個別エントリー別

« 鹿児島国際大学三教授を支援する全国連絡会、第6回会合の開催案内 | メイン | おかしな「交換関係」 »

2005年08月08日

日本学術会議、法科大学院の創設と法学教育・研究の将来像

日本学術会議、「法科大学院の創設と法学教育・研究の将来像」(2005年7月21日)

法科大学院の創設と法学教育・研究の将来像


平成17年7月21日
第 2 部
日 本 学 術 会 議

この報告は、第19期日本学術会議第2部及び法学政治学教育制度研究連絡委員会の審議結果を取りまとめ発表するものである。

第19期日本学術会議 第2部会員
部 長 廣 渡 清 吾(東京大学社会科学研究所教授)
副部長 猪 口 孝(中央大学法学部教授)
幹 事 岩 井 宜 子(専修大学法科大学院副院長・教授)
幹 事 浜 川 清(法政大学法科大学院教授)
会 員 浅倉 むつ子(早稲田大学大学院法務研究科教授)
五百旗頭 真(神戸大学大学院法学研究科教授)
伊 藤 進(明治大学法科大学院長)
岡 本 三 夫 (広島修道大学名誉教授)
奥 脇 直 也(東京大学法学部大学院法学政治学研究科教授)
戒 能 通 厚(早稲田大学大学院法務研究科教授)
片 岡 寛 光(早稲田大学名誉教授)
河 野 正 輝(熊本学園大学社会福祉学部教授)
川 端 博(明治大学法科大学院・法学部教授)
小 島 武 司(中央大学法学部教授)
櫻 田 嘉 章(京都大学大学院法学研究科教授)
佐々木 毅(大学評価・学位授与機構客員教授)
渋 谷 達 紀(早稲田大学大学院法学研究科教授)
嶋 津 格(千葉大学法経学部教授)
辻村 みよ子(東北大学大学院法学研究科教授)
野 上 修 市(明治大学法学部教授)
藤 田 勝 利(近畿大学法科大学院教授)
町 野 朔(上智大学法学研究科教授)
水 林 彪(一橋大学大学院法学研究科教授)
宮 崎 良 夫(東京経済大学現代法学部教授)
森 英 樹(名古屋大学理事・副学長)
山 本 吉 宣(青山学院大学国際政治経済学部教授)

第19期法学政治学教育制度研究連絡委員会
委員長 廣 渡 清 吾(東京大学社会科学研究所教授)
幹 事 浜 川 清(法政大学法科大学院教授)
幹 事 小 野 耕 二(名古屋大学大学院法学研究科教授))
会 員 五百旗頭 真(神戸大学大学院法学研究科教授)
伊 藤 進(明治大学法科大学院長)
片 岡 寛 光(早稲田大学名誉教授)
河 野 正 輝(熊本学園大学社会福祉学部教授)
川 端 博(明治大学法科大学院・法学部教授)
櫻 田 嘉 章(京都大学大学院法学研究科教授)
渋 谷 達 紀(早稲田大学大学院法学研究科教授)
辻村 みよ子(東北大学大学院法学研究科教授)
野 上 修 市(明治大学法学部教授)
山 本 吉 宣(青山学院大学国際政治経済学部教授)
委 員 植 田 信 廣(九州大学大学院法学研究院教授)
長谷部 恭男(東京大学大学院法学研究科教授)
山本 爲三郎 (慶応義塾大学法学部教授)
和 田 肇(名古屋大学大学院法学研究科教授)

要 旨

1 報告書の名称 法科大学院の創設と法学教育・研究の将来像
2 報告書の内容
(1)作成の背景
 日本学術会議第2部は、この数年来の司法改革の重要な柱とされた法科大学院の創設について、かねてより大きな関心を持って審議を進めてきた。 第18期には第2部対外報告として『法学部の将来-法科大学院の設置に関連して』(2001年5月)および『法科大学院と研究者養成の課題』(2003年6月)をとりまとめた。 法科大学院は、2004年4月から発足し、全国で68の法科大学院が開校された。さらに2005年4月から6校が新たに加わり、現在、総数74校学生定員総数5,825人の規模で法科大学院は活動している。
 第19期において、第2部は法学政治学教育制度研究連絡委員会を設置し、同委員会を中心に法科大学院が発足した新たな状況をとらえて問題の分析をさらに進めることを課題とした。この間、全国法学部、法学関係学科を対象にアンケート調査を実施して検討のためのデータを集約し、また、公開シンポジウムを開催して関係者との意見交換を行った。これらをふまえて、この度第2部としての対外報告のとりまとめに至ったところである。

