個別エントリー別

« 大学の研究成果、情報発信不十分、発表、研究者任せ 名大が調査 | メイン | 大学の授業料に時代を見た(けいざい楽校) »

2005年02月08日

東北大、波紋広げる学長選廃止 法人化の危機感 背景に

波紋広げる学長選廃止=法人化の危機感、背景に-東北大

時事通信(2/07)

 民間的経営手法を導入した昨年4月の国立大法人化を受け、東北大(吉本高志学長)が先月、学長選挙の廃止を決め、学内外に波紋を広げている。「象牙の塔のままでは生き残れない」との危機感からトップダウン式経営を目指す大学側に対し、職員組合は「大学の自治を損なう」と強く反発。学長権限強化の動きには、学外からも「封建領主制に逆戻りする」と懸念の声が上がっている。
 ◇理系優位、覆す狙い 東北大の新規定では、まず学外の有識者も交えた「経営協議会」と、学内関係者だけの「教育研究評議会」が、各5人以内の候補をリストアップ。これに、教授や助教授30人以上の推薦を得た候補を加え、「学長選考会議」(学内代表と学外有識者6人ずつで構成)が適性を審査して新学長を選ぶ。投票はなく、企業経営者や外国人の登用も可能だ。来秋の次期学長選びから適用される。
 同大は戦後の13人の学長のうち、現学長を含む8人は医・工学部出身者と「理系優位」が伝統だ。「規模の大きい学部が仲間を推せば決まってしまうような従来のやり方は好ましくない」。新規定をつくった学長選考会議の小田滋議長(東北大名誉教授、元国際司法裁判所裁判官)は「私見」と断り、狙いを解説する。
 ◇他大学も追随? 国立大学長はかつて、教授会などの学内投票で選ばれていたが、2003年10月施行の国立大学法人法で、学長選考会議による選考に改められた。具体的手続きは各大学が定める選考規定に任され、旧帝大7校では北海道大、東大、京都大、大阪大が「意向聴取」などの形で学内投票を「温存」。名古屋大は投票を残した暫定規定を施行し、九州大も投票を取り入れる方向で検討している。
 ただ、投票を残した大学でも選考会議による投票結果の扱いは、規定上は「尊重する」(阪大)、「基礎とする」(京大)などあいまいな表現が多い。このため「投票結果が十分反映されないのでは」との懸念も強い。
 東北大の場合、「理系優位」の固有事情が影響したのは否定できないが、同大関係者は「全国に模範を示した。20年後には多くの国立大が追随するのでは」と胸を張る。小田議長は「今後はトップの経営能力が問われる。昔のように碩学(せきがく)の人を置いておけばいい時代ではない」と語る。
 ◇組合、撤回求める 学長選廃止の決定に対し、職員組合は「報道で初めて知った」と驚きを隠せない。「学長を密室で決めるに等しく、非民主的で時代錯誤だ」と強く反発。決定の撤回を求め、近く署名運動を始める方針だ。
 学長の権限強化に反対している九大の小田垣孝・理学部長は「権限だけ与えても、教員のサポートがなければ何も実行できない」と指摘。「現在の大学の問題は、学長がリーダーシップを発揮できないのではなく、真のリーダーの資質を持つ学長がいないことにある」とした上で「大学の自治」にこう警鐘を鳴らす。
 「権限の強まった学長は、『学内の理解が得られない』と弁明できない。文部科学省はコントロールしやすくなる」。


投稿者 管理者 : 2005年02月08日 00:24

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi311/mt/mt-tb.cgi/595

コメント