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2005年01月17日

全大教、中教審「大学の教員組織の在り方について」(審議経過の中間的な整理)に関する意見

全大教
 ∟●中央教育審議会「大学の教員組織の在り方について」(審議経過の中間的な整理)に関する意見(05/01/09)

中央教育審議会「大学の教員組織の在り方について」(審議経過の中間的な整理)に関する意見

2005年1月9日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 全国大学高専教職員組合は、その前身である日本教職員組合大学部時代から、大学教員の職のあり方とその待遇改善について取り組みを進めてきました。とりわけ、助手制度とその実態からの乖離の改善、助教授の果たしている役割にふさわしく準教授という名称への変更は焦眉の問題としてきました。国立大学の法人化に伴い、自律的制度設計が可能となった現時点で、「今後の大学教員の職としては、教育研究を主たる職務とする職として教授、准教授及び「新職」(自ら教育研究を行うことを主たる職務とする)の3種類の職と(従来どおりとすることが適切な)講師を置くこと」という今回の提案は時宜にかなったものといえます。
 しかし、同時に出された講座制・学科目制とに代わる規定の制定と助手の分化等が、大学の研究教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立につながるかどうかが問われます。

(1)学校教育法上、現在の大学の助手の職務内容は、「教授及び助教授の職務を助ける」と定められている、助手の教員組織における位置付けは曖昧であり、どのような種類の職務をどの程度担っているかは、各分野、各大学、各助手によって異なっており、無権利的な制度的・財政的制度とあいまって、様々な問題が出ていることは、私たちも長年指摘してきたとおりです。
 将来の大学教員や研究者を志し、自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者にとって、助手の職が将来の教授等につながる職として明確に位置付けられておらず、自ら教育研究を行うこと以外に教育研究の補助や研究室の事務等の様々な職務を行わざるを得なかったり、大学教員と明確に位置付けられていないため授業科目の担当者になれない等の問題があります。
 また、「学校教育法上の「助ける」という職務内容の規定も曖昧かつ抽象的であり、実態を適切に表すものではなく、「助手」という職名も、将来の大学教員や研究者になることが期待される者の職名としては、国際的に通用性を有するものではない。」との指摘は適切なものでありますが、「将来の大学教員や研究者を志」す者にとって、おおくの分野でわが国においては、この「助手」の職を経由する以外に職を得ることが極めて困難であり、やむを得ず矛盾を抱えたままそれに就かざるをえないという現状があります。
 これらを勘案すると、「現在の助手の職を、自ら教育研究を行うことを主たる職務とし、将来の大学教員や研究者となることが期待される者として位置付ける職と、教育研究の補助を主たる職務とする職に明確に分けることが必要である。その上で、前者の自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者については、国際的な通用性を踏まえつつ、その職名や職務内容を定めることが適当である。」との提案は妥当なものであります。自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者については、その職務に相応する位置付け(職名、職務内容等)の新しい職(「新職」)を、学校教育法上に設けることが適当でありますが、それにふさわしい処遇(制度的、それを実質的に支える財政的基盤の確立等)が前提されねばならないことは言うまでもありません。若手教員の養成においては、教育面と研究面の両方が重要であることは当然であり、「新職」の学校教育法上に規定する職務内容としては、教育と研究の両方とすること(例えば、これまで助手には排除されていた、授業科目を独立に担当することができるなど)が適切であるというより必要な前提であると考えます。
 この「新職」は、制度上、将来、准教授、教授へつながるキャリアパスの一段階に位置付けられるものであるとしても、大学院博士課程修了後、ポスドク(PD)等を経た者などにのみ限定されるものでなく広く有能な者を求めるべきであります。各大学においては、「新職」が自らの資質・能力を十分に発揮できる活躍の場や一層の研鐙の場となるよう積極的に活用するためにも有能な人材を見つけ・育てる能力を向上させる組織的・制度的なシステムを作り上げることが緊急の課題です。
 採用や昇進等に当たっては、責任の所在を明確にしつつ公正かつ厳格な教員評価を行うことが必要であり、昇進のための審査を定期的に行うことや、一定期間ごとに適性や資質能力を審査する制度を明確にすることは必要なことですが、「新職」に期間を定めた雇用(任期制)や学内昇格を原則として行わない制度を一律に導入することなどは、それぞれの実情に応じて、各大学が各分野・部署ごとに判断するべきものであり、安易に制度化することは避けるべきであります。

