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2005年01月06日

スーパーCOEで改革推進-課題は全学への波及

日刊工業新聞(2005/01/04)

研究開発そのものではなく、”研究システムや組織運営の改革先導“を目的とする文部科学省の科学技術振興調整費「戦略的研究拠点育成」(通称=スーパーCOE)は、トップバッターの東京大学と大阪大学の2部局が05年度に最終年度を迎える。
1機関当たり年5―10億円を5年間にわたり投入するという圧倒的な予算規模。
50人に上る若手教員採用や人事改革、新しい外部資金導入法などの試みがなされ、国立大学法人化にも刺激を与えた。
しかし、プログラム終了後は国の予算に頼らず自立することが求められる。
学長らのトップマネジメントで全学・全研究所の取り組みに拡大できるのか―。
スーパーCOEは、社会が納得できるだけの答えを明確に示す重要な段階に入った。(山本佳世子)

【多彩な顔ぶれ】
 大学の競争的資金としては21世紀COE(中核的研究拠点)プログラムが有名。
だが、予算配分は1テーマ1―2億円に過ぎず、スーパーCOEの規模は際だっている。
これは研究機関のシステム・組織改革を他機関のモデルとして行う使命を担うためだ。
新領域確立の研究も含まれるものの、改革効果の実証が目的だ。
旧帝大系の採択が多いが、04年度は私立2大学も採択され、30大学程度の提案のうち最終選考の6校には、地方国立大の徳島大のゲノム研究、私立単科大の東京女子医科大の遺伝子医療も残り、顔ぶれは多彩になりつつある。
改革の大きなポイントは人材育成だ。
どの機関も予算の5―7割を人件費に充て、5年任期の特任教員などの雇用に活用している。
教員ポストの空きがなければ新規採用できず、研究費は機器購入に使う通常の研究費補助金とは様子が違う。
京都大の医学研究科では、新進気鋭の若手20人の雇用のうち半数は、日本の閉鎖的な研究環境を嫌って海外研究機関に行ったままの人材を呼び戻したものだ。
英科学誌「ネイチャー」に研究成果が掲載されるなど、そのアクティビティーに、伝統的な京大医学部の助教授らも刺激を受けている。

【人材流動化が柱】
東京大の先端科学技術研究センター(先端研)は研究活性化に向けた人材流動化の制度設計に力を注いだ。
先陣を切った特任教員制度や、全員に課した教員任期制は、今年度の国立大学法人化で多くの大学が一部で取り入れた。
運営費交付金削減の対策として、一流研究者の給与を企業の寄付でまかなう「寄付基金教授」制度や、研究所の運営と教授会の完全分離も、評価は高い。
しかし、これらが東大全学に広がる気配はない。
人材流動化を指向する大学・研究機関もまだ少なく、まもなく任期が切れる特任教員40―50人の行き先に不安が残る。
「理想を揚げて動きだした当初より、着地点をどうすべきか考える今の方が難しい」と橋本和仁センター長は頭を悩ます。
一方、日本型ベンチャー創出の手法・システム開発を掲げる産業技術総合研究所のベンチャー開発戦略研究センターは、少し前の中間評価で大幅な見直しが必要な総合評価Cを受け取った。
「センターと研究現場の意識ギャップが大きい」「実行責任者の再配置が必要」などが理由だ。
昨年秋に行われた科学技術振興調整費25周年記念シンポジウムでも、スーパーCOEの実施機関は”出島扱い“で、全学への波及は難しいとの意見が相次いだ。
文科省科学技術・学術政策局科学技術振興調整費室の増子(ますこ)宏室長は「先行機関の課題は、事業終了後のトップマネジメントと自立だ」と断言する。
スーパーCOEは研究システム改革の”呼び水“だからだ。
そこで当初は学内1部局の提案だったのを、今年度の募集からは学長が総括責任者となる全学提案に限定した。

【継続支援も】
九州大学は味覚情報の視覚化などを手がける。
梶山千里総長は「研究成果は予想しづらく、研究の手法も切り口も多様でチャレンジングだが、直視して取り組みたい」と意気込む。
”技術と感性の融合“の土台には、統合した九州芸術工科大学の実績があり、統合効果を全学でどう引き出すのかを問うものにもなる。
文科省は「改革システムが最優秀の評価で終了し、全学への波及を学長が確約する大学に対しては、年2―3億円の継続支援も考えたい」(増子室長)と政策誘導を図る。
自立の面では大阪大の工学研究科が、終了後の研究アクティビティーを継続する施設として、3億円相当の研究棟「バイオX」(仮称)を個人の寄付で決めた。
企業からの資金活用なども自立策としてクローズアップされてくるだろう。
スーパーCOEは来年度で募集を終了する。
現在その募集中だが、文科省はこうした事業終了後の自立した姿の明確化を求めている。
最後のチャンス、来年度の募集締め切りは2月7日だ。


投稿者 管理者 : 2005年01月06日 01:22

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