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2005年04月26日

国立大法人化から1年 学長は「みこし」にあらず

日本経済新聞(2005/04/24)

 大学自治の象徴ともいえる「教授会」が、お茶の水女子大では五月から様変わりする。
 時には紛糾し、深夜まで及ぶこともあった討議時間を、最長一時間半に制限。毎回開始前の三十分は、郷通子学長が大学の運営方針を説明する。「学長の姿を大きく映し出すスクリーンを前に、決定事項を聞く新しい教授会」(同大教授)のスタートだ。
 滋賀県の長浜バイオ大の学部長などを歴任した郷学長が、卒業以来四十三年ぶりに母校に戻り驚いたのが会議の多さ。
 しかも法人化で国立大の最高意思決定機関は学長ら幹部による「役員会」と位置づけられたのに、「まだ大学運営の中心は教授会という意識が残る」。会議の半減と教授会改革に踏み切った郷学長は「私の考えを直接訴え、理解してもらう。皆で同じ方向を目指さないと大学が生き残れない」と言い切る。
■  ■
 学長の役割は法人化で大きく変わった。ビジョンを示し戦略を練り、大学を引っ張るリーダー役。もはや“みこし”や“名誉職”ではいられない。人材が豊富で学部ごとの力も強い一部有力大は別として、中小大学の多くは、誰を学長に据えるかが命運を左右する。
 「内部の人間だけでは限界がある。このままでは大学がつぶれる」
 兵庫教育大の若手らは昨年夏、中央教育審議会委員の梶田叡一・前京都ノートルダム女子大学長を、学長選に担ぎ出した。十二月に新学長に就任後、梶田氏は学内二大派閥の融和に努める一方、企画運営会議の新設や組織の簡素化、一律だった教員研究費の見直しを矢継ぎ早に打ち出した。
 「社会に存在意義を示せない大学は生き残れない」。当面の目標は教員養成専門職大学院の開設。文部科学省との太いパイプに学内は期待する。
 教職員による学内選挙が当たり前だった学長選考法にも変化が表れた。国立大学法人法は、外部委員を含む「学長選考会議」が決めた候補者を、文部科学相が任命するとだけ定める。それでも大半の大学は従来通り学内選挙(意向調査)をし、結果を選考会議が追認していたが、最近、風向きが変わった。
 東北大は学内選挙を行わず、選考会議の議論だけで学長を選ぶことに決めた。小田滋・選考会議長は「選挙で法人運営に適した学長が選ばれるとは限らない」と旧習との決別に決意を込める。
 東京工大の選考会議は今月、今秋任期満了の相沢益男学長の“無投票再選”を決めた。同大学長は再選禁止だが、選考会議が特別な理由があると判断すれば二年延長できる制度にしていた。
 学内選挙を行いながら、岡山大と滋賀医科大は選考会議が結果を覆し、二位の候補者を学長に決めた。「意向投票(選挙)は参考資料」(岡山大の塩飽得郎議長)という位置づけだ。
 だが、選考会議の権限の強さに批判もくすぶる。滋賀医科大では、その不満が爆発した。
 昨年十二月の投票で一位だった野田洋一教授は今月一日、国と滋賀医科大に対し、二位なのに再任された吉川隆一学長の任命取り消しや慰謝料請求を求め、大津地裁へ提訴した。自分は百八十八票(五九%)で圧勝したのに、百三十一票の吉川氏を続投させたのは、選考会議の裁量権逸脱だと主張。裁判の行方を全国の大学が注視する。
■  ■
 学長選びを巡り試行錯誤が続く国立大学。新制度にふさわしい選考法の定着には時間がかかりそうだ。ただ最適任者を学長に据える仕組みを確立した大学だけが、競争に勝ち抜けるのは間違いない。

投稿者 管理者 : 2005年04月26日 00:00

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