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2005年01月08日

教育基本法改正問題、広がる「愛国心なし」決議から見える可能性

教科書情報資料センター
 ∟●広がる「愛国心なし」決議から見える可能性

広がる「愛国心なし」決議から見える可能性
--「改悪反対等」決議はついに400を突破!

  「改悪」推進決議も都道府県段階中心に「倍増」

 教育基本法の改悪決議が、9月・12月議会で、どの程度増えるか注目されていました。前回9月末の集計と比較すると、今回は141増えて280となりました。なんと倍増です。彼らも追い上げています。これに対して改正反対ないし慎重審議を求める決議も、前回より37増えて415に達しました。

 今回の改悪推進決議の特徴として、都道府県議会の決議が多いことです。そのため、単純に数だけで比較することに意味ないのでは、という疑問が起こるかもしれません。しかし、地方議会の選挙制度を考えてみるとよくわかりますが、市町村議会決議の方が「民意の反映」という点で都道府県議員より忠実であることを知っておくことが大切でしょう。
 
 ご承知のように、市町村議会の選挙は、一部の大都市をのぞき、大選挙区制をとっています。つまり、一つの選挙区の中で、得票数の多い順に定員の数だけ当選する仕組みになっているのです。こうすると、いわゆる「死に票」の数は、落選した候補者に入れられたわずかの票に限られます。地方議会に市民派議員が多数いる背景は、このようなところにあります。

 ところが、都道府県議会の選挙は、一人から数人を選ぶ小選挙区ないし中選挙区になっています。つまり、現在の国会議員選挙に近い形なのです。そのため、「死に票」が半数近くなる場合もしばしばです。民意が切り捨てられ、反映しにくい構造なのです。

 改悪推進派は、また彼らの戦略として、都道府県でまず決議をかちとり、その勢いで市町村決議へ、という方針を現在とっています。今回の決議にはそれが反映している面もあります。そうした方法を彼らがとる理由としては、自民党中央の意向が届きやすく、民意が反映しにくい都道府県議会のほうが、改悪決議をかちとることがより簡単だからです。また、自民党が過半数を握っている議会も多いことがあります。その意味では今後、攻防が市町村段階へ移っていくことが予測されます。2005年の3~6月議会は、それが大きな焦点になるでしょう。

  近づきつつある右派決議の限界点

 今回の決議の特徴は、公明や民主に妥協した決議が増えていることです。これは、自民系が議会の単独過半数を失っているような場合、起こりがちですから、これまで決議に失敗してきたところで、これから増えていくことが予想されます。

 その結果、今回、二つの変化が決議の内容に起こりつつあります。第一は、これまで「教育基本法を早期に改正をされるよう強く要望する」(千葉県議会)など、「早期改正要求」が主流でした。ところが今回、「国民的な議論を尽くしながら改正が行われるよう強く要望」(北海道議会)とか、「教育基本法改正について徹底議論されることを要望する」(広島県議会)、または「教育基本法への国民的議論がおこなわれるよう」(大阪市議会)と「早期改正」はおろか「改正」の言葉さえない決議まで出現しました。はては「慎重に審議し・・徹底的な議論のもと教育基本法を改正」と、いったい「慎重審議要求」なのか「改正促進」なのかわかららないような決議さえ生まれました。

 第二は、これまで「国を愛する心」(<和歌山県><千葉県><岡山県><鳥取県>議会など)が意見書に盛り込まれていたのですが、公明党が2004年6月の与党中間報告で主張した立場が反映し、「(祖)国を大切に」(<北海道><摂津市>議会)という表現さえ盛り込んだ決議が登場しました。あるいは「愛国心抜き」決議(<大阪市><島根県><広島県><福岡県>議会)が広がっています。

 これらの決議も改悪決議への流れを作るものとして、私たちは阻止の運動を進めていかねばならないことはもちろんですが、全国の決議内容を逐一分析するとき、右派の改悪決議運動は、その推進力のみならず内容においても、限界点に近付きつつあるといえます。これからは、すべての決議内容を厳密に分析して、いったい何が国民世論であるか解明することが必要になるでしょう。
 
 中央で行き詰まりの好機

 右派の行き詰まりは、中央でも顕著です。「三位一体改革」にともなう「義務教育費国庫負担制度」の廃止をめぐって、これまで教基法の改悪を推進してきた勢力が分裂しているからです。この改革は、子どもたちの教育を保障する観点から見ると問題が多くありますが、右派からみても教育の国家主義的な統制を弱めるものと見なされています。たとえば教基法改悪運動の中心を担ってきた高橋史朗・民間教育臨調運営委員長は、この改革に反対し、「義務教育に対する国の責任は明確にするべき」「教育基本法改正論議を大幅に遅らせる」(『日本の息吹』04/12号)と批判していますし、彼らの理論的な支柱になってきた小堀桂一郎・東大名誉教授も「教育が地方分権の原則の下に運営された場合、それぞれの地方の個性が掲げる教育原理よりも(国の教育が)下位の次元に貶(おとし)められ」(産経11/22)る、と反対しています。

 ところが、同改革を推進するのは総務省です。その中心は麻生太郎大臣で、彼は教基法改悪運動の中心=日本会議による「日本会議国会議員懇談会」の会長でもあります。やはり教基法改悪を推進してきた森喜朗前総理などは、教基法の改悪にとって「改革」は許せないと、麻生・小泉両氏を激しく批判しています。自公で推進してきた「教育基本法改正に関する検討会」の保利耕輔座長も、この「改革」で教基法「改正案の議論は振り出しに戻らねばならない」(共同12/4)と主張しています。すると、森氏がその翌日、教基法改正案を2005年の「通常国会に出したい」(産経12/5)と応じるありさま。教基法の改悪を推進することで、むしろ三位一体「改革」を阻止できるとしています。

 ただ、この様子だと、2005年の秋に中央教育審議会で上記「改革」について義務教育費の結論が出されるまで、法案上程延期の可能性が少し出てきました。そうした事態を阻止するためにも、右派は地方議会で、内容無視の、あせった決議運動を推進しているのです。私たちは、ここに生じた時間的余裕を生かし、今、急ぎ国会と地方議会への働きかけを強めれば、教基法改悪阻止の可能性も大きく開かれることでしょう。


投稿者 管理者 : 2005年01月08日 01:25

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