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2005年08月22日

総務省、地方公務員の給与構造の見直しに関する基本的方向性について

「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」における「地方公務員の給与構造の見直しに関する基本的方向性」の取りまとめ

地方公務員の給与構造の見直しに関する基本的方向性について

平成17年8月
地方公務員の給与のあり方に関する研究会

1 はじめに
 地方公務員の給与のあり方に関する研究会以下本研究会というでは、今後の地方公務員の給与のあり方に関し本年3月に検討すべき課題と論点の中間整理を行い、これを踏まえ現在精力的に検討を進めている。検討項目は、地方公務員の給与制度の基本から実態の問題まで多岐にわたっており、最終報告までになお検討を要するところであるが、今般、人事院における国家公務員の給与構造の見直しの内容が明らかにされつつある。このような中にあって、地方公務員の給与構造の見(注) 直しについて、本研究会として現時点における議論を一旦集約することが、関係者の参考に資すると考え、その基本的方向性をとりまとめることとした。(注:ここでの給与構造とは、給料表の構造のあり方や勤務実績の反映方策、地域民間給与の反映方策を含む広い意味で用いている) 。

2 給料表の構造、勤務実績の反映
(現状と課題)
 地方公務員の給与構造の見直しにあたっては、近年の民間における賃金体系の見直しなどの情勢変化を踏まえ、給与決定における職務給の原則がより的確に実現されることが求められている。国家公務員の給与においては、現行の俸給表の構造や昇給及び勤勉手当の制度・運用が、民間給与と比較して年功的で勤務成績の反映がされにくい実態となっていることを課題と捉え、職務・職責をより重視する方向で、その構造の基本的見直しが検討されている(資料1) 。
 一方、地方公共団体においても、人事評価システムを活用し、人材育成や組織の活性化とともに給与に関しても積極的な勤務成績の反映を行っている団体もある。しかしながら、多くの地方公共団体においては、国に準じた給与制度とその運用がなされているところであり、一般に地方公務員の給与構造においても、国家公務員の給与構造における課題と同様の課題を抱えていると言える。
 特に、地方公共団体の中には、年功的要素が強く勤務実績の反映が不十分な給与制度の運用等により、中高齢層の職員の給与が民間給与と比べ高額となっている団体があることが、地域においてより顕著に地方公務員給与に対する批判を招来する要因の一つとなっているものと考えられる(資料2,3) 。
(見直しの方向性)
 したがって、今後の地方公務員の給与構造に関しては、①年功重視から職務重視への給料表構造の転換、②昇給や勤勉手当等における勤務実績のより的確な反映、という2つの方向性を目指して、各地方公共団体がその見直しに取り組むことが必要である。
 具体的には、給料表の構造については、職責の質や人事管理上の必要性を検討しつつ、現行級構成の再編成を行うとともに、年功的昇給を見直し、職務・職責を重視する観点から、給与カーブのフラット化と級間の重なりの縮減を行うべきである。
 また、昇給や勤勉手当等についても、勤務実績をより反映しやすくするような見直しを行うべきである。
 このような見直しは、地方公共団体の職務の性格やその多様性、具体の組織形態や規模等に留意しながら、職務・職責をより重視する内容で提案されている国家公務員給与における見直しなどを参考としつつ、行うべきである。また、職員の意欲の向上に資するとともに住民が納得できる給与体系を確立する観点から、速やかに見直しを実施する必要がある。
 なお、これにより、結果として中高齢層職員の給与水準の見直しにつながることにも留意する必要がある。

