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2004年09月22日

全大教、第16回教職員研究集会 基調報告

全大教第16回教職員研究集会「基調報告」(2004/09/16) より

全大教第16回教職員研究集会
基調報告

目次
はじめに
第1章 法人移行後の現状について
1.国立大学等の法人移行をめぐる動向の特徴
2.公立大学の法人化問題
3.科学技術政策の動向
第2章 大学の現代的理念と教育研究のあり方
1.国の財政責任と競争的資源配分
2.イコールフッティング(対等な基盤)論
3.高等教育のあり方(グランドデザイン)の論点
第3章 大学と社会
1.社会的要請の「変転」
2.教育研究成果の社会的還元
第4章 大学・高等教育の再構築にむけて
1.管理運営と意思決定の仕組みの変容
2.教育研究と産学連携
3.大学の意思決定と地域社会
4.職員の大学自治への参加
第5章 教職員の権利擁護・地位確立の課題
1.就業規則問題
2.教員任期制問題
3.男女共同参画社会へむけて
第6章 運営費交付金等の財政基盤拡充の課題
結びにあたって

2.教員任期制問題
 国立大学の法人化に伴い、教員の身分は非公務員となったため、国立大学法人の教員の任期に関する規定は、現行の任期法3条ではなく、改正後の任期法5条によるところとなった。私立大学の場合と同様に、学内規則と本人の同意を前提として法人と教員との間の労働契約において任期を定めることになった。
 教員任期法1条の示すとおり、法の目的は教員の流動化による大学での教育研究の活性化にあることが大前提であり、大学教員として不適格な人材の排除が目的ではない。教員任期法による任期は職の特性に基づいて、その職に採用する際に付けるものであり、個々の教員の採用に着目して付けるものではない。同法4条によれば職に任期を付すことが出来るのは、1)先端的・学際的・総合的教育研究等で多様な人材を確保が特に必要となる教育研究組織の職、2)主として研究を行う助手の職、3)特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う場合の職の3つに限定されている。
 一方、労働基準法14条の改正により、有期契約期間の上限制限が改正された。有期契約の上限が1年から3年に延長され、例外として5年制が導入されることになった。この改正により、大学教員の採用にも、3年の雇用期間を定めて、また1号に該当する場合は5年の雇用期間を設けて労働契約を締結することが可能との解釈が生まれている。すなわち、「労働基準法第14条第1項第1号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」により、博士号を取得している者や、5年以上の経験を持って大学教員となり1075万円以上の年収のある教員へは5年の有期契約を導入できることになるというのである。
 実際、ある大学には、この改正労基法14条を根拠として任期制が導入されている。しかし、労働基準法により教員を任期付きで採用する場合は、教員任期法の場合と異なり、前述した3型による限定がなく、さらに、教授会・教育研究評議会の審議・決定を経ずに導入される危険性がある。よって、教員任期法を労働基準法の有期契約制度に優先する特別法として明確に位置付けて、任期制導入へ対応していくことが重要である。
 中期目標・中期計画の策定にあたって、少なくない大学が任期制の導入を謳っている。また、ここ数年医学系分野をはじめ全教員に任期制を導入した大学が目立っている。任期法は、たとえ公務員の身分から外れたとしても、教員の身分保障の点から限定的にすべきものとして任期法第4条にて3類型に限定しており、それを無視して全教員に任期を付すことは違法行為である。任期制の導入においては、任期法の趣旨を十分把握し、安易に導入することのないよう慎重かつ十分な議論が必要となろう。

投稿者 管理者 : 2004年09月22日 00:26

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