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2005年04月28日

トップインタビュー 大阪府立大学、南努理事長・学長

毎日新聞大阪(2005/04/27)

 ◇3大学統合、「高度研究型」で世界に--高度専門職業人養成、地域貢献も
 大阪府立の3大学(府立大、大阪女子大、府立看護大)が統合し、公立大学法人が運営する新しい大阪府立大(本部・堺市学園町)が今月スタートした。「高度研究型大学」として世界的な研究・教育拠点、高度専門職業人の養成を目標に掲げる一方、府立の大学として地域貢献にも重点を置く。南努理事長・学長に、今後の大学運営についての抱負を聞いた。【聞き手は荒木茂・毎日新聞学芸部長】
 ◇「産学官金」協力に広がり
 ――新たにスタートしていかがですか。
 ◆少子化、そして財政難という状況の中、統合、再編、法人化を4月1日を期して行いました。現時点では順調に船出したと感じています。
 ――今の体制は。
 ◆3大学にあった計9学部を統合、再編する際に、共通項を整理し、7学部6研究科を設けました。学生数は学部が6500人強、大学院が1500人で、合計8000人を超えています。公立大学は全国に70以上ありますが、これだけの規模を持つのは、ほかに首都大学東京(旧東京都立大などが統合)と大阪市立大しかありません。
 ――伝統ある農学部が消えたのは少し寂しい気がしますが
 ◆21世紀に入り、伝統をベースにしながら、動植物バイオに重点を置くべきだと考え、生命環境科学部という名称にしました。
 ――新大学として何を目指しますか。
 ◆「世界に通用する高度研究型大学」を標榜(ひょうぼう)しています。大学として、学術的価値を総合的に生み出すことが、何よりも求められることだと思います。つまり、まずは研究を通しての「知の創造」、そして教育という「知の継承」につなげたい。
 今、大学間で非常に厳しい競争が生まれています。1月28日付で出た中央教育審議会答申は、大学の七つの機能を示しました。明確な差別化の指標です。我々はこのうち特に、「世界的研究・教育拠点」「高度専門職業人養成」「社会貢献機能」の三つを目指します。さらに、基礎教育については、「総合教育研究機構」を設け、英語によるコミュニケーション能力向上と、単なる情報リテラシー(使いこなす能力)にとどまらない高度な情報教育に重点を置きます。
 ――文部科学省が研究に予算を重点配分する「21世紀COE(卓越した研究拠点)プログラム」に採択されている研究がありますね。
 ◆工学部の吉田弘之教授が主宰するものですが、私は、環境問題に対する究極の解決策を提供できるのではないかと思っています。ごみを、高温、高圧の亜臨界水という「水」ですべて分解し、有用な資源に変える。まさにゼロ・エミッション(排出物ゼロ)を実現する方法で、水で処理するので環境を汚すことはありません。多くの企業や自治体から共同研究の申し出が引きもきらない状況です。
 ――府立の大学として、地域貢献に重きを置いていますね。
 ◆これまで大学は学術的価値を生めばそれでよかったのですが、それを社会的価値に転化することが今、強く求められています。今回、法人化し、そのことを強く意識しています。産学官連携機構という部局を作り、責任者となる「社会貢献」担当理事を外部から求めました。社会的価値を生み出すことに対する気持ちの表れだと理解していただきたい。
 ――特徴的なものはありますか。
 ◆一般的には「産学官連携」と言いますが、我々は「産学官金」という連携をとっています。「金」は金融です。金融機関と連携をとる大学は結構出てきていますが、我々は03年度に始めましたので、先鞭(せんべん)をつけたと自負しています。今は六つの金融機関との間で協定を結んでいます。
 このほか、大学独自の応援団として、「産学官共同研究会」があります。146企業が本学の研究に興味を持って会員になっています。技術相談は会員以外を含め年間約1000件に上ります。多くの教員が加わって「株式会社FUDAI」というベンチャー企業を設立しています。中小企業の一番の悩みが後継者の育成ということなので、この会社で育成講座を継続的に開いています。産学連携というのは、一般的には、一緒に研究開発するということになるのでしょうが、我々の取り組みはさらに一味加えたものと言えるでしょう。
 ――「知的財産ブリッジセンター」も特徴の一つだと思いますが。
 ◆その通りです。知的財産基本法のもと、文科省が募集した「大学知的財産本部整備事業」の一つに採択され、設立しました。公立大学としては唯一です。特許を管理、申請する機能と、大学と社会とをつなぐ機能の二つを持っています。府立大の教員による特許申請はこの10年、毎年100件から120件に上ります。これまでは企業と共同して申請していましたが、今後は原則、機関(大学)帰属にしていきます。現在、73件を大学から出願しています。
 ――大学は今、厳しい状況に置かれています。
 ◆07年には大学全入時代になります。選抜の厳しい大学、ある程度の選抜を伴う大学、希望しさえすれば誰でも入れる大学、こういう形で3分極していくのは目に見えています。我々は、選抜の厳しい大学であり続けなければなりません。それが最大の命題です。
 そのためには、大学として世間にアピールできる研究成果、質の高い教育、そして、それに加え、産学連携で社会的価値を生んで、社会貢献の面でも世間に訴えることも必要です。これまでは、実力はありながら、世間はわかってくれるだろうというような甘えがあった。広報活動も積極的に行っていきたい。我々は発展し続けたいと願っています。
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 ◇大阪府立大学
 今年4月、大阪府立大(工学部、農学部、経済学部、総合科学部、社会福祉学部)、大阪女子大(人文社会学部、理学部)、大阪府立看護大(看護学部、総合リハビリテーション学部)の大阪府立3大学が統合し、地方独立行政法人法に基づいて府が設立した公立大学法人が運営する大阪府立大学になった。3大学にあった学部を再編し、工学、生命環境科学、理学、経済学、人間社会学、看護学、総合リハビリテーション学の7学部を設置。総合リハビリテーション学部を除く6学部では、博士課程までの大学院研究科を持つ。現在の学生数は約8000人。キャンパスは中百舌鳥(なかもず)キャンパス(堺市)をメーンに、羽曳野キャンパス(羽曳野市)と大仙キャンパス(堺市、07年3月閉鎖予定)の3カ所。


投稿者 管理者 : 2005年04月28日 03:28

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