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2004年08月23日

東京都立大学総長、公立大学法人首都大学東京定款(たたき台)についての意見

「公立大学法人首都大学東京定款(たたき台)についての意見」(2004.7.26)

公立大学法人首都大学東京定款(たたき台)についての意見

2004.7.26
東京都立大学総長

 都立大では、以下に述べるものとは別に、いくつかの意見が提出されている。それらも貴重かつ重要な指摘を行っている。あわせて参照されたい。

1 目的規定(1条)は、首都大学東京の教育研究の特色部分にのみ焦点をあてたものとなっている。首都大学東京の設置目的全体及び他の4大学を設置・運営する目的を表現するべきである。
 また、この目的規定は「大都市」にのみ視野を限定して記述されているが、大学としての普遍的責務・課題をも意識したものにすべきである。たとえば公立大学協会の定款モデルにおける目的規定では「我が国の高等教育及び学術研究の水準と均衡ある発展を図ること」という文言が入っている。

2 公立大学法人は、大学を設置運営するのであるからその特性に鑑みて、その趣旨を確認する運営の基本原則を定款において定めることが望ましいと考える。たとえば公立大学協会の定款モデルでは、「運営の原則」として、次のような規定を設けている。「1項 この法人は、その業務の公共性にかんがみ、適正かつ効率的にその業務を運営するとともに、その組織及び運営の状況を住民に明らかにするよう努めなければならない。 2項 公立大学法人のすべての業務は、大学における教育研究の特性に常に配慮して行われなければならない。」

3 理事長と学長の分離型を採用する場合、学長が副理事長となることによって経営と教学のバランスをとるとするのが地方独立行政法人法の趣旨であると考えられるので、学長である副理事長の他にさらに副理事長をおくことは妥当ではない。公立大学協会のモデル定款の7条の解説も十分に参照のこと。

4 国立大学法人法では、独立行政法人通則法とは異なり、大学の特性に応じて、経営と教学のそれぞれの部門のメンバーを糾合した役員会を組織し、大学運営の最高意思決定機関として合議機関を置いている。このような国立大学法人の組織と同様な組織を本法人においても定めることが必要であると考える。

5 理事長、副理事長、理事の任命に関する規定(10条、12条1項)は、法定事項であって定款で定めるまでもないことであるが、あえてこれを定めるのであれば、地方独立行政法人法14条1項にある要件も定めるべきであろう。同様のことは、11条の学長の定めにもいえることで、11条3項の学長の選考にあたっては、法71条6項にある要件「人格が高潔で、学識が優れ、かつ、大学における教育研究活動を適切かつ効果的に運営することができる能力を有する者」を定めておくべきである。

6 学長となる副理事長の任期の定め(13条2項)について。地方独立行政法人法74条2項によれば、設置後最初の学長の任期は、定款で定めなければならないことになっている。附則の6に一応定められてはいるが、本体に規定する考えはないか。なお附則の6に「14条2項ただし書」とあるが、「13条2項ただし書」の誤りであろう。また再任の可能性について、たとえば1回に限り再任可などと規定しておくべきではないか。

 学長の選考は法の定めにより「学長選考会議」で行うのであるが、選考に当たっては学内構成員の意見を適正に反映すべきである。このことについては公立大学協会定款モデル第11条の7及びそこに付された注記を参照のこと(「学内意見聴取手続き等」)。

7 経営審議会と教育研究審議会の審議事項(18条と22条)の定めのそれぞれ最後にある「その他法人の経営に関し、理事長が重要と認める事項」と「その他教育研究に関し、学長が重要と認める事項」は、国立大学法人法20条4項と21条3項にならって、それぞれ単に「その他法人の経営に関する重要事項」及び「その他教育研究に関する重要事項」とすべきである。理事長及び学長の恣意的な審議事項の操作の余地を認めるべきではない。

8 教育研究審議会の構成員に関する規定(19条2項)では、「・・・及び法人の規程で定める組織の長」とある。これが何を意味するのかわからない。地方独立行政法人法77条4項において「学長、学部長その他の者により構成するものとする」とある。学部長または研究科長を明記するべきであると考えるがどうか。

9 教育研究審議会の審議事項に関する22条3号に「教員の採用、選考等に関する事項」とあり、経営審議会の審議事項に関する18条4号には「人事に係る計画に関する事項」とある。以前の首都大学学則案(7月2日に文科省に提出した追加書類の1つである「学則」は未だ見る機会がない)では、教育研究審議会の審議事項には「教員の採用及び選考等に関する方針に係る事項」とあったので定款と学則案の間に矛盾があると思われる。

 またこれまで「人事委員会」「教員選考委員会」「小委員会」が置かれ、教員人事にタッチしてきたが、これらの組織は法人のもとではどのように位置づけられるのか、不明である。

10 審議事項に学則の制定又は改廃に関する事項が規定されていないのはなぜか。公立大学協会の定款モデル第20条第3項を参照のこと。そこには「学則(法人の経営に関する部分を除く。)その他の教育研究に係る重要な規則の制定又は改廃に関する事項」とある。

11 附則の4にある旧大学の学長の任命方法は疑問である。新大学である学長の任命は、学内の選考の余地がないのでやむをえないとしても、旧大学では学内選考ができるのであるから、現行学則にのっとり選考を行うべきである。国立大学法人法附則2条を参照のこと。


投稿者 管理者 : 2004年08月23日 00:43

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