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2004年12月06日

中央教育審議会大学分科会大学院部会(第26回)議事録・配布資料

中央教育審議会大学分科会大学院部会(第26回)議事録・配布資料(2004年10月19日)

中央教育審議会大学分科会大学院部会(第26回)議事録・配布資料

1  日時  平成16年10月19日(火曜日) 15時30分~17時30分
2  場所  三田共用会議所第4特別会議室(4階)
3  出席者  (委員) 鳥居泰彦(会長)、中嶋嶺雄(部会長)、黒田玲子の各委員
 (臨時委員) 相澤益男、天野郁夫、荻上紘一、黒田壽二、佐々木正峰、南雲光男、田道代の各臨時委員
 (専門委員) 伊藤文雄、舘昭、福田康一郎の各専門委員
 (文部科学省) 結城文部科学審議官、石川高等教育局長、泉高等教育局担当審議官、惣脇高等教育企画課長、小松大学振興課長、杉野専門教育課長、石野医学教育課長 他

4  議事 (1)  大学院評価について、有識者から意見発表があり、その後に質疑応答が行われた。

【川口昭彦氏(独立行政法人大学評価・学位授与機構評価研究部長)の意見】

 機構では2000年から試行評価を行っている。当初の対象は国立大学であったが、最後には公立大学にも加わっていただいた。その経験やアンケート結果等を踏まえ、なるべく教育評価に絞ってお話したい。
 評価を始める時に大学院の組織が非常に複雑であり驚いた。単純に学部の組織の上に大学院の組織が乗っているような場合でも、その組織が教員組織なのか学生組織なのか定義が難しい。しかも、この形態の組織は約90の国立大学のうち10程度にしか当てはまらないだろう。理工学研究科に代表される2つの組織の上に乗った大学院の評価方法には頭を痛めた。しかし実際にはさらに複雑なものもあり、連合大学院になると他大学との関係まで出てきてしまう。
 試行段階では多面的な評価ということで、全学テーマ別評価、分野別教育評価、分野別研究評価を実施してきた。全学テーマ別評価は全国立大学、希望のあった公立大学を対象に、他の2つは特定の大学を対象に評価を行った。
 分野別教育評価は基本的に学部と研究科で変わりはなく、教育の実施体制、教育内容面での取組、教育方法及び成績評価面での取組、教育の達成状況、学習に対する支援、教育の質の向上及び改善のためのシステムという項目で評価を行った。
 各項目の内容は資料3に記載の通りである。教育の実施体制については、組織の整備に関する取組状況、目的や目標の周知あるいは公表に関する取組状況、学生受入方針に関する取組状況といった内容を評価した。教育内容面については、学位を含めた教育課程の編成、研究指導を含めた授業の内容について評価を行った。教育方法及び成績評価面については、成績評価基準、学位授与基準の設定や施設・設備の整備・活用等を評価した。教育の達成状況については、学力や資質・能力、進学や就職などの修了後の進路をもとに評価を行った。学生の学習に対する支援については、ガイダンスや相談・助言体制、図書館を始めとする自主的学習環境の整備・活用といった点を評価した。教育の質の改善システムについては、組織としての教育活動や個々の教員の教育・研究活動の評価、あるいはその結果を実際に改善に結びつけるシステムの整備状況を評価対象とした。
 これらの評価を通じて浮かび上がったポイントは、大学院が非常に多様であるということである。組織形態については既に述べたが、それ以外にも社会人、留学生の受け入れや10月入学など入試制度も非常に多様であった。
 分野横断や分野融合に対する取組も多くあったが、学部に比べて当事者間の情報周知が不十分であった。分野融合を目指した大学院や独立研究科では入学者の持つ学習歴が多様になるが、それが不十分な学生に対する指導も必ずしも十分ではなかった。これらの問題点は教員による自己評価や学生のアンケートからも見て取れた。多様性が引き起こす教員に対する負担増は大きな問題になるのではないか。
 教育方法・内容に関していくつか指摘された点を述べる。学生個々に対する研究指導や複数の教官による指導体制、TA・RA制度の活用は一般的に充実し、かなりの効果を挙げている。
 修士論文や博士論文の審査は非常に厳格であった。所定年限での学位の取得状況は修士では良好であったが、博士では必ずしもそうではなかった。審査を甘くしてどんどん学位を与えれば良いという問題ではないが、課題であろう。博士課程では中途退学や留年という問題もかなりあることが分かった。
 講義内容や成績評価法がほとんど教官個人に依存してしまっているという問題もあった。関連する問題として研究者養成と高度職業人養成の区別が明確でないことがある。大学によっては研究者養成でやることをそのままやれば高度職業人の養成ができると主張するところもあった。分野横断的な大学院に対しても授業科目やシラバス、研究指導にその特徴が必ずしも生かされていないとの声があった。
 学生支援については、学習環境あるいは学習支援体制の整備に対する努力がかなりなされていた。修了後の進路指導・支援にもかなり努力していたが、中途退学者や未修了者に対する指導・支援にはまだ問題があるのではないかという気がした。これは非常に難しい問題であろう。
 学生の健康面、精神面等での支援体制に対してもかなりの努力がなされているが、必ずしも十分とは言えない。特に大学院においては学生に対する教官数が多く、それがこのような問題に対してはマイナスとなる部分もある。
 ファカルティ・ディベロップメントは最近かなり活発に行われているが、大学院は学部に比して取組が遅れている。また学部においても大学院の授業科目等と関連した取組は不十分である。自己評価もかなり行われているが、それを改善に生かす機能についてはまだ問題があるのではないか。
 試行評価を行った結果、いくつかの良い効果も得られた。自己評価を検証する形での第三者評価であることから、大学自身による現状と問題点の把握、教育研究活動の改善に貢献することができた。またピアレビュー体制をとったことで評価者となった大学関係者にも大学評価に対する習熟度を高めていただけた。さらに自己点検・評価の質の向上もあった。
 課題として、やはり自己評価の結果を改善に結び付ける体制が十分ではないことがある。また第三者が検証するための根拠資料が不足していることも大問題であろう。評価にはエネルギーが必要であり、インセンティブを付与していくことも大事である。また効率的な評価方法を開発するとともに、マスコミによるランキングなど評価結果の利用のされ方についても理解を深めていく必要があるだろう。
 機構としては「評価情報を自ら価値付け、次の活動を選択していく」という評価文化の展開に資する所存である。認証評価として国際的に通用するものを目指し、今回の評価項目も欧米のそれを参考に作ったが、未経験の部分も多く進化する評価システムにしていきたい。


投稿者 管理者 : 2004年12月06日 00:11

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