(2)報告の論点
 第1に、法科大学院の創設は、司法改革と大学改革の二つの要請に由来し、これは、日本の大学において法曹養成教育が初めて制度的に引き受けられたこと、法曹養成制度において大学の法曹養成教育が不可欠のものと位置づけられた点において、画期的なことであった。しかし、法科大学院制度は、司法試験合格者枠の制約の下で、安定した基盤を獲得しておらず、大きな流動要因を抱えている。
 第2に、法科大学院の創設は法学部における法学専門教育および研究大学院における法学研究者養成教育とならんで、大学教育の場に新たに法曹養成教育機関を生み出すにも拘わらず、この3者の間の制度的分業関係は、十分に明確にされないままで、法科大学院の発足に至り、この課題が大学の現場に残された。
 そこで、第3に、この課題に対して、各大学がどのように対応し、あるいは、今後をどのように見通しているかについてアンケート調査の結果や個別大学の報告などを踏まえながら分析し、法学部教育の再構築の方向性、および法科大学院教育と研究者養成大学院の教育の関係をどのように位置づけるかについて、考え方やモデルを考察した上で、将来像と留意すべき方策を提言している。

(3)提 言
 ① 法学部の将来像は、これまで社会に対して果たしてきた人材養成の役割および日本社会のリーガル・リテラシーを底支えしてきた役割の基本的意義を自覚しながら、リベラル・アーツ化した法学専門教育ないし再構成されたジェネラリスト教育を基礎に学生の進路選択と社会のニーズに応えることを目標とするという方向において見いだしうる。法学専門教育は、日本社会の求める人材の養成に応えると同時に専門教育の国際的な普遍性と通用性を目指すことが必要である。
 ②法学研究大学院の将来像は、法科大学院が研究大学院の博士前期課程を代替しうるかどうかが問題であるが、全部代替型は避けるべきであり、一部代替型および非代替型はそれぞれカリキュラムや研究指導に工夫を行い、法曹資格をもった法学研究者の養成に伴う新しい状況と課題に対応する体制と教員の準備が必要にして不可欠である。また、研究者の縮小再生産の危険性に留意し、選択した制度の見直し・再検討を必要に応じて積極的に進めるべきである。
 ③法科大学院の創設の意義の確認ならびに法学教育および法学研究の新たな構築は、各大学の創意的努力を推進力とする集団的な取り組みのプロセスとして考えられ、日本学術会議はこのプロセスにおいて学術コミュニティーの代表機関として、今後とも俯瞰的、学術的見地から有効、適切な役割を果たす必要がある。

目 次

法科大学院の創設と法学教育・研究の将来像
1 報告書作成の経緯と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2 法科大学院を生みだした2つの改革-司法改革と大学改革・・・・・・・・・・・・・2
3 日本版ロースクールとしての法科大学院制度の特有性・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(1)法科大学院と法学部および法学研究大学院との関係
(2)成立した法科大学院制度の位置づけ
(3)教育制度としての専門職大学院の位置づけ
4 法科大学院と法学部の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(1)法学部の動向
(2)法科大学院設置後の法学部教育の位置づけ
(3)法学部の将来像
5 法学研究大学院と法科大学院・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(1)法学研究大学院の状況
(2)再編のタイプおよびその問題性
(3)法学研究大学院の将来像
6 まとめと提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(1)法科大学院創設の意義と法学部・法学研究大学院との関係
(2)法学部の将来像
(3)法学研究大学院の将来像
(4)日本学術会議の役割
資 料
Ⅰ シンポジウムの講演と報告
1 グローバル化と法-リベラル・アーツとしての法学教育の試み・・・・・・・・・26
2 法科大学院の設置と法学部・法学研究科-何が問題なのか・・・・・・・・・・・・・32
3 我が国における法学部・法学研究科の現状と方向性
-学術会議第2部によるアンケートの結果から・・・・・・・・・42
4 東京経済大学・現代法学部の試み
-『法化社会』における法学部教育・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49
5 一橋大学の法学教育と法学研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
6 法科大学院時代における法学教育機関の役割分担
・相互関係と法学研究者の養成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59
7 大学における法学教育の課題-名古屋大学の例を参考にしながら・・・・・・・65
8 法学部をどうするか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70
Ⅱ アンケート集約結果
質問と回答・単純集計と書き込み回答一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76

以下,省略。


投稿者 管理者 : 2005年08月08日 00:20

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://university.main.jp/cgi4/mt/mt-tb.cgi/286

コメント