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2004年10月26日

第2部迫るバブル崩壊(1)破たん処理、見えぬ枠組み(大学激動)

日本経済新聞(2004/10/23)

 少子化が進み志願者の「全入時代」が迫る中、大学の増加が止まらない。四年制大学は今春、七百九校に達し、ここ六年間で百以上増えた。一方で株式会社立大学、外国大学日本校など、規制緩和による競争は激化する。経営破たん、定員割れ……。大学版「バブル崩壊」の最前線を追う。
緊急融資を準備
 今年六月、東北文化学園大学(仙台市)は信用不安の渦中にあった。元理事長の脱税疑惑、大学設置基準を満たすための架空寄付が次々と発覚。資金繰りが悪化して、教職員への五月の給与は支払われず、研究室のコピー用紙は切れたまま。学内を清掃する業者に支払うカネもなくなった。
 不測の事態に驚いた仙台市は、地元企業の連鎖倒産を避けようと同大の納入業者に緊急融資を準備した。学生たちも激しく動揺。就職活動中の男子学生(21)は企業の面接官に「あの大学の状況で本当に卒業できるのか」と問いただされた。
 六月二十一日、約三百億円の負債を抱え、大学としては初の民事再生法の適用を東京地裁に申請する。大阪を中心に医療法人などを経営する「藍野グループ」による支援が決まったのはその三日前。影山光太郎・新理事長は「まさに薄氷を踏む思い。月末の支払いが迫り、一週間遅れたらつぶれていた」と振り返る。
拡張路線に限界
 実は再建のためのスポンサー候補は他に二つ残っていた。ある学校法人と財団法人だが、同大と系列の専門学校を合わせ五千人強にのぼる学生の引き受けは難航した。切羽詰まった関係者は、大学経営の歴史は浅いが、ここ数年で短大や大学を次々と傘下においた医療法人系のグループにすがることを決断する。
 きっかけは不祥事だったが、筑波大の小島弘道教授(学校経営学)は「決して特殊ケースではない。今後どの大学にも起こりうる」と断言する。
 ワンマン理事長が専門学校を設立、短大や単科大を経て、総合大学や大学院にステップアップ――東北文化学園大も含め、これが学校法人ビジネスの典型だが、小島教授は「全入時代に入れば、無理な拡張路線は次々と行き詰まる」とみる。
 日本私立学校振興・共済事業団の調査では、単年度収支が赤字の学校法人は一九九〇年代前半は全体の五%前後だったが、二〇〇二年度は二七%。四校に一校は「著しく経営が窮迫し、基金の取り崩しや借入金に頼らざるを得ない状況」(同事業団)にある。
5スキーム想定
 大学の経営破たんが続出するのに備え、文部科学省は内々に五つのスキームを想定している。
(1)従来のように学生募集を停止して閉校する
(2)破産法に基づく清算
(3)債権者との話し合いによる私的整理
(4)民事再生法の適用
(5)危うくなる前の大学同士の統合(救済合併)
――の五つだ。
 「全入時代を前に、民事再生法が使えることが確認できた。もう一つの救済策として、大学統合のケーススタディーを体力のあるうちにやっておきたい」(同省幹部)。同省はすでに一部大学に接触したが、「前例がなく、どこも統合には踏み切れないのが現実」だ。
 企業の合併との最大の違いは、多数の学生を抱える点だ。統合してもリストラするわけにはいかない。学力差の問題も横たわり、有力大学による救済は容易ではない。
 文科省は大学同士の“マッチング”機能を私学関連団体に持たせたいと連絡協議会を今年初めにつくったが、議論は進まず中断した。
 他にも大学独特の課題が山積する。例えば転職の際に必要となる卒業証明書。母校がなくなったら誰が発行に必要な学籍簿を管理するのか。
 在学留学生の多くが就労目的で首都圏に住んでいたとして、文科省が七月に解散命令を出した酒田短大(山形県)の場合、福岡に住む元理事が窓口となり、山形在住の元職員が手作業で書類を発行する。文科省は別の大学に業務を移管するよう指導するが、実現のメドはたっていない。
 右肩上がりの学生数、文科省による護送船団行政……。金融機関とともに旧来の枠組みに守られてきた大学は今、バブルの崩壊が十数年遅れてやってきたような状況にある。大学全入時代まであと二年半。危機は目前に迫るが、明確な対応策は誰も持たない。

投稿者 管理者 : 2004年10月26日 00:26

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