3 地域民間給与の反映
(現状と課題)
 地方公務員の給与は、基本的には、全国の民間給与水準に基づき決定されている国家公務員の給与に準じて改定されてきている。また、人事委員会を設置している地方公共団体においては、人事委員会が、当該地域の民間給与と当該団体の職員給与とを比較し、必要な給料表の改定等の給与勧告を行っている。
 しかしながら、地域間における民間賃金の格差は拡大しており、昨今の厳しい地域経済の状況等を背景に、公務員給与が地場賃金と比べて高いのではないか、地域民間給与の反映が不十分ではないか、人事委員会の公民比較や勧告のあり方に課題があるのではないかなどの指摘がなされている。また、国家公務員給与においては、地域における国家公務員給与がより地域の民間賃金水準を反映したものとなるよう、俸給表水準を引き下げ、民間賃金の高い地域に勤務する職員に対しては地域手当を支給することなどの見直しが検討されている(資料1) 。
 本研究会では、地方公務員給与のあり方について幅広い観点から検討しているものであるが、上述のような問題状況を踏まえ、まず、地域民間給与の反映の実態を分析するために、地方公務員給与の地域間格差と民間給与の地域間格差とを比較した。その際、それぞれにおける地域間格差をより適切に把握するため、地方公務員給与における民間賃金や物価・生計費の地域差を反映させる調整手当の役割を考慮するとともに、民間給与に関しては、単純な平均賃金ではなく、職種の類似性や年齢・学歴などの条件を考慮した上で地域間格差の試算を行った。
 その結果、地方公務員給与における最高値と最低値の乖離の幅は、民間給与のものと比べ大きな差違があるわけではないが、それぞれのデータの分布状況については、地方公務員の給与には民間給与の地域間のバラツキに比べ、より画一的な傾向があることが認められた(資料4) 。これは、現在の地方公務員給与の状況が、地域ごとの民間給与の状況の反映という観点から見ると、必ずしも十分でないことを示していると認められる。

(見直しの方向性)
 このため、地方公務員の給与については、給料表や勤勉手当等をより職務・職責や勤務実績を重視した内容へ転換することに加え、それぞれの地域の民間給与の状況がより的確に反映されるように見直しに取り組む必要がある。なお、この問題は、国家公務員給与の見直しが、全体的、、な給与水準を維持した上での配分の問題であることとは性格が異なり基本的に各地方公共団体における職員の給与水準そのものの問題である。
 具体的には、以下のような方向性を目指して取組みを進めていく必要がある。
(1)人事委員会を設置する地方公共団体においては、人事委員会における公民比較と給与勧告のあり方について、一層の精確を期すための比較方法の改善や勧告における較差の適切な反映、調査内容の充実等必要な措置を講じるとともに、必要な給料表の改定等の措置について明確に示すなど、住民等に対する説明責任を果たしていく必要がある。
 なお、これに関しては、本研究会としても、人事委員会の専門性の向上や体制整備等その機能の拡充方策について、制度的な観点も含め、さらに検討を進めることとする。
(2)人事委員会を設置していない地方公共団体においては、それぞれの団体において民間給与の状況を考慮して適切な給与水準を決定する必要がある。このような団体において地域の民間給与のより的確な反映が行われるための給与改定のあり方については、本研究会としても引き続き検討することとする。
 以上、目指すべき基本的な方向性を述べてきたが、他方で、多くの地方公共団体が給料表や諸手当の内容を国家公務員給与に準じて定めている現状を踏まえると、以上のような取組みを通じて直ちに地方公共団体が見直しの実を上げることが困難である場合が想定される。そこで、そのような場合においては、当面は、それぞれの地域の民間賃金水準をより適切に反映することを目途としている国家公務員の給与の取組みを参考として、それぞれの地方公共団体が給与水準の見直しを行う必要がある。
 その際、以下の2点に留意すべきである。
①地域手当については、国家公務員における制度の趣旨や内容等を吟味しつつ、その必要性や支給内容について、地域住民の理解と納得が得られるものとなるよう適切に判断する必要があること。
②広域異動手当や本府省手当については、人事院勧告で示される制度趣旨や内容を踏まえ、地方公務員給与における必要性を慎重に判断する必要があること。

4 今後に向けて
 本研究会としては、今後予定されている人事院勧告の内容等を踏まえつつ地方公務員の給与決定の考え方や人事委員会機能の強化のあり方参考指標等も含め、地方分権の時代に即した地方公務員給与のあり方についてさらに検討を進めることとしている。
 この基本的方向性を示したことにより、関係者における共通の認識が深まり、給与構造の見直しに向けた取組みに資することとなれば幸いである。


投稿者 管理者 : 2005年08月22日 00:01

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