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2005年03月03日

移転できる?学内神社 信州大、高裁指摘で検討始める

朝日新聞(3/02)

 信州大学(長野県松本市)のキャンパスの片隅に、小さな神社がひっそりと立っている。国と特定の宗教との結びつきを禁じた憲法上どう考えるべきかと、近所の私立大学教授が疑問を抱き、国に移転を求める裁判を起こした。敗訴に終わったが、裁判所は「学内へ置いたままの姿勢は憲法の精神に反する」と指摘。大学は一転、神社の今後の取り扱いについて検討を始めた。教授は、素朴な疑問が大学内で研究や議論の対象になれば、と期待する。

 近くに住む私立大学教授(中東研究)の藤原英夫さん(69)。以前からこの神社を眺めながら「特定の宗教との結びつきを禁じた憲法との関係はどうなのか」という疑問を抱いていた。

 「国立大学に神社があるのは憲法20条の政教分離原則に反し、信教の自由を害された」として、国を相手に神社の移転を求めて東京地裁に提訴したのは03年9月だった。

 一審では4ページの判決文で訴えを退けられた。二審の東京高裁でも昨年7月、「原告の信教の自由が害されたとは言えない」などとして敗訴した。

 ところが、この判決の傍論で、「神社を大学構内に存置したままにしている姿勢は、(特定の宗教への公金支出などを禁じた)憲法89条の精神に明らかに反する行為と言わざるを得ない」という指摘があった。

 これを受けて大学は「司法の指摘を尊重すべきだ」(大学幹部)と動き始める。担当理事と大学事務局が神社の取り扱いについて協議を始めた。

 そもそもこの神社は約350年前、江戸時代に京都・伏見稲荷神社の分社として建てられたという。明治になってからは、この地に来た陸軍の歩兵連隊の守護神としてまつられた。

 戦後、松本医学専門学校(現・信州大学医学部)がこの地に移転してきた。一方、神社は連合国軍総司令部(GHQ)の指示で一度学外に移り、約50年前、再び医学部の出入り業者でつくる団体が中心となって学内に戻した。

 信州大学によると、現在は同団体が実質的に管理し、費用面も含めて大学の関与はないという。

 ただ、「移転となると、そう簡単ではない」(大学幹部)らしい。移転させるにしても、まず引き受け手が必要になる。仮に見つかったとしても、移転費用がかかる。大学が負担すれば、それこそ高裁が指摘した「特定の宗教への公金支出」になる。ではだれが負担するか――。

 高裁判決から半年以上たったいまも、神社の将来について結論は出ていない。大学は「移転を含め、扱いについて多角的に検討していく」(渡辺裕・同大学理事)と慎重だ。学内からは「どこかの神社が、移転先として名乗り出てくれればいいのだが……」と期待の声も漏れる。

 法学部のなかった信州大には今春、法科大学院が開設される。藤原さんは「法学生や法律の専門家が大学に出入りすれば、憲法上問題があると指摘された神社をどうするか、学内での議論が活発になると思う。どんな結論になるのだろうか」と話している。


投稿者 管理者 : 2005年03月03日 00:40

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