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2004年11月29日

毎日新聞大学フォーラム、教育の質、第三者評価へ

毎日新聞(11/27)

 ◇国立大も法人化、同じ土俵に--金森越哉・文科省私学部長

 ■講演
 ◆大学周辺の状況
 ◇進学率、頭打ち/18歳人口、減少
 高等教育の全体像として18歳人口と高等教育機関への入学者、進学率の推移を見ると、18歳人口は最近では第2次ベビーブームを受けた92(平成4)年の205万人から年々減少、04(平成16)年には141万人になっています。少子化と言われるゆえんです。
 進学率は大学と短大を合わせて今年49・9%、ほぼ50%。これは5年前からほとんど変わっていません。大学、短大の合格率は85・1%です。これは91(平成3)年から年々上昇してきました。
 問題はここからです。進学率が頭打ちで18歳人口が減る、大学・短大の入学定員がそれほど減らなければ進学希望者の数と入学者が等しくなる時が来る。7年前の試算によると、09(平成21)年にそうなるという計算だったのですが、今年試算したところ、予定より2年早い07年にはその時が来ることが分かりました。最近の実績に応じて計算し直すと、07年には志願者と入学者が67万5000人で均衡してしまうのです。数字上では「全員入学」になります。現実には志望大学に偏りがありますから定員割れの大学が確実に出てくる。
 04年度の日本私立学校振興・共済事業団の調査によると、私立大学533校のうち、入学定員未充足の大学は既に155校あります。未充足の割合は98年では8・0%だったのですが99年には19・8%に跳ね上がり、翌年から30%前後を推移しています。私立短大の場合、400校のうち、164校が入学定員未充足です。短大の未充足率は99年に50%を超え、翌年は58・0%まで上がりました。その後減り始め、今年は41%です。

