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2005年07月22日

中労委、関西大学不当労働行為再審査事件(平成15年(不再)第64・65号)命令書交付について

中央労働委員会
 ∟●関西大学不当労働行為再審査事件(平成15年(不再)第64・65号)命令書交付について(平成17年7月4日)

関西大学が組合員である外国語講師の雇用契約の更新を拒否し、契約更新回数の制限撤廃や雇用保険加入などに関する団体交渉にも誠実に応じなかったなどとして、労組が不当労働行為の救済を求めた事件で、中央労働委員会は4日、組合側から出されていた再審査の申し立てを棄却した。大学の行為は不当労働行為に当たらないとした初審の判断を相当だとした。

関西大学不当労働行為再審査事件(平成15年(不再)第64・65号)命令書交付について

 中央労働委員会(会長 山口 浩一郎)は、平成17年7月4日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者  15(不再)64・65号  再審査申立人  大阪教育合同労働組合
  組合員約300名(平成15年1月29日現在)
 15(不再)64・65号  再審査被申立人  学校法人関西大学(大阪府吹田市)
  教職員約3,000名(平成15年1月29日現在)

II 事案の概要
 1  本件は、学校法人関西大学(以下、「大学」)が、(1)大阪教育合同労働組合(以下、「教育合同」)の組合員である特任外国語講師Aの雇用契約更新について、次年度以降更新を行わない旨明記した平成13年度雇用契約書に署名を求め、平成14年度以降、雇用を継続しなかったこと、(2)教育合同の組合員である非常勤講師Bの労働条件の変更について、教育合同との事前協議をせず、同14年度授業担当コマ数の削減等を実施したこと、(3)ⅰ)特任外国語講師の契約更新回数制限撤廃、ⅱ)特任外国語講師の私学共済加入要求、ⅲ)特任外国語講師及び専任教員の雇用保険加入要求(以下、「三要求」)を議題とする団体交渉に誠実に応じなかったこと、(4)他の労働組合には非常勤講師雇用規程の新規制定を提案・協議し、労基法所定の意見書の提出を求めたのに、教育合同に対してはこれを行わなかったこと、(5)組合員の雇用保険への加入に関して、教育合同と事前に協議しなかったこと、及び(6)教育合同による15年度大学入試業務妨害の禁止等を求めて仮処分を申し立てたことがそれぞれ不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
 2  初審大阪府労働委員会は、15年12月11日、上記いずれも不当労働行為には当たらないとして、教育合同の本件各申立てを棄却したところ、教育合同は、これを不服として、15年12月25日、再審査を申し立てたものである。(なお、上記(2)に関しては解決したとして再審査を申し立てていない。)

III 命令の概要
1  主文
本件各再審査申立てを棄却する。
2  判断の要旨
(1) 組合員Aの雇用契約継続について
ア 特任外国語講師Aの雇用契約の更新拒否に関して、ァ)11年度の契約を締結した際、契約期間は1年とし、2回を限度に更新して継続できるということについて大学より説明を受け、ィ)組合員、非組合員を問わず同内容の契約書に署名を求めていることから、組合員であることを理由とする不利益取扱い及び教育合同に対する支配介入に当たるとは言えない。
イ 契約更新を2回までとする制度は、大学の特任外国語講師規程として平成4年に制度化され、同5年から運用されているもので、特任外国語講師に適用している原則的方針で、大学では例外的な取扱いもないので、特に教育合同の組合員を不利益に扱うものではない。
(2) 三要求に関する団交について
ア 特任外国語講師の契約更新回数制限の撤廃要求に大学が拒否したことに関して、ァ)大学は、特任外国語講師の制度の目的と現状、契約の更新制限を設けた趣旨について説明し、ィ)Aには1年を空けて再度応募するよう提案していること、ゥ)教育合同が、争議に突入することを宣言し、団交を打ち切ったことからすると、大学は、要求を受け入れられない理由を一定程度具体的に説明していたと認められ、団交に誠実に対応しなかったということはできない。
イ 特任外国語講師の私学共済加入要求を受け容れなかったことに関する大学の説明は、在日外国人が私学共済に加入した場合の問題点や国民健康保険による代替措置や保険料の負担問題に関して、必ずしも十分な説明がなされたとはいえないが、現時点における対策等について、一定程度具体的に説明しており、他方、教育合同もその点について、さらに踏み込んで説明を求めたとの疎明もないことから、団交に誠実に対応しなかったとまでいうことはできない。
ウ 特任外国語講師及び専任教員の雇用保険加入要求に大学がその要求を受け容れなかったことに関して、私学全体として取り組むべき問題であるとの大学の説明は、私学教職員に対する雇用保険適用の取扱いの経緯と実態に照らすと不誠実な対応とまでいうことはできない。
(3) 非常勤講師雇用規程の制定及び労基署への届出手続きについて
 非常勤講師雇用規程の制定及び労基署への届出に当たって、学内三労組のみの意見書を添付して届け出たことは、非常勤講師の意見を反映させるという意味においては不十分さが認められるものの、労基署の担当監督官の指導など行政指導の状況を考慮すると、教育合同を差別したものとまでは言うことはできない。
(4) 雇用保険加入に関する従前の見解変更時の団交再開等について
 教育合同が学内の職員全体に雇用保険の適用を要求していたことに関して、大学が雇用保険の確認手続きをとったA及びC2名のみの加入手続きを行う際に、その取扱いについて、教育合同に対して説明すべきであったといえるが、加入手続きは、大阪労働局が大学を指導した結果によるものであり、教育合同が団交を打ち切っていたことからしても、大学が教育合同を無視して一方的に加入手続きを進めたものということはできず、この点に関する申立てを棄却した初審判断は相当である。
(5) 大学の仮処分申立てについて
ア 15年度の大学入試業務妨害の禁止等を求めての仮処分申立てについて、14年度における受験生への宣伝活動やホームページ上での公開予告等からすると、大学が、15年度入学試験においても平穏な状態では実施できなくなると考えたことには相当の理由があるといえるから、15年度仮処分申立ては、教育合同の組合活動そのものを制限するために行われたとはいえない。
イ 14年度入学試験に際し、宣伝活動を呼び掛け行動したのは教育合同のみで、15年度入学試験においても、何らかの宣伝活動をほのめかしていたのは教育合同のみであり、他の組合が入学試験日において宣伝活動等を行おうとしてしたという事実もないことから、これをもって組合間差別があったということはできない。
 【参考】
   本件審査の概要     初審救済申立日  平成14年1月7日(大阪府労委平成14年(不)第1号)
 平成14年7月5日(大阪府労委平成14年(不)第34号)
 平成15年2月27日 (大阪府労委平成15年(不)第11号)
    初審命令交付日  平成15年12月11日(14不1・34併合事件、15不11事件)
    再審査申立日  平成15年12月25日(労)


投稿者 管理者 : 2005年07月22日 02:01

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