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2005年03月28日

元学生、落胆の声 「ばっさり切られた」 無年金訴訟、逆転敗訴

朝日新聞(3/26)

 国民年金への未加入を理由に障害基礎年金を不支給とされた元学生3人が国に賠償などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は25日、「憲法違反」を認めた昨年3月の一審判決から一転し、元学生らの請求を棄却した。年金とは別に4月から救済策として一定額を支給するが、年金受給者との格差は残ったまま。元学生からは落胆の声が漏れた。
 東京高裁は、20歳未満で障害を負った人が障害基礎年金を受給できるようになった85年の国民年金法改正で、20歳以上の学生無年金者に何の措置も取らなかった国会の対応を「裁量の範囲内で、法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとはいえない」と述べた。
 記者会見した原告の福島敏彦さん(40)=東京都青梅市=は「非常に残念。判決を聞いて目が点になる思いだった」と語り、「ばっさり切られた感じがする。同じ大学生でありながら不平等だ」と唇をかんだ。
 福島さんは高千穂商科大学に在学中の20歳のとき、車の運転中に交通事故に遭い、両目を失明した。事故は、逆走してきた車に正面から衝突されたものだった。
 盲学校に通い、鍼灸(しんきゅう)師の資格を得て生計を立ててきた。しかし、同業の仲間たちが障害基礎年金を受けているのに、福島さんには支給されない。
 別の原告の元学生(44)は、立教大の学生だった21歳のときに脳出血で右半身がまひした。今は障害者の通所施設でデータ処理の仕事をしている。1カ月の食費は8千円に切りつめている。
 4歳ごろから時々、大量の鼻血を出し、通院していた。「先天性の病気で、初診日は20歳より前だった。規定により年金は受給できるはずだ」と裁判で訴えた。しかし、判決は「鼻血の量の正確性を肯定しがたいなどの疑問点がある」と退けた。
 弁護団は「判決は全く評価に値しない。最高裁での逆転勝利をめざし、すべての障害者が年金で安心して暮らせるように引き続き最大限努力する」との声明を出した。
 この問題をめぐっては福祉的な救済措置として、学生無年金者に障害の程度に応じて月額4万~5万円を支給する制度が4月から始まる。しかし、障害基礎年金(1級は月額約8万3千円など)との格差は残る。
 <厚生労働省年金局・渡辺芳樹局長の話> 現時点では判決の具体的内容を十分把握していませんが、国の主張が認められたと考えます。

 ◇学生無年金訴訟高裁判決(要旨)
 25日に東京高裁が言い渡した学生無年金訴訟の控訴審判決の要旨は次の通り。
 ●国民年金法に関する憲法違反の主張について 59年に制定された国民年金法(59年法)は老齢年金を中心とした制度設計がされている。学生の多くが卒業後に自らの収入を得て老後に備えることが可能であって、収入のない状況下で保険料を負担してまで老後に備える必要性に乏しいと考えられ、学生に被保険者資格を認めなかったことにはそれなりに合理性がある。
 59年当時、大学進学者は1割にも満たず、高等教育を受ける者の父母には一般の水準以上の所得を有する者が少なくなかった実情からすると、そのような社会通念を前提に年金制度を設計したことに不合理であるということはできない。
 ●85年の改正国民年金法(85年法)の違憲性 85年当時でも大学進学者は少数と評価でき、59年法が前提とした社会の実情、社会通念がもはや通用しなくなったということはできない。
 85年時点での制度の是正については、立法の検討作業も積み重ねており、国民年金法上、学生に関する是正措置を結果として講じていないことをもって憲法14条に違反する状態が生じていたということはできない。85年法制定以前に20歳に達してから在学中に障害を受けたいわゆる学生無年金者について何ら措置を講じなかったことも、憲法14条に違反する状態をもたらしたと評価することもできない。
 85年法における、20歳以前に障害を負った者と20歳以後に負った者との取り扱いの差異は、立法者の裁量の範囲内の制度選択の結果だ。
 ●不支給処分の適否 85年法制定時に憲法14条に違反する状態が生じていたことは認められないから、憲法違反を前提に不支給処分の取り消しを求める控訴人らの請求は理由がない。
 ●改正国民年金法(89年法)について 89年法で学生を法の強制適用の対象に含めることとした際に、過去の無年金者に対してどのような取り扱いをするかについては、立法者の裁量判断の範囲内の問題であり、保険料の特例納付制度を設けるなどして遡及(そきゅう)措置を講ずべき義務があったとはいえない。
 保険制度は将来の危険を予測して定められた保険料で、その後に発生した事故に保険金として支給するものであるから、既に発生した事故に対する措置のあり方は一義的に明確なものではない。国会は、85年法案を可決する際に付帯決議をするなどの問題意識を有したうえで立法の検討作業を積み重ね、89年法を制定したのであって、当該立法行為ないし立法不作為が、過去の無年金者に対しても、保険料の特例納付制度を設けるなどして救済措置を講ずべき義務を怠るという違法があるということはできない。


投稿者 管理者 : 2005年03月28日 01:20

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