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2004年12月27日

愛媛が動く・大学淘汰の時代(4)法人化 一定割合で運営費減 教員の研究費カットも

愛媛新聞(12/24)

 愛媛大は四月、ほかの国立大と同様、組織転換した。「国立大学法人」への移行。「確かに幾つかの権限は移され、細かい点で自由度は増した。しかし、自分たちだけでやっていけるかは別問題だ」。小松正幸学長(62)は法人化後の八カ月余をこう総括する。
 メリットはあった。文部科学省の「出先機関」ではなくなり、新事業を始める際に不可欠だった同省との折衝、概算要求などにかかる手続きは軽減された。裁量をフル活用し、独自の事業を迅速にスタートできるようになった。
 地域への政策提言を活動の柱とする地域創成研究センターや、理系研究者を養成するスーパーサイエンス特別コースは、発案から約一年で設置。国立大であれば最低二年以上かかっていた。
 公務員でなくなった教職員は、組合を設立。組織率の低さ、研究職と事務職の考え方のずれなど問題を抱えるものの、労働条件の維持・改善において、今後その役割が期待される。
 ところが、小松学長の表情はさえない。「もろ手を挙げて喜ぶわけにはいかない」とこぼす。依然として文科省が幹部人事をコントロールしようとする姿勢は明々白々。ほかの独立行政法人と同じく、一定の割合で運営予算を削減する措置からも逃れられなくなった。
 二〇〇三年度に約三百二十億円だった運営費は本年度、約五億円減少。さらに〇五年度から〇九年度まで、各年度当たり約一億二千万円ずつ自動的に削られる事態に直面する。
 運営費削減に対し、小松学長は対策に余念がない。定年退職者の補充をしない形での人員削減を決断。〇五年度からは、全教員に配分している教育・研究費に当たる校費を一律にカットする予定だ。教員が学外から得た研究費の一部を「大学に入れる」措置の検討も始めた。「背に腹は代えられない」との言葉が情勢の緊迫度を物語っている。
 こうした対策を、職員組合は冷静に受け止める。書記長の深田昭三教育学部教授(47)は「知的活動のライフラインを止める恐れがある」と大学側の動きを注視する姿勢は崩さないものの、「国全体の流れから見れば、ある程度は仕方ない」と話す。
 国立大の法人化と三位一体改革。「いずれも権限移譲は明確だが、将来像がはっきり分からない」。小松学長にはダブって見える。法人化の先に民営化があるのは間違いないだろう。採算を極度に重視するようになれば、研究は困難な状況に追い込まれる。「日本の高等教育のシステムそのものを揺るがす問題をはらんでいる」。小松学長は警鐘を鳴らす。


投稿者 管理者 : 2004年12月27日 02:25

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