(2)しかし、現在の助手を「教育研究の補助を主たる職務とする職」に「明確に分けること」場合に、とくに現在の輻輳した「助手」職にあるものを何を規準に区分するのかを含めて、困難な問題が多々あります。現行の助手が担っている職務のうち、教育研究の補助は、大学教員が教育研究に集中できる環境を醸成する上で極めて重要であり、わが国において「教育研究支援者」が他の先進国に比べて著しく低劣であり、つとに指摘されているにもかかわらず改善されていない現状を考えるならば、教育研究の補助を主たる職務とする「(新)助手」を学校教育法上に規定することには異存はありませんし、今後の大学の発展の一翼を担っているともいえます。
 ただ、そのことで「(新)助手」のポストにかかわる教員数や、国から支出される運営交付金等)の資金等が削減されることがあってはなりません。
 助手の2種の「職」への区分をどのようにして行うのか、それらの間の相互転換がありうるのかどうかも問題です。区分けする場合に本人の意向を尊重することを当然の前提として、たとえば国立大学法人においては、教授会・研究教育評議会の審議を尊重して教員の採用・昇格等にかかわる手続きをとり、公平性・透明性が保証されるものでなければなりません。その場合、本人・組合等の異議申立権を保障することが不可欠です。
 職務内容についてはおおむね中間的整理のとおりでいいと思いますが、学問分野・部署ごとに更なる検討が必要でしょう。処遇について給与表については、現在の「教育研究支援者」とみなされる技術職や一部事務職員等とともに職員の給与表の適用が、上に述べたこれまでの経緯や実際に彼らが行う職務の実態も踏まえればいいのではないでしょうか.「教育研究支援者」の抜本的待遇改善が前提とされるべきことは言うまでもなく、すくなくとも「(新)助手」が現在得ている賃金待遇等は維持されるのが最低限のものです。職名も「教育研究支援者」集団にふさわしいものとされるべきでしょう。

(3)助教授を新設される「準教授」にして学校教育法に盛り込むことに異議はありません。とくに、「教授の職務を助ける」ことを主たる職務とする現在の助教授に替えて、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」ことを主たる職務とする「准教授」を設けることが適当であり、それにふさわしい処遇がもとめられます。
 准教授を設けた場合の教員の分担及び連携の組織的な体制の確保についてもおおむね妥当で、先の「新職」もふくめた教員集団が、教育・研究の単位集団として、とくに学問分野ごとに組織される学生等の集団に対する教育において有効に働くように格段の先見性と工夫が必要でしよう。

(4)これまで述べてきたように准教授、新職の考え方は望ましい方向に思えます。難しいのは、講座制・学科目制の廃止がセットになっているところです。国立大学において、講座制や学科目制が、国の行財政上の仕組みを用いた利益誘導的取り扱いと相侯って、人事、予算、教学面等の様々な側面において硬直的・閉鎖的・恣意的な運用を招き、教育研究の進展をめざす組織編制や教員人事への自主的・自律的な取組みを阻害してきたことは永く指摘されてきました。いっぽうでは、講座制・学科目制によって従来の定員や研究組織がそれなりに安定的に守られて来た事実もあり、廃止の目的は教員組織の大胆な「合理化」にあると懸念されることであり、定員の確保や組織の安定的な運営に欠けるものであってはならないことがどう保証されるかに関わってきます。
 大学の使命を果たすためには、とりわけ学生等の教育には、教員集団として対処すべきであり、そこでどういう役割を果たしていくかが、「教員組織のあり方」の基本的なことであり、個々の教員のあり方もその中で規定されてくるものです。
 現在の大学設置基準では、詳細に定められている講座制又は学科目制の規定を削除するとすれば、教員組織の基本となる一般的な在り方として少なくとも次の点は最低限守られるべきであります。
 すなわち、教授、准教授、「新職」等のすべての教員が同等の権利を持つ自立した存在であることが制度的(それを支える財政的処置を含む)保証を前提とした上で、教員組織の編制に当たり、それぞれの教育研究上の目的を達成するために役割の分担及び連携の組織的な体制がその構成員が自主的な合意によって確立され、かつ、研究・教育・運営についての責任の所在が明確でなければなりません。運営に関しては教授がその責任を果たすことは当然ではありますが、教授回答への参加は、少なくとも教授・準教授は同等であり、「新職」の参加も検討されるべきことでしょう。
 教育研究上の目的を達成するため、必要な数の教員と組織を置くことを各大学が自律的に決めた場合、文部科学省をはじめとした政府関係者は(財政的処置を含めて)その実現を図らねばならないことを明確にすべきです。


投稿者 管理者 : 2005年01月17日 00:10

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