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2005年02月21日

国公立系大学 広がる教員の成果主義 秋田大も検討

東京読売新聞(2/19)

 ◆国際教養に続き、秋田も検討
 国際教養大で十八日、教員の新年度の年俸額が初めて更改された。勤務評定を年俸に反映させる制度で、国公立系大学では異例の試みだ。今は給与額が一定の秋田大でも、勤務評定導入が検討されている。営業成績などを基に多くの民間企業で採用される評定制度。教育・研究機関の“成果”とは――。そんな根本的な問いは置き去りにされ、成果主義は確実に広がろうとしている。(山田睦子)
 
 ◆国際教養 「教員の意欲高まる」
 一月下旬、秋田市の教養大キャンパス。学長室のドアをノックし、緊張の面持ちで席に着いた男性教授に、中嶋嶺雄学長が英語で語りかける。「C評価が平均で、年俸も今年度と同額です。そこを基準に話し合っていきましょう」。学科長にあたる「課程長」職のこの教授は、ようやく表情を和らげた。学長は課程長の評価と年俸について協議を重ね、各課程長は他の教員について評価を下す。この冬休み期間は、教養大にとって勤務評定の季節だ。
 専任教員全三十二人は三年間の任期付き採用、給与は年俸制だ。この時期に行われる勤務評定で、次年度の年俸が決まる。評価は、学生や同僚らの意見も踏まえ、A―Eまでの五段階に分けられる。特に優秀な教員はS、Eより劣る教員にはXの評価が下される。Cの年俸は基準額据え置き、Sはプラス20%、Xだとマイナス20%となる仕組みだ。例えば、基準額800万円の助教授の場合、Sなら960万円だが、Xだと640万円になり、320万円もの差がつく。
 教養大の担当者は「教員はよりよい授業をどうしたらいいか考えるようになる。よい教員は残り、悪い教員は出ていき、人材も硬直化しない」と意義を語る。懸命に働きながら、低い評価を受けた教員がやる気を失うデメリットはないか。担当者は「なお一層頑張ろうという気がなければ、それまで」と言い切った。“落ちこぼれ”は切り捨てられるというわけだ。

 ◆「教育には向かない」 反発も
 かつての国立大教員の給与は人事院勧告に基づいて決まり、勤務評定もほとんどの大学で行われていなかった。昨年四月の法人化で、給与は独自に定めることになったものの、中身はまだ国立大時代の慣習を踏襲しているのが実情。
 しかし、秋田大は中期目標・計画で「二〇〇六年度までに、客観的な人事評価の方法と評価結果を給与その他処遇へ適切に反映させる方策について検討する」と、評価制度改革を打ち出した。学内教授らによる「人事の適正化推進会議」は現在、評価モデルを作るため、他の国立大学法人などの情報を集めている段階だ。
 教職員組合は反発している。執行委員の川野辺英昭助教授は「成果主義による評価が大学教育の場でなじむとは思えない。モノを作る製造業や、モノを売る営業とは違う。短時間で教育の何を評価するというのか」と批判する。
 同大の細川勉人事課長は「民間も国も、頑張った人には多くの給料を払う成果主義の考え方になってきている。もちろん成果主義には批判や問題点もあることは分かっている」と言う。しかし、「よいか悪いかは別にして、時代の流れだから」と付け加えた。

 ◆専門家 「導入は無謀、質の低下招く」
 私立大でも勤務評定の結果を賞与に反映する動きが加速しているが、むろん教員の反発は大きい。
 北陸大(金沢市)の教職員組合が昨年七月、教員を対象にアンケート調査を実施したところ、制度導入によって「意欲が高まった」と二人が回答したのに対し、「低下した」は三十人。「組織が活性化した」は一人だが、三十一人が「沈滞した」と答えた。岡野浩史書記長は「一方的で不公平な評価。活性化ではなく不信感や意欲喪失につながっただけ」と怒る。
 旧来の年功序列を廃し、個人業績に応じ賃金を決める成果主義賃金制度は、バブル崩壊後、電機大手を中心に導入が始まり、一九九〇年代後半から民間企業に一気に広まった。
 厚生労働省が昨年九月に発表した「就労条件総合調査」によると、こうした制度を導入している企業は53・2%に上り、社員千人以上の大企業では83・4%が取り入れている。しかし、このうち79・9%が、部署間の評価基準や、評価する側の資質などに課題があるとして、手直しや改善が必要と指摘している。
 こうした中、大学に成果主義を導入するのは「無謀だ」と言い切るのは、甲南大の熊沢誠教授(労働経済学)。「学生にこびる講義がなされかねず、研究は質より量で評価されるようになる。また、学校行政に協力的な教員が評価されるようになる」と警鐘を鳴らす。



北陸大学教職員組合が平成16年7月に行った「平成15年度の人事考課・業績評価に関するアンケート調査」の結果については,下記のニュースを参照のこと。
「アンケート結果まとまる:現在の人事考課・業績評価は大多数が不支持」北陸大学教職員組合ニュース216号(2004.9.14発行)

投稿者 管理者 : 2005年02月21日 00:40

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