある国立大学長は「油断するとああなる。他人事ではない」と漏らす。

 「全入時代」に突入する三年後。大学にもう一つの試練が待ち構える。
 「新司法試験の内容がいまだ分からず、学生はひどいプレッシャーで一種のパニック状態にある」。今春、全国で一斉に開校した法科大学院の一つ、島根大の山口龍之教授は指摘する。新司法試験は〇六年度に始まるが、これは法科大学院を二年間で卒業する法学部OBらが対象。第二の人生をかける元社会人も多い法学未修者は卒業まで三年かかるため、〇七年度こそ各校の「教育力」が試される天王山だ。その結果が翌年からの学生集めに影響し、その法科大学院が生き残れるかを左右する。

教員に任期制
 自助努力に期待して今春、国立大が法人化されてから四カ月。第三者機関による大学評価の発表も間もなく始まり、象牙の塔にこもってはいられない環境は整った。大学は優秀な教員の確保や研究の質向上に懸命だ。
 東京医科歯科大は「教授と助教授は五年」といった教員任期制の導入に踏み切った。
 本人の同意が前提だが、全体の九割が応じた。評価は厳しく、任期満了で対象者の二五〜三〇%は更新されず地位を失う。もう悠然と構えてはいられない。鈴木章夫学長は「大学を活性化し、世界に伍(ご)すにはこのくらいしないと」と言い切る。 ただ、民間的な手法がどこまで大学になじむかは手探りが続く。
 「教授らに能力給を導入してはどうか」。三重大の経営協議会で学外委員を務める元ジャスコ副社長の谷口優氏は次々と改革案を提案した。だが大学側の答えは「検討させていただく」どまり。

民間流浸透せず
 「企業の論理を一〇〇%導入すると支障も出る」と慎重な豊田長康学長に、谷口氏は「国立大に観念的な危機感はあるが、行動レベルまで達していない」と手厳しい。
 大学の敷地内に留学生や学生向けのマンションを建てて半分を一般に賃貸、その家賃で建設費を賄う――国立大としては異例の構想を温める東京農工大は、法人化の旗振り役、文科省に待ったをかけられた。「こんな営利事業を認めたら何でもありになってしまう」「地の利の悪い地方国立大が不利になる」
 宮田清蔵学長は憤まんやるかたない。「文科省は『創意工夫を凝らす個性ある大学づくり』を求めながら、法人化後も裁量をなかなか認めようとはしない」

 四月の国立大法人化と法科大学院の誕生は、淘汰(とうた)の時代へのスタートラインにすぎなかった。「大学全入時代」まであと三年。そのころには勝ち負けがはっきりする。生き残りにあえぐ大学の姿を追う。


投稿者 管理者 : 2004年08月11日 00:17

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