 ◇大学間で機能分担を
 ◆大学改革について

 これまで文部科学省は大学審議会や中央教育審議会の答申を受け、社会の要請に的確に応え、国際的にも評価される特色ある大学づくりのため、教育研究の高度化、高等教育の個性化、組織運営の活性化に取り組んできました。そして今年4月には国立大学を法人化しました。今後、中期目標を立て大学としてのビジョンを明確にし、国の規制を大幅に緩和して裁量を拡大、学外理事を含む役員会を設置し、学長中心の経営体制を確立、また学外有識者を経営に参画させる。そして、国立大学法人評価委員会による評価を実施し、情報公開を行って、大学内外に説明責任をきちんと果たしてもらうことになっています。この法人化は明治以来の大改革です。
 ◆質の保証について
 従来は文科省が厳しい事前規制をして、大学や学部等の設置認可をしていたのですが、事後チェックにと大きく様変わりしています。また質の保証について重要なのは従来、自己点検、自己評価だったものを第三者評価制度を導入して、すべての国公私立大学が定期的に文科相に認証された評価機関の評価を受けることにしたことです。今年からです。この評価機関は複数あり、各大学が選択して評価を受けます。内容は教育研究、組織運営、施設設備の状況で、各評価機関が定める基準によって評価が行われます。評価項目としては教育課程、学習指導方法、入試、成績評価、研究活動実績、学生支援体制、社会貢献、地域や産業界との連携、財政状況が考えられます。評価機関が評価結果を公表し、各大学は評価を踏まえて改善していくことになります。
 この評価は大学は7年以内ごとに、専門職大学院(ロースクール等)は5年以内ごとに行われますが、評価機関として既に今年8月、大学基準協会、専門職大学院には日弁連法務研究財団が大臣の認証を受けています。さらに準備中の機関もあり、まさに進行中です。
 ◆私立学校法の改正
 さて、私立学校については私立学校法が一部改正されます。学校法人が急激に変化する社会に対応していくため▽管理運営制度の改善▽財務情報の公開▽各都道府県の私立学校審議会の構成の見直し――を内容としたものです。管理運営制度の改善としては理事会の法定化などで理事、監事、評議員会の権限や役割を明確にしました。財務情報の公開については在学生、保護者らの利害関係者に対する閲覧が義務付けられました。公共性を有する法人としての説明責任を果たす、ということです。
 ◆教育研究の支援
 旧来の私学助成のほか、近年は高等教育のさらなる活性化を図るため、競争的な環境の下での財政支援を強化しています。獲得するのは比較的難しいと言われていますが、私学も大いに健闘しており、例えば「特色ある大学教育支援プログラム」では15、16年度の選定138件のうち76件は私学です。今後さらに充実させたいので、ぜひ挑戦して成果を上げて下さい。
 ◆高等教育の将来像
 中央教育審議会大学分化会は今年9月、「我が国の高等教育の将来像」について概要を取りまとめました。21世紀は知識基盤社会であり、高等教育の危機は社会の危機であるとの認識のもと、2015年から20年ごろまでを想定したグランドデザインとそこに至るロードマップを示したものです。
 最初に述べたように高等教育の収容力が07年には100%になり、大学はエリート段階からマス段階、そして進学率が50%を超えるユニバーサル段階になります。この概念は米国の社会学者マーチン・トロウのものですが、誰もがいつでも学べる段階です。そこでは第1に各高等教育機関が個性化、機能分化を果たさねばなりません。第2に誰もが信頼して学べる高等教育の質を保証する必要があります。第3に世界最高水準の高等教育、第4に「21世紀型市民」の学習需要に応える質の高い高等教育、そして最後に競争的環境の中で国公私それぞれの特色ある発展が求められます。
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 ■質疑応答
 ◇知的財産収入の活用を--経営は学校法人が基本
 金森越哉・文科省私学部長と椋本彦之・グルメ杵屋社長の講演のあと、池田知隆・毎日新聞論説委員の司会で2人を囲んで質疑応答の会が開かれた。主な質疑は次の通り。
 ――先ほどの大学入学者と進学希望者の数がイコールになるという「2007年問題」ですが、少子化の実態は深刻度を増し、既に東北文化学園の破たんなど私学を巡る状況はまさに真冬の段階にあると言っていい。世間ではかつてバブル経済の破たんに伴う金融機関の相次ぐ崩壊と同様、「大学版バブルの崩壊」が語られている。一方、株式会社立の大学経営も模索されている。文科省としてどう対応していくのか。
 金森 国公立と私学の役割分担は今後も変わらないと思う。先ほど述べたように各大学の特色を発揮していくことで乗り切っていかねばならない。これまでの私学助成もあるが、今後、競争的な教育研究資金を増やしていく方向なので、そういう資金を獲得しながら魅力ある私学を目指してほしい。株式会社立の問題だが、文科省としては学校法人による経営が基本と思っている。企業などから資金を受け入れるのはかまわないが、基本は学校法人だ。公共性、安定性、継続性という面が学校運営には重要だ。株式会社立については今後十分な評価を行う必要がある。
 ――先ほど、椋本社長から「大学の先生は学問好きだが、組織運営になじまない人が多いのではないか」という指摘があった。実際、学長候補はいるが、経営責任者の理事長候補が大学内から出てこないという話も聞いたことがある。
 金森 椋本社長が言っていたように、学生、生徒を燃やす先生の役割は大きい。学生、生徒の心をつかむことは先生の力の一つだ。
 ――さて、参加の皆さんも大きな関心を寄せていると思うが、大学の評価、その社会的公表の件だが。
 金森 評価、公表はあくまで各大学の改善のヒントにするのが目的で、いたずらに大学間の序列を作るのが目的ではない。受ける側の大学、また評価する側の認証機関ともまだこれからというのが実情で、公表の仕方は今後の課題だ。
 ――評価次第によってはつぶれる大学も出てくるのではないか。
 金森 この十数年、日本の企業の消長が激しいが、大学も例外ではないということだ。今は競争を通じて大学の質を高める時代。今後、努力する大学、しなかった大学で大きな差が生じて、2極分化していくことも考えられる。
 ――評価については社会の関心、特に産業界など関心が高いし、逆に産業界などからの評価も就職などの問題から出てくる。
 金森 従来から産業界の評価があり、大学の自己点検、自己評価もあった。また偏差値、海外からの評価などもある。いろんな評価があったらいいが、大学の教育研究について、評価機関がきちんとでき、客観的に評価して、全体の質を上げていくことが今回の狙いだ。
 ――講演の最後に「大学の将来像」が語られた。それに関連して大学の知的財産をどう発展させるか。
 金森 研究の成果である知的財産の活用は大学の社会貢献として重要であるとともに、当然、収入の多元化という点でも望ましい。私学の場合、その収入は学生の納付金、私学助成、企業など民間からの寄付、事業収入が中心だが、知的財産は研究への大きな動機付けになると同時に大学にとって安定した収入になる。積極的に対応したい。
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 ■人物略歴
 ◇かなもり・えつや
 1951年生まれ。76年、東大法学部卒業、同年4月、文部省入省。初中局財務課などを経て、91年高等教育局大学入試室長、94年生涯学習局青少年教育課長、97年香川県教育長、00年大臣官房総務課長、02年大臣官房審議官(初中局担当)など。今年7月から現職。


投稿者 管理者 : 2004年11月29日 00:08

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