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2004年08月23日

札幌市立大、市長が学長を切った!? 教員の人事権・選考方法で対立 トップダウン望む川崎氏VS上田札幌市長

川崎氏の市立大学長辞任 真相分からず 残るしこり

北海道新聞(8/21)

 二○○六年四月の開学を目指す札幌市立大学(仮称)の初代学長に内定していた名古屋市立大大学院教授の川崎和男氏(55)が就任を辞退した問題で二十日、市側と川崎氏との間での、意見や辞める経過の食い違いが明らかになった。「就任を辞退してきたのは川崎氏」とする市側と、「辞退するとは言っていない」とする川崎氏。両者の間で生まれたしこりは、今後の大学設立の準備活動に大きな教訓になった。

*「市長が彼を切った」*教員選考 溝深く
 「電子メールでも、市長と会ったときも、自分から辞退するとは言っていない」。二十日の北海道新聞の取材に対し、川崎氏はこう反論し、学長職への未練もにじませた。
 十九日夜に行われた緊急会見で上田文雄市長は、川崎氏が上田市長あてに電子メールを送り、学長就任辞退を申し出たと説明。上田市長らが慰留したが、川崎氏の意志が固かったため、やむなく断念したとしている。
 就任辞退の引き金になったのは、市側も川崎氏も、教員の採用方法をめぐる対立だったことを挙げる。
 川崎氏は「学長である以上、自分には人事権が必要」と主張してきたという。しかし、市側の方針は一八○度違った。市民の税金を投入して設立する公立大である以上、「市としては教員の選考方法についても透明性を確保する必要があった」(上田市長)というのだ。
 川崎氏は「自分の考えが通らず、このままでは続けることが難しい。上田市長に力を貸してほしいという思いを伝え続けた」ともいう。
 市側と“看板学長”との深い溝。「川崎氏にとって最後の頼みの綱だった上田市長が最終的に彼を切った」とある市議は打ち明けた。

*「ふさわしい人物か」
 「何かあったとしか思えない」。大学設置準備委員会の委員長で、北大大学院経済学研究科の内田和男教授は、辞退という結果にいぶかる。川崎氏の学長就任辞退の連絡が市側から入ったの先週末。市側の説明は「教員採用をめぐって意見の食い違いがあった」といった簡単なもので、詳しい説明は一切なかったという。
 内田教授は「新大学設立の際は、教員採用をめぐって行政側と学長候補が対立することはよくある。むしろ産みの苦しみで、歩み寄りを経ていい大学ができるもの」。七月二十三日の準備委では、川崎氏が市側と協調する姿勢を示していたといい、「非常に良い立ち上がりだと感じていた」という。
 市幹部の一人は「川崎氏は市立高専の教員を自分の目指す大学にふさわしくないという考えが強く、高専の教員に対してだけに厳しい採用条件を課そうとしていた」と漏らす。
 市側とのやりとりの中で、川崎氏が人格を疑うような乱暴な口調でしゃべり、関係者の間では不信感が募っていたという。「学長の立場にふさわしい人物だったのか」。さわやかなイメージとは裏腹に“二重人格性”を指摘する声も出てきた。

*「名前が欲しかっただけ」
 「(川崎氏と札幌市の)どちらに非があるかはともかく、大学づくりの重要な時期に混乱を招いた」。こうした意見対立に、市議会自民党の横山光之幹事長は上田市長の“失点”を指摘。九月下旬開会の第三回定例会で説明不足を追及する方針だ。
 野党のある市議は「市長が学長就任を依頼する際、川崎氏と十分に意見調整していなかったということ。ネームバリューが欲しかっただけではないか」と痛烈に批判する。
 一方、与党の民主党・市民の会は「川崎氏からの申し出であり、市長の責任を問う問題ではない」とこちらは静観の構えを見せている。

