個別エントリー別

« その他大学関係のニュース | メイン | 2月8日のNHK申し入れ行動について »

2005年02月08日

NHK受信料支払い義務についての法解釈

日本民主法律家協会
 ∟●澤藤統一郎の事務局長日記(2005年02月06日)

NHKの受信料は支払わなくてはならないか
  

よいことをしたらご褒美、悪いことにはお仕置き、これが躾の大原則。
国民の知る権利をないがしろにしたNHKには、真摯な反省あるまでの断固たるお仕置きが必要だ。お仕置きと言えばなによりも経済制裁。北朝鮮への経済制裁はさしたる効果はなさそうだが、NHKへの経済制裁は効果絶大である。

「NHKが良質な番組を放送する限りにおいて受信料を支払う。しかし、NHKが公共放送本来の使命を全うしていなければ受信料は支払わない」という考え方は法的な根拠を有するものである。以下、受信料支払い義務についての法解釈私見。

NHKの設置基準を定めるのが放送法。その32条1項は「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」という。受信料支払いは、税金のような公法上の義務ではなく、飽くまでも私的な受信契約締結の効果としての義務なのである。契約なら、本来は私的自治・契約自由の領域の問題。契約締結の有無は常識的には視聴者の意思次第なのだが、契約締結が義務づけられているところに類例のない奇妙さがある。もっとも、契約締結拒否についての制裁条項は一切なく、視聴者の契約締結意思表示を擬制する条項もない。したがって、法はNHKが国民の信頼を得て、視聴者の任意の協力で受信契約が締結される事態を想定しているものと言えよう。

したがって、視聴者が受信契約締結を拒否した場合には、NHKにおいては契約未締結視聴者を被告とする訴訟で直ちに支払いを求めうることにはならない。考えられる法的手段は、契約締結の意思表示を命じる判決を得ることくらい。しかし、したくもない意思表示を判決で命じることができるだろうか。憲法19条との関係で問題がある。受信契約締結前の視聴者に受信料支払いを法的に強制することは事実上不可能だろう。

では、いったん受診契約を締結した者が、NHKの姿勢に怒って支払いを停止することは法的に可能だろうか。結論として、私は「然り」と考える。

民法上の一般原則に従って受信契約を考える。これは双務契約で、視聴者側の債務は単純な受信料支払い義務である。問題は、NHK側の放送提供義務。これは、ともかく電波を流して何らかの番組を放送しておきさえすれば義務履行があったとされるものではない。NHKには憲法・放送法の理念に基づいて番組を作成し、国民の知る権利に応えた報道番組を放送する義務がある。公共放送という民主主義にとって極めて重要な地位に相応した義務であり、専門家責任を負う立場にもある。

医師は患者との診療契約において診療債務を負担する。診療債務の内容は「患者の安全のために最善を尽くすべき最高度の注意義務」である。「最善注意義務」「万全注意義務」と言われる。医師は、患者の生命や健康という重大な価値にかかわる業を独占して行うががゆえに最高度な注意義務を課せられる。同様に、NHKは国民の知る権利に応えるべき最高度の注意義務を負う。NHKは民主主義や我が国の将来をも左右する立場にあるがゆえにである。

受信契約が締結されていて、何の理由もなく受信料不払いなら債務不履行で、約款による年12%の遅延損害金を付して支払わねばならない。しかし、NHKが放送法の理念にのっとった放送をしていないから、となれば話は別。同時履行の抗弁で支払いの拒絶も可能、損害賠償も可能、債務不履行による契約解除も可能ということになる。

放送法は、目的に「放送による表現の自由確保」「健全な民主主義の発達に資する‥こと」(1条2・3号)を掲げ、「放送番組は、‥何人からも干渉され、又は規律されることがない」(3条)と定める。安倍晋三や中川昭一など右翼政治家のご機嫌を取りながらその威に屈して番組を改変し、しかもこれを反省しないというのだから、NHKの債務不履行である。視聴者が、このような事態でも、唯々諾々と受信料を支払わなければならないという理屈はない。


投稿者 管理者 : 2005年02月08日 00:15

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/593

このリストは、次のエントリーを参照しています: NHK受信料支払い義務についての法解釈:

» NHKの受信を目的にしなければ受信料の支払いは必要ない from NHK受信料を考える
放送法 第32条 1.協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的と... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年03月28日 16:05

» NHKの受信料徴収には強制力はない from NHK受信料を考える
放送政策研究会(第22回会合)議事録1 日時 平成13年11月1日(木) 18時00分から20時10分まで 2 場所 総務省901会議室(9階)... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年03月28日 16:06

» NHKの受信料の支払いは理解ある人が払えば良い from NHK受信料を考える
96-参-逓信委員会-3号 昭和57年03月30日昭和57年3月30日に開催された参議院逓信委員会において、福間知之委員の「受信料義務化」に関する質問に対して、... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2005年03月28日 16:07

コメント