個別エントリー別

« セクハラ停職処分 鳥大助教授が控訴 | メイン | 学生謝礼金1225万円流用 群大、工学部教授を懲戒処分 »

2004年10月28日

トップインタビュー 兵庫県立大・熊谷信昭学長

毎日新聞大阪(2004/10/27)

 ◇地域文化の中心的役割を
 神戸商科大、姫路工業大、兵庫県立看護大を統合して設置された兵庫県立大(本部・神戸市中央区東川崎町1)がスタートし、半年が過ぎた。三つ以上の4年制大学を統合し、新大学を開学したのは全国で初めてで、地域に根ざす新しい公立大学のモデルとして注目されている。統合を陣頭指揮した熊谷信昭学長は大阪大学学長などを歴任、文化功労者としても知られる。「広く文化一般のよりどころになりたい」と目標を語る熊谷学長に今後の大学運営の考えを聞いた。【聞き手は平野幸夫・毎日新聞編集委員】
 ◇3大学統合生かし、文・理融合教育へ−−優れた研究、社会貢献を柱に
 ――開学後、半年が過ぎましたが、新体制はうまく機能していますか。
 ◆お陰様で大変順調に推移しています。知事ら県側の皆さんと意思の疎通がうまくいき、考え方も一致しています。設置者である知事に判断が任されている公立大学法人化の問題についても、国立大学の法人化の結果を見極めながら地域や国に貢献できるか大学としてどのような姿が最も適切かよく検討して進みましょうという意見で一致しています。
 旧3大学の学長に全員副学長になっていただき、よく相談しながらやっています。それぞれが輝かしい歴史と伝統を持っているわけで、それを受け継ぎながら、統合による相乗効果を生かすために力を合わせて、円滑にスタートできたと思っています。
 ――新たに運営協議会という組織を作った狙いは何ですか。
 ◆法人化については、今後、最も良い姿を検討しますが、法人化のメリットと考えられるものについては既にいくつも取り入れています。国立大学では法律によって強制的に経営協議会を作らされていますが、我々は学内外の有識者17人で構成する運営協議会を自主的にスタートさせ先日、初会合を開きました。メンバーはノーベル物理学賞を受けられた江崎玲於奈さんや看護大をご指導いただいていた日野原重明先生、産業界からは小林陽太郎さんら各界の人たちで、大所高所からのご意見をいただいています。
 予算についても、知事の方から、学長裁量経費を作って、学長自身の判断で有効に弾力的に使えるようにしてくださっています。日の当たりにくい分野の教育・研究に熱心に取り組んでいる教員や外部研究資金が獲得しにくいけれど大事な基礎研究に打ち込む研究者、優れた研究をしている文系の若い研究者らの支援などに活用したいと考えています。
 ――教員の任期制も取り入れていますが。
 ◆既に助手は1期5年の任期制にしています。災害時の介護などを研究する目的で12月に開設予定の地域ケア開発研究所では、独自に、助手、講師、教授ら全員を任期制で採用することになっています。任期は教授10年、講師、助教授は5年で再任も認めています。
 ――評価の問題はどうですか。
 ◆大学における評価ほど難しいものはありません。学生の評価も意外に教員自身で気付かなかった面もあり、励まされることもあります。米国式に講義名と先生の良かった点や悪かった点などを率直に指摘してもらい、担当の先生に伝えて授業の改善に役立ててもらうことなどもよいのではないかと思っています。
 ――開学時に教育・研究は異分野間の融合が大事と指摘されましたね。
 ◆科学技術の研究にしても技術系の人たちだけの考え方では良い研究が生まれてくる保証はありません。人文・社会科学系の人たちとの連携が不可欠です。教育についても理工系の学生たちも商法や株式会社法、会計などの基礎を身に着けていないと、ベンチャー企業も作れませんね。また文系の学生たちも新しい科学技術の基礎的な知識を持っていることが大事です。文系、理系の融合した教育が必要で、総合大学として統合した本学が最も生かさなければいけない点です。
 ――少子化時代を迎え、学生の確保に妙案はありますか。
 ◆良い循環を作ることが基本です。優れた研究・教育が行われていれば、入学金や授業料が高くても意欲的な学生が集まります。その資金でノーベル賞級の教授を集めれば、学生も世界中から集まり、寄付も集まり、教育・研究環境がますます整備されていくという良い循環が生まれます。本学では世界水準の教育・研究拠点にするため文部科学省が始めた「21世紀COEプログラム」に旧姫路工業大と旧看護大が選ばれており、引き続き支援したいと考えています。
 ――公立大学として地域への帰属意識をどう定着させ、社会に貢献していきますか。
 ◆大学の目指すべき目標は良い教育・研究と社会貢献が大きな柱です。社会貢献は産業界に対する経済的な貢献だけでなく、その地域における文化の中心的な役割を果たす存在でもありたいと思っています。そのためには優れた研究が行われていることが一番大事になります。時代の進展に適応できるような優れた人材の育成も、社会人に対する生涯教育のためにも、産業界に対して、大学でなければできない貢献をするためにも、優れた研究が行われていることが基本の要件なのです。大学はそれに全力を尽くさなければなりません。
 同時に、大学は社会に対して開かれていなければなりません。研究成果を教育や一般市民の生涯学習や産業の発展などに役立てたいという意識を積極的に持ち、そのような制度や仕組みも必要です。開学に合わせて、企業との共同研究の窓口になる産学連携センターや学術総合情報センター、生涯学習交流センターなどを設けています。
 社会一般も優れた大学は自分たちが育てるという意識を持ってほしいと思います。歴史をみても、優れた大学の存在はその地域や国家の発展に寄与し、大学の衰退は地域や国家の衰退につながっています。社会一般で大学を物心両面から支援されることは、決して人のためならず、とお考えいただきたいと思います。そして、大学の人間はそれに応える責務があることを自覚しないといけません。良い大学は大学人と社会とが育てるのではないでしょうか。大学が広く文化一般のよりどころになりたい、と思います。
………………………………………………………………………………………………………
 ◇兵庫県立大学
 今年4月、神戸商科大、姫路工業大、兵庫県立看護大が統合して開学。神戸市中央区の神戸ハーバーランドセンタービルに本部が置かれ、キャンパスは神戸学園都市(経済学部、経営学部)、姫路書写(工学部)、播磨科学公園都市(理学部)、姫路新在家(環境人間学部)、明石(看護学部)に分かれている。学部学生の定員数は5028人。兵庫の地における総合的な「知の拠点」として先導的・独創的な研究を展開し、地域の活性化とわが国の発展に貢献するのが基本理念。


投稿者 管理者 : 2004年10月28日 01:25

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi/mt/mt-tb.cgi/2152

コメント