*授業を受けたかった/理由知りたい/期待していたのに
 川崎和男氏が札幌市立大の学長就任を辞退したというニュースは二十日、市民や学生にも衝撃となって伝わった。「なぜこの時期に」「手腕に期待していたのに」−。川崎氏への期待が高まっていただけに、疑問と落胆が交錯した。
 市立大学の母体となる札幌市立高専(南区)のキャンパスでも驚きの声が広がった。
 専攻科二年の杉野公亮さん(22)は「川崎さんはデザインに対する考え方が徹底している。市立大学の一番の魅力で、ぜひ授業を受けてみたかった。それなのに辞退と聞いてがっかりした」。
 本科四年の北林甲子郎さん(20)も「辞退は本人の考えることだから仕方ないが、本当の理由を知りたい。しかし札幌市はちゃんと川崎さんに対応していたのだろうか」と市に疑問を投げかけた。
 一方、本科二年の女子学生(16)は「大学化そのものについて反対なので、学長がだれでもかまわない。今の高専のように学生の意見をきちんと聞く学校にしてくれる人を望みます」と冷静だった。
 驚いたのは市民も同じだった。中央区の手芸家(58)は「新聞やテレビで見る川崎さんは意欲的な印象が強く、すごく期待していました。なぜ急に辞退したのか理由がわからず、本人の口からはっきり理由を聞きたい」と話した。(松岡瑠美子)

*川崎氏との一問一答
*「私は『看板』で人事権もない」
 「札幌のみなさんに申し訳ない」−。札幌市立大の学長就任を辞退した川崎和男・名古屋市立大大学院教授(55)は二十日、北海道新聞の電話インタビューに応じ、辞退に至った経緯や現在の心境を語った。一問一答は次の通り。(聞き手・渡辺創)
 −−就任会見からわずか一カ月半しか経(た)っていません。なぜ辞退したのですか 
「私の側から『辞めたい』と言っていません。ただ、デザイナーとしての力やアイデアを生かし、二十一世紀に通用する新しい大学を作るための条件が、札幌市側との間で折り合わなかった。私は最後まで最後の最後まで『札幌に行きたい』と言い続けたのだが…」
 −−その条件とは何ですか
 「例えば教員選考の基準。私は実力のある優秀なスタッフをすべて公募で選ぼうと思っていましたが、私に人事権は与えられなかった。教員はすべて英語で講義ができる人材を、という考えも拒まれました。IT関連のベンチャー企業と連携して、新産業育成を目指すというアイデアも受け入れられなかった。資金援助を約束してくれた企業も二十社はありました。私は要するに『看板』で何もするな、ということです」
 −−六月三十日の学長就任会見では「札幌に骨を埋める覚悟だ」と話していました
「昔、札幌医大を受験したころから札幌への思いはずっとありました。デザイナーとしての仕事はやり尽くしたので、残りの人生は教育者として札幌で頑張るつもりでした。こうなって残念です」
 −−川崎さんに期待を寄せていた人は多かったのですが 
「札幌市民や上田市長、北海道の方々には本当に申し訳ないと思っています。特に市立大学を目指してくれた若い人たちをがっかりさせ、結果的に裏切ることになってしまった。社会的責任を取るため、教授に就いている名古屋市立大や阪大には辞職願を出しました。ただ、デザインと看護を結びつける札幌市立大は今後、必要な存在になるのは間違いない。これまでかかわった以上、市立大を支援していく気持ちです」


札幌市立大の初代学長、川崎氏が就任辞退

日本経済新聞(8/20)

 札幌市は十九日、二〇〇六年四月に開校する札幌市立大学(仮称)の初代学長に内定していた川崎和男・名古屋市立大学大学院教授(55)が学長就任を辞退したと発表した。上田文雄市長も辞退を受諾した。
 上田市長は辞退の理由について「(教員の選考基準について)市は透明で公正な手続きを重視しているが、川崎氏には理解してもらえなかった」と説明した。また後任人事については「開学まで時間が迫っているので全力で後任探しを進めたい」と語った。
 教員の人選について市は専門部会や委員会を設けて選考基準を作っていた。川崎氏もメンバーに入っていたが、学長としてトップダウンでの意思決定を望む川崎氏と、合議制での手続きを重視する市側で意見の違いが生じたとみられる。
 同大学は市立高等看護学院と市立高等専門学校を統合して新設される。川崎氏は日本のトップデザイナーとして知られ、新大学に対する期待も高まっていた。

[同ニュース]
札幌市立大学、川崎氏が学長を辞退 06年開学、教員選考で対立(北海道新聞8/20)
札幌市立大学長辞退の川崎氏 「整備条件折り合わず」(北海道新聞8/21)

投稿者 管理者 : 2004年08月23日 00:50

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