個別エントリー別

« 「“新6者懇”スタート」薬学6年制の円滑な実施へ 新薬剤師養成問題懇談会 | メイン | 日本の科学技術研究費は4年連続増加の16兆8042億円 »

2005年01月18日

特区活用の株式会社大学、経営安定性の“担保”に課題

日経産業新聞(2005/01/17)

文科省、転学などの体制不十分
デジハリ、他大学と提携実現せず

 株式会社大学が構造改革特区制度の活用で産声をあげて約一年。特区の効果を検証する評価委員会は今月下旬にも、昨春開校した二校について、自治体が特区計画を申請しなくても全国展開できるかの意見をまとめる予定。だが文部科学省などは「全国展開に結論を出すのは時期尚早」との姿勢を強めており、一段の規制緩和には時間がかかりそうだ。
 評価委は今月十三日、情報技術(IT)関連の人材育成を手がけるデジタルハリウッド(東京・千代田)の大学院大学と、資格取得予備校を運営する東京リーガルマインド(LEC、東京・港)の四年制大学二校について、全国展開できるかどうか、両校の運営を書面や実地で調査した文部科学省担当者から初めてヒアリングした。学校開設はともに昨年四月。論議は全国展開の前提となる「株式会社学校の経営の安定性」に集中した。
 大学法人の審査基準では、学校法人は土地と校舎の自己所有が求められている。特区では賃借でも大学設置が可能な特例措置が適用された。だが文科省側はヒアリングで「経営が悪化した場合、校舎などを担保に借り入れができる」と不動産の所有が経営安定に不可欠との見解を主張。
 八代尚宏評価委員長(日本経済研究センター理事長)は、不動産を自己所有しなくとも「セーフティーネットを担保できれば良い」との考えを示したが、文科省は「卒業生が出ていない現段階で全国展開を認めるのは困難で、一部自治体も同様の意見」と報告した。
 文科省側が改めて不動産の問題も持ち出す背景には、構造改革特別区域法(特区法)では学校の経営状態が悪化した場合、特区計画を申請した地方公共団体が生徒の修学を維持できるよう転学のあっせんなどセーフティーネット(安全網)を講じるよう定めているのに、体制が十分でないとみるためだ。
 実際、両大の設置で特区申請をした東京都千代田区に対して昨年十一月、セーフティーネットへの具体的な対応策が固まってきたかを調査した文科省の担当者は「体制は整っていない」との見方を示した。これに対し同区の柳晃一・政策経営部企画経営主査は「学校法人も倒産する冬の時代。(学校法人に限らず)セーフティーネットの整備は文科省の責任の範ちゅうでもある」と語り、両者の主張は平行線。
 デジハリやLECは開校前、セーフティーネットの確保のため、他大学に提携を打診したようだ。だが「時間がかかる問題」(デジハリの藤本真佐社長)として決定には至らなかった。デジハリは四半期財務データの開示や、自治体が持つ学生募集打ち切りの権利がセーフティーネットの面で一定の役割を果たすと主張する。
 両大は四半期データをこれまで計三回、千代田区に経営状況の書類を提出した。文科省も書類や実地調査などを通じて収支状況を把握しており「初年度は大幅な黒字」(文科省高等教育局)との点に一安心はしている。
 ただ千代田区は来年四月の開校に向け五―六社と特区計画の作成に向け動いており、今後も全国規模で株式会社大学の数が増えるのは確実。株式会社大学の経営の自由度を増すためには、官民が協力して学生や保護者を安心させられる体制を構築する必要がある。

投稿者 管理者 : 2005年01月18日 00:20

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/